スッキリ端麗! 新型ハリアーはとことん澄み切った“究極の塩ラーメン”だった【ハリアー速攻試乗】
MōTA / 2020年6月6日 12時30分
モータージャーナリスト今井優杏が、2020年6月発売予定の新型ハリアー・プロトタイプにいち早く試乗!一番気になっていた「兄弟車の新型ハリアーとRAV4、味付けってどう分けた!?」を開発責任者に聞いたところ・・・ >>
ハリアーはRAV4と兄弟車、そして開発の統括をしているメンツも一緒だった…だのになぜ!?
スッキリ淡麗。その一言に尽きる。待ってました! の新型ハリアーだ。一般発売を前にプロトタイプに試乗が叶ったので、早速レポートしたい…とその前に、まずはオーバービューというか、ハリアーの位置付け的なものをお話しようと思う。
個人的にもかなり楽しみにしていたハリアーだが、このクルマは先に発売され、これまた大ヒットとなったRAV4(トヨタ内として単一車種として世界で一番売れたそうな)と、アーキテクチャを共用する。
このRAV4がまた、『イヤあんた、いくら世界中で売れそうなミドルサイズSUVパッケージだからって、そんなにコッテコテにやらんでも…』と乗ったコチラが思うくらいにキャラが濃いモデルであった。インテリア・エクステリアはもちろん、エンジニアリング的にもとてもマニアックだったのだ(これ以上は過去記事参照でお願いしたく)。
驚いた! あのコッテリRAV4の濃さとは真逆のあっさりさに
なので、このハリアーもきっと味付けは違えど、濃ゆ〜〜〜い感じで来るんだろうな、と勝手に思っていた。更に言うなら、ハリアーとRAV4が共用するのは、実はアーキテクチャだけではない。主査こそ別の人だが、全体を統括しているのはRAV4開発主査を努めた方で、走りの味付けをする“匠”こと、凄腕技能養成部のテストドライバー3名も、全く同じメンツだったのだ。そしてこの人たち、揃いも揃ってみ〜んなキャラが濃い(笑)! そりゃ放っといてもクルマも濃くなるでしょうよ、と納得してしまうほどに。
しかし、試乗した感じはアラ不思議。むしろ…無味無臭に近いかも。
ん? 私のセンサー、久しぶりの試乗会で狂っちゃった? 自信あったんだけどな! と、DOKIDOKIしながら開発陣に直撃してみた。
兄弟なのになぜこうも違う? 味付けの秘密を“調理人たち”に直撃
ヨンクであることをとことんこだわったRAV4
『あ、解った?』それが最初の返答。お話しくださったのは先述のRAV4開発責任者であり、現在はRAV4、そしてハリアーが属するトヨタ自動車のミッドサイズ・ビークルカンパニー MSZデザイン領域 統括部長に就任されている佐伯 禎一氏だ。『RAV4は、乱立するSUVマーケットに導入するにあたって、“トレンドとは一線を画するSUVのワクドキを提供する”ためのクルマでした。だから、今、マーケットのど真ん中にあたるオンロード系SUVではなく、ヨンク車としてここまでやるか! ということを徹底的にやった。敢えて今、盛り上がっているマーケットではない“本格的クロスオーバー”という隙間を突いたのです。』
ハリアーの性格付けをもっとはっきりさせたかった
『しかし、ハリアーはもうすでに、都会派SUVとしてお客様へのブランディングが出来ている。私は常に、ブランディングというものは車種別になされるべきだと考えています。そういう意味で、RAV4には本格クロスオーバーとしての性格を与え、ハリアーは都会派SUVというはっきりとした性格を与えたかった。そこで目指したのは“雑味のない塩ラーメン”です。』そう、この御方、かつてRAV4を豚骨ラーメンになぞらえていらっしゃったのだけれど、なるほどそう言われれば合点が行く。余計で過剰な走りの味付けは、ハリアーには不要と削ぎ落としてきたということか。
ただ薄味にしたのではなく、雑味のないスッキリした味わいにしたかった
その後、走りの味付けを担当した凄腕技能養成部・片山 智之氏が言葉尻を引き受ける。
『しかし、大事なのは“雑味のない”という部分です。ですから、ドライバーにとって不快だと受け取られるような部分、たとえばコーナリング後半の“戻し”の部分ですね。ハンドルもペダル類も、こういったところの不自然さやレスポンスの悪さ、静粛・制振性などには徹底的にこだわりました。』
さらに佐伯氏が続ける。『RAV4の薄味版、つまり薄めた豚骨ラーメンじゃなくてね、スープが底まで澄み切った美味しい塩ラーメンにしたかったんです。それが先程言われた“無味無臭”という評価につながっているんだとしたら、大成功です』
ああ、してやられた。思うつぼだったか!
試乗したシーンはサーキット。平滑な路面だから、ハンドリングや極端な加減速をテストする以外、たとえば路面の荒れや欠け、超低速でのアンジュレーション、超低回転でのノロノロ走行での評価など、ほんとうにハリアーで試したかった領域では乗れなかったなぁ、とごく自然に思っていた。そう、すでに私はハリアーをブランディングされていたのだ。
オシャレ過ぎる超美麗ルックスに心を射抜かれたワタシ
だって御覧くださいよ、この超美麗ルックス! めちゃくちゃお洒落だと思いませんか。もうココだけの話、レクサスラインナップに入ったっておかしくないクオリティーだと思ってしまった。しかしきちんとレクサスとはキャラを分けている。フロントライトの、すっとメスで切り開いたかのような涼やかさ。プレスラインの極力少ない面構成が美しいサイドビュー(既視感のなさはコレのせい!)。そしてリアオーバーハングが長い、スタイリッシュなリアビュー(これが一番好き)!
