iDeCoで50年間積み立てた場合、税金はどのくらい? シミュレーションで分かる問題点
MONEYPLUS / 2025年2月11日 7時30分
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iDeCoで50年間積み立てた場合、税金はどのくらい? シミュレーションで分かる問題点
改正が重ねられるiDeCoですが、加入可能期間のさらなる延長と毎月の掛金上限額の引き上げにより、いよいよ1億円超えの資産形成の可能性も出てきました。しかし、それは同時に受取り時に多額の税金を払うことを示唆しています。今回は、最大限iDeCoを利用した場合の税金を試算してみます。
iDeCoの変更点
iDeCoの毎月の掛金上限額が拡大される見込みです。自営業などの第1号被保険者は75,000円、会社員や公務員などの第2号被保険者は62,000円に引き上げられます。
これまで第2号被保険者については、勤め先の企業年金の有無により掛金上限額が複数設定されていましたが、これがすべて一律になります。特にこれまで企業年金がない会社にお勤めの方は月23,000円が掛金額の上限でしたから、実に39,000円もの引き上げです。
企業年金がある会社にお勤めの方の場合、企業型DCの掛金と他制度等掛金、例えば確定給付企業年金(DB)の掛金とiDeCoの掛金の合計額が62,000円となります。企業型DCのある会社にお勤めの方の場合、マッチング拠出の掛金も会社の掛金を上回ってはいけないという決まりが撤廃され、合計額が62,000円となるので、より使いやすい制度に生まれ変わります。
残念ながら第3号被保険者の場合、月23,000円の掛金についての変更はありませんが、第2号被保険者の扶養であることを考えると、掛金拠出時の所得控除のメリットが受けにくいという点からやむなしとも考えられます。
加入期間については、現行65歳までのところが、70歳までの加入(掛金拠出)が可能になります。これまでは公的年金加入者であることが延長加入の条件であったため、第1号被保険者の場合、過去に国民年金の未納期間があるなどの理由で任意加入ができる限られた方以外は60歳が上限となっていました。
そのため、実質65歳まで加入ができるのは雇用延長などで厚生年金に加入している方のみだったのですが、今般の税制改正大綱では、公的年金加入が条件ではなくなるようなので、老齢年金を受給していないなどの条件を満たせば被保険者区分にかかわらず70歳までの加入が可能になりそうです。
50年間iDeCoで積み立てた場合、税金はいくらになる?
では、最初の試算として、最も多くの掛金をかけられる第1号被保険者が20歳から70歳までiDeCoに加入した場合の税金を検証してみましょう。
掛金は毎月75,000円を50年間積立します。投資元本は4500万円です。この段階でNISAよりはるかに大きな資産形成が可能になることがわかります。仮に拠出時の節税メリットを計算する際の所得税率を10%、住民税を10%とすると、掛金拠出時の節税のメリットは900万円となります。
この掛金を4%平均で運用できたとしましょう。すると50年後の資産は1億4036万円になります。このうち運用利益は9536万円ですから、通常運用益にかかる税金を20%とするとiDeCoで運用することにより1907万円もの税金を圧縮したことになります。
つまり、第1号被保険者が最大限にiDeCoを活用した際の拠出時、運用時の税のメリットは合計で2807万円であることが理解できます。
では、この1億4036万円を一括で受け取ると税金はいくらになるのでしょうか? 退職所得控除は加入期間50年ですから2900万円(800万円+70万円x30年)です。超過した分を2分の1すると課税対象は5,568万円となります。
この金額を所得税の速算表に当てはめてみます。5,568万円x45%-4,796,000円=2026万円の税金を支払うことになります。結論として、拠出時、運用時の税制優遇によるメリットが2807万円に対し、受取り時の支払うべき税金が2026万円。つまり差し引きのメリットは781万円です。
税のメリットが781万円ともなると、さすがにiDeCoはお得だと感じるかと思いますが、実際は払わなくて済んだ税金のメリットは過去のことと忘れてしまって受取り時に告げられる2026万円の税金の支払をマイナスだと感じてしまう人は多いのではないでしょうか?
この前提では、掛金拠出時の税のメリットを計算する際の所得税を10%としましたが、5%であれば住民税の10%を加味しても節税メリットは掛金総額の15%ですから、675万円になるため、差し引きのメリットは556万円に縮小してしまいます。
もちろん退職所得控除を上回る分は年金として分割受取りをする対処法もあるでしょう。しかし70歳から年金受け取りをすると公的年金(iDeCo加入のために繰下げが必要)の金額と合算され公的年金等控除が適用されるため、控除の額を上回る可能性が高くなってしまいます。こちらは総合課税なので分離課税の退職所得より課税率が高くなるかも知れません。
1800万円を積み立てた場合、税金はいくらになる?
