節約志向が高まっているのになぜ? 庶民の味方「サイゼリヤ」が決算は悪くないのに苦戦のワケ
MONEYPLUS / 2025年1月30日 7時35分
節約志向が高まっているのになぜ? 庶民の味方「サイゼリヤ」が決算は悪くないのに苦戦のワケ
20年以上続いたデフレが終わりを告げ、日本では物価上昇が止まりません。1月24日に発表された消費者物価指数(CPI)は、総合指数で前年同月比3.6%増。特に食料品が値上げの主因となっています。
食料品は、わたしたち消費者がもっとも”値上げ”を実感するので、この状態が続くと、必然的に節約志向へと流れます。12月に発売された会社四季報の記事欄の中にも”節約志向”というワードが目立っており、企業にとっては値上げしづらい雰囲気となっています。
たしか2024年の前半は、値上げによって収益が改善された企業が多く、日本でも経済をほどよく成長させる”よい”物価上昇が起きているという認識でした。ところが、徐々に、その値上げが消費者の負担を大きくし、景気を停滞させる”悪い”物価上昇へとスライドしているようなのです。
株価は2024年の安値を割る
株式市場には、世間が節約の方向に意識を向け始めると、決まって注目される銘柄があります。庶民の味方、サイゼリヤ(7581)です。この連載でも何度か取り上げていますが、当社は、原料価格が上昇する中、低価格路線を維持するべく、メニューの工夫や業務の効率化でなんとか乗り切っていました。
2024年7月には、株主優待の廃止を発表し、軽いショックを市場に与えました。しかし、その後株価は上昇し、上場来高値の6,420円をつけたことから、株主には受け入れられたと考えられます。そこから、消費者の節約志向はますます強まっていることを考えると、さぞかし株価も好調かと思いきや、ここのところ冴えない展開で、1月23日には4,640円と2024年の安値を割り、上場来高値から-25%もの下げっぷり。
株価下落のきっかけは、25年8月期第1四半期決算です。
画像:サイゼリヤ「2025年8月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
①売上高は61,275(百万円)、②前年比16.4%、③営業利益3,918(百万円)、④前年比13.3%と、いっけん悪くないように見えます。しかし、売上高営業利益率は、直近の3ヶ月6-8月の7.8%と比べると6.4%と大幅に低下しています。
原価率を比較すると、24年8月期は40.6%だったところ、今期は41.7%に上昇。やはり原材料価格の上昇が、利益率を押し下げているようです。事実、お米や野菜の急激な価格上昇で、国内事業の営業利益は、もともとの会社計画を15%下回っています。
サイゼリヤは、セルフ式注文システムの導入やメニュー数の削減など、自助努力で抑えられる費用はかなりのところまで抑えています。しかし、お米や野菜などの原材料費は、コントロールすることが難しく、どうしても利益を圧迫してしまい、業績の低下をもたらします。
今まで低価格路線で消費者の支持を得ていたため、ここにきて値上げをするのは当社のポリシーに反するのかもしれません。実際、24年9-12月の既存店売上高は、前年同期比20%増と極めて堅調なのですが、売上の力強さが、利益に寄与しておらず、この点が投資家からの評価を下げているのでしょう。
ちなみにすかいらーくホールディングスは、2024年9月25日に、お米の価格高騰の影響により、ガスト、バーミヤン、じょなさん、夢庵、ステーキガストのライスの値上げを発表しています。さらに11月20日は、ガストで約6割のメニューについて値上げすると発表。値上げを発表した翌月12月の既存店客数は前年比で109.9%と増えていますので、消費者は値上げを受け入れたといえます。そのおかげで、売上高は前年比115.2%と強い数字となりました。
低価格が売りのビジネスモデルの罠
わたしの自宅の近くには、サイゼリヤがあり、たいていいつも賑わっています。定石通りに考えれば、流行っている=儲かっている=株価は上がるとなりますが、一見、儲かっているように見えても、じつはそうではないといった事例もあります。とくに、低価格が売りのビジネスモデルは、その罠に陥りがちなので、投資家としても注意が必要です。
サイゼリヤは、低価格路線というビジネスモデルのもとで消費者の支持を得ていますが、原材料費の上昇が利益率を圧迫し、株価低迷を招いています。この状況が続けば、低価格路線の維持が企業戦略として限界を迎える可能性も否定できません。
今後さらに食料品の値上げが続くようなら、ますます当社の利益率は悪化し、株価の低迷は続くでしょう。毎月、総務省統計局から発表される消費者物価指数には、注意を払っておいたほうがよさそうです。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
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(藤川 里絵)
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