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利回り9%のJ-REITは買いか?

MONEYPLUS / 2025年1月29日 7時30分

利回り9%のJ-REITは買いか?

利回り9%のJ-REITは買いか?

オフィスビルや商業施設、倉庫、レジデンスなどの不動産物件を組み入れて、その家賃収入を分配金にするJ-REITの利回りが上昇しています。そのなかには9%という高利回りのファンドもありますが、はたして危なくないのでしょうか。検証してみたいと思います。


低迷続いた2024年のJ-REIT市場

2024年、8月に瞬間、大きな下落に見舞われたものの、1年を通じて見れば順調に値上がりした国内株式市場とは裏腹に、低迷続きだったのがJ-REIT市場です。2024年末時点で、配当込みTOPIXは20.45%の値上がりでしたが、配当込みの東証REIT指数は、▲4.04%という惨憺たる結果に終わってしまいました。

東証REIT指数が下がったということは、指数構成銘柄の多くが値下がりしたことを意味します。J-REITの投資口価格が下落すれば、高値で買った人は損をするので決して喜ばしいことではありませんが、これから投資する人にとっては、ひとつだけ大きなメリットがあります。それは、高い分配金利回りが期待できることです。

2025年1月15日時点で、東証に上場されている全J-REITの分配金利回りを平均すると、5.13%になります。インフレの影響で若干、金利が上昇傾向にあるとはいえ、預貯金で年5%の利回りが得られるものはありません。株式でも配当利回りが5%を超える銘柄は少ないでしょう。それが「平均」で得られるのですから、利回り狙いで投資する人にとってJ-REITは、なかなか魅力的であると考えられます。

分配金利回り9.33%の秘密

平均ということは、それを下回る分配金利回りのファンドもあれば、逆に上回る分配金利回りのファンドもあります。

1月15日時点で、最も分配金利回りが低いのは「日本アコモデーションファンド投資法人」の3.87%です。対して最も高いのが「いちごホテルリート投資法人」の9.33%です。

いちごホテルリート投資法人は、その名の通り、ホテルを組み入れて運用しています。そのため、新型コロナウイルスの感染拡大で行動制限が行われていた期間中は、組み入れているホテルの稼働率が大幅に下がり、分配金も減額されました。

分配金の実績を見ると、2019年7月期が3154円、2020年1月期が8356円だったのが、2020年7月期は670円、2021年1月期は823円まで落ち込んでいます。そこから徐々に回復し、2025年1月期は9671円(予想)、2025年7月期は3563円(予想)が支払われる予定です。この9671円と3563円の合計1万3234円を、1月15日時点の終値である14万1700円で割ると、9.33%という分配金利回りが算出できます。

ただ、9.33%が今後も続くのかというと、今回はいささか特殊事情があります。2025年1月期の分配金が大きいのは、ファンドに組み入れていた「ネストホテル札幌駅前」を、2024年12月に売却したからです。これを売却したことで21億8100万円の売却益が発生し、それが分配金に反映されたのです。

老後の資産運用に適したJ-REIT

いちごホテルリート投資法人の9.33%という分配金利回りは、このような特殊事情によるものですが、その特殊事情が無くなる2025年7月期の予想分配金額である3563円が今後も続くと仮定すると、年間の分配金は7126円。1月15日の終値で分配金利回りを計算すると、5.02%になります。これだけの利回りが実現するならば、資産活用層の投資対象としては、十分に魅力的だと思います。

J-REITはNISAの成長投資枠で買い付けることができます。成長投資枠の限度額である1200万円ぴったりまで買うことはできませんが、それに近い額まで買い付けて、5%の利回りで回せれば、年間60万円の分配金を非課税で受け取ることができます。月にして5万円です。65歳以降に受け取れる公的年金に毎月5万円が上乗せされれば、それなりに老後の生活も安定します。

ただ、老後資金の一部をJ-REITで運用する場合、ひとつだけ注意点があります。それはJ-REITが投資法人という法人であることです。法人である以上、その経営が苦しくなれば破綻、もしくは他のJ-REITとの合併というケースも出てきます。だいぶ前の話ですが、2008年10月には「ニューシティ・レジデンス投資法人」が、資金繰りの悪化で民事再生法適用を申請しました。

J-REITが破綻したらどうなる?

ニューシティ・レジデンス投資法人は民事再生法適用を申請した後、同年11月に上場廃止になりました。ただ、2009年11月にはビ・ライフ投資法人(現、大和ハウスリート投資法人)と合併し、ニューシティ・レジデンス投資法人の投資口1口に対し、ビ・ライフ投資法人の投資口0.23口が交付されたことから、投資口の価値がゼロになる事態は避けられました。

これは、J-REITならではのメリットかも知れません。これが上場企業の株式だと、民事再生法が適用されるのと同時に100%減資を行い、新スポンサーから出資を受けるのが普通です。つまり既存の株主が保有していた株式の価値はゼロになるのですが、J-REITの場合、ファンドに組み入れられている物件の価値は維持されているので、投資口の価値がゼロになることはありません。

それどころか、新スポンサーの下で業績が好転していけば、むしろ投資口の価格が上昇して、キャピタルゲインを狙えることもあります。実際、ニューシティ・レジデンス投資法人の投資口価格も、それを引き継いで大和ハウスリート投資法人に名称変更したビ・ライフ投資法人の投資口価格が上昇し、破綻騒動が始まる前の水準まで戻しました。

もちろん、投資する以上は投資法人の財務内容をしっかりチェックする必要はありますが、J-REITは保有物件の価値がしっかり残るので、ある意味、破綻リスクに強いという特性を持っています。その点でも、長期の資産運用には比較的向いている商品と考えられるのです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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(鈴木雅光)

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