とはいえ、最大値の75,000円を50年もの間積立てられる人はそうはいないと思いますので、もう少し現実的な数字で考えてみます。NISAの生涯枠と同額の1800万円を50年かけて積立をした例で試算してみましょう。
月々3万円を50年積立すると1800万円になりますから、拠出時の節税メリットは360万円です(所得控除のメリットを計算する税率は10%、住民税は10%とする)。4%で運用すると50年後の資産残高は5614万円でそのうち運用利益は3814万円、運用益非課税のメリットは763万円です。
つまりNISAとiDeCoのそれぞれに50年間毎月3万円ずつ積立をすると運用益に税金がかからないという点では同じなので、iDeCoの所得控除を受ける分税金のメリット360万円が、iDeCoがNISAより得する金額ということになります。
では70歳で一括受取りをした際の税金を考えていきましょう。先ほど同様退職所得控除は2900万円ですから資産残高5614万円から差し引き超過分を2分の1します。つまり1357万円が課税対象となり納税額は294万円となります。(1357万円x33%-153万6,000円 所得税の速算表より)
結論として、1800万円を投資元本として資産形成をするのであれば、iDeCoの方がNISAより66万円(360万円-294万円)多く得することがわかります。しかしこれでさえも、所得控除のメリットを計算する際の所得税率が5%であれば所得控除のメリットが270万円となりますから、納税額の方が拠出時のメリットを上回りさらに資金の引出タイミングも自由なNISAの方が良かったということになってしまいます。
iDeCoは不確定要素が多く、将来の受取額が見込みにくい
きっと読者の方の中には、現状の税制でのシミュレーションは、今後税制が変わる可能性もあり、無意味だとおっしゃる方もいるでしょう。
しかし筆者が指摘したいのは、iDeCoは将来の受取り額を試算する際に影響する要因が多く複雑すぎるという点です。掛金上限額も働き方で変動する、所得控除のメリットも収入により税率が異なる、退職所得控除の計算ルールも突然変更される、所得税の税率でさえいつ変るか分らないとなれば、どうやってライフプランを組み立てたら良いのでしょうか?
そもそも国はiDeCoを「税制優遇」と謳って紹介しているのですから、できるだけ税金がかからないように資産形成をしたいという気持ちは非難されるべきことではありません。そのため受取り時に大きな税金の支払が待っているという事実は、なかなか想像しがたいのではないでしょうか?
現在SNSでさかんにいわれる受取り時のルールが5年から10年に変更される点はまだマイナス影響は小さく、むしろ今後生まれるであろうiDeCo長者に対する課税については、いますぐ整理をしていただく必要があるのではないかと筆者は強く思います。
まずiDeCoと企業からの退職金を同じ扱いとするところに無理があると考えます。確定拠出年金は企業型DCから普及が始まったという歴史的な事情があるということも理解できますが、iDeCoはあくまでも任意で加入するものなので、企業からの退職金とは心情的に大きく異なります。
FPとしてライフプラン相談に応じていると、企業型DCも含め会社からの退職金に対して課税されることについては、あまり抵抗なく思われる方が多いように感じます。会社からもらうものという意識がそうさせるのではと筆者は考えます。一方iDeCoの場合、積立元本も含めた総額が課税対象として計算の元になるという点に違和感があるのだと思います。積立時は所得控除になるのに、後から課税されると「騙された感じがする」と表現された方もいらっしゃいました。
例えば、貯蓄性の保険だと一時所得として受け取れるものもあります。この場合、受取り総額から支払った保険料を経費として差し引くので繰り延べされた利益が課税対象となります。そこから特別控除の50万円を差し引き2分の1して総合課税がなされます。
もちろん、利益が出ていればそれなりの税金を支払うことになりますが、自分自身が積立てた保険料については課税対象となりません。もちろん総合課税なので、公的年金等控除後の課税とさほど差はないとなるかも知れませんが、少なくともこの方法であれば先ほどの「騙された感」はなくなるのではないでしょうか?
あるいはNISAのように、iDeCoで積立ができる金額の生涯枠を設定して、いつから積立をはじめても、何年積立てても、拠出額の生涯限度額までについては、掛金拠出時、運用時、受取り時も含め一切税金の支払が発生しないといったシンプルな仕組みにしても良いのではないかと考えたりします。
退職所得控除額が縮小したら、公的年金等控除が縮小したら、所得税率が引き上げられたら、103万円の壁が123万円に変わったらなどなど、現行iDeCoはあまりにも不確定要素が多く、将来の受取額が見込みにくいのは大いに問題があると思います。
時代と共に様々な変更が行われるのは理解できますが、制度はできるだけシンプルに、そして加入者が安心して長期間にわたり活用できる、信頼のおける制度でないといけないような気がします。ぜひ加入者が不安なく使えるような整備の検討をお願いしたいです。
とはいえ、現状ではメリットは間違いなく大きいとはいえ「落とし穴」ともいうべき点が複数存在するiDeCoですので、自己防衛のためにも良きアドバイザーを見つけ、上手に活用されると良いのではないかと考えます。
相談先としては、筆者を含めたファイナンシャルプランナーに個別に連絡してみる、あるいは日本FP協会のホームページにFPの上級資格であるCFPを保有するファイナンシャルプランナーを検索する機能がありますし、J-FLEC(金融経済教育推進機構)という認可法人からアドバイスを受けることもできます。
iDeCoは老後資金作りとしては、やはり有効な手段です。ぜひご自身にとって最適な活用をされることをお勧めします。
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(山中 伸枝)
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