試乗しないで買う人続出だと思う。だってホントかっこいいもの。
インテリアも素敵だ。試乗には「Z レザーパッケージ」が用意されたが、室内には新しい加飾の手法が採用されている。馬の鞍をイメージしたという丸みのあるセンターコンソール形状をはじめ、乗り込んだらすぐに上質を満喫出来る、レザークラフトライクな細工が細部になされている。ドア内側には先代まで鼻先に鎮座していたハリアーエンブレムがあしらわれ、代替えオーナーの心をもくすぐる仕掛けだ。
乗ってみてわかった、ハリアーのハイブリッドとガソリンのキャラクター
共通するのはTNGAが生み出した上質でフラットな乗り味
パワートレーンはRAV4と同じ2.0リッターNAエンジンとCVTの組み合わせにFFと4WDの2つの駆動が、2.5リッターハイブリッドにもFFと電気式四輪駆動のE-Fourが用意される。実は2.0リッターガソリンエンジンの4WDのみ試乗は叶わなかったのだが、試乗した3種で言えば、どれをとってもすごくちゃんと上質な塩ラーメンになっている。先程「試乗しないで買う人続出」と述べたけれど、正直どれを選んでも問題ないと断言しよう。満足度はかなり高いと思う。安心してほしい。
まず共通して言えるのは、“これを備えたトヨタ車はテッパン”とまで言われるTNGAプラットフォーム。そして、RAV4とは違った味を持たすために採用された新開発のショックアブソーバーを備えていること。これにより、ストロークを活かすRAV4とは違い、コーナリング中でもキャビンをフラットにキープする。
そして、先代からの大きな進化ポイントは、重ったるかった(すみません)ステアリングが格段に軽くなったこと。しかし、ただブラブラに軽いというんでは毛頭ない。ニュートラルはしっかりしていて、手応えも切り方向・戻し方向っともに絶妙の質感になっている。これにも新しいEPS制御の刷新がなされている。
もっとも上質で快適だったのは2.5リッターハイブリッド×4WD
その中でも価格を考えず順位をつけるならば、やはりハイブリッドのE-Fourはとても良い。ハリアーが自信を持つ、静粛・制振性が一番際立つモデルで、走り出しのモーター領域からエンジン走行エリアまで際立って上質だ。四輪駆動の効果は、ハリアーに関しては走破性とかワクワク感以前に、“ラクさ”を強く感じた。いくらフラットとはいえ、車高の高いSUVというパッケージにおいては、やはりロール量はそれなりにある。そんなとき、駆動をコーナー後半で足してくれるE-Fourはやはりラクだ。疲労度もかなり少ないから、ロングドライブの帰路で効果を発揮してくれるはずだ。後部座席に乗っていたMOTA編集長・T氏の乗り心地評価もコレが一番高かった。FF・2リッターガソリンは「とにかく軽快! とにかく楽しい!」
続いてはガソリンエンジンのFF。とにかく軽快、とても軽やか! 全体的に軽やかなせいでハンドリングがとても楽しいし、車重が抑えられている分、サスペンションのしなりなどが素直で、純粋に運転が面白い。軽いぶん、右へ左へとロールが切り替わるようなシーンでも、トントンと荷重が切り替わり、フラフラするような挙動は(そもそもハイブリッドでもあまりないのに、さらに)抑えられていた。すごくスポーティー!
ハイブリッドとガソリンの価格差を考えると、もう断然“アリ”だ。満足度はかなり高いと思う。もうちょっとパワーが有ってもぜんぜんOK。それくらいフレームがしっかりしているのを、肌で感じることが出来るくらいだ。だから贅沢言うならターボ版も欲しいくらい。いつか追加されるのを期待したい。
新設定の2.5リッターハイブリッド×FFはイイとこどりでコスパも良さげ
続いては同じくハイブリッドのFFをオススメしたい。制振・静粛性はE-Fourと同じ。しかしやはり重量からか、コーナー後半には外へ外へと膨らむような感じになり、それをハンドルで抑え込む、という操作が必要にはなる。しかしこれはあくまでサーキットでの試乗の結果だし、ほとんどの人はハリアーFFをフルブレーキ、のちに時速80キロでコーナリング、なんてしないだろうから、そこまで過敏になる必要はないと思う。ゆえ、一般道での機能的には十二分だと思われる。
一度実車を見るべし!それだけできっと欲しくなっちゃうはず…
気になる安全面も大きく進化した。最新世代のトヨタ・セーフティー・センスが採用され、さらにデジタルインナーミラーには前後録画機能がトヨタ車初採用された。コネクティビティではもちろんT-Connectを採用し。スマートフォン連携機能も標準装備されるという。いやはや、想像上に素敵だったハリアー。実物のほうが断然素敵だから、是非実物を観に行って欲しい。きっと欲しくなりますよ!
[筆者:今井 優杏/撮影:茂呂 幸正]
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