絶品過ぎる“大トロ” RAV4 PHVは新型ハリアーをも超えた![速攻試乗]
MōTA / 2020年6月9日 16時30分
2020年6月8日、トヨタからRAV4の新ラインナップ“RAV4 PHV”が追加された。文字通りのプラグインハイブリッドモデルだが、ただのエコカーではないらしい。モータージャーナリストの今井 優杏さんがサーキットで速攻試乗。どうやらあの新型ハリアーをも超える凄さがあるらしい・・・気になるファーストインプレッションをお届け! >>
新型ハリアーの検討中のアナタ、ちょっと待って!
あなたがもしSUVの購入を考えているならば、是非こっちも比較検討して欲しい。5月からトヨタは販売チャネル廃止しているため、もし試乗車さえ揃っていたら、同じお店で両方の試乗が叶うかもしれないしね!
…と、ハリアーにすっかり傾いたアナタの気持ちにブレーキをかけてまで(ハリアーも素晴らしかったにもかかわらず!)オススメしたいのは、正直言ってこのクルマの仕上がりハンパねえから!
あのRAV4のプラグインハイブリッド、RAV4 PHVの登場だ。
PHVはRAV4シリーズ最上級モデルの位置付け
具体的には専用フロントグリルとロアモール、垂直に入ったLEDデイライト、そしてピアノブラック調のモールドが前後フェンダーあたりに採用されている。また、ルーフとドアミラーを同じくピアノブラック調にする2トーンカラーも用意されていて、コチラもモダンだ。アルミホイールも新意匠。19インチという勇ましいサイズも選択出来る。
インテリアも上質。面白いのはこれまで最上級だったアドベンチャーと意匠はほぼ同じなのに、カラーと素材で全く別の洗練された印象を備えていること。こちらは黒基調に赤のステッチを随所に散りばめたスポーティーかつアダルトな雰囲気が最上級の貫禄を漂わせる。
スポーツカー顔負けのハイスペック、なのにエコ性能もバツグンってそんなばかな!?
さらにEV走行距離は95km、さらにハイブリッド走行を加えたら航続距離は驚異の1,300km以上と、エコな頼り甲斐も発揮する。
さて、このプラグインハイブリッドシステムは「THSII Plug-in」と名付けられた新開発のものとなる。御存知の通りトヨタにはすでにプリウスPHVが存在するが、押しも押されもせぬ世界戦略車RAV4のために、さらに技術に刷新を加えている形だ。
RAV4にはハイブリッドモデルもラインナップしてるが、このハイブリッドシステムよりもフロントモーターとインバーターを高出力化し、大容量・高出力の新型リチウムイオンバッテリーと組み合わせた。このリチウムイオンバッテリーを車体中央の床下に搭載することで低重心化・重量バランスの最適化も図っている。
むろん車台はTNGAのGA-Kと呼ばれるミッドサイズプラットフォーム。役者が揃ったとでもいおうか、“イマのトヨタ”のテッパン技術がぜ〜んぶ注ぎ込まれているのだ。
“大トロ”なのにコスパはバツグン! その秘密はどこにある!?
その秘密は独自取材で顕になった。
RAV4 PHVが“大トロ”な理由を開発者に直撃取材
ハリアーは“端麗塩ラーメン”、RAV4は“濃厚豚骨ラーメン”だと教えてくれたあの人に訊いてみた
実は佐伯氏、RAV4発売のときから『実はね、すんごいのが追加されるから、絶対に楽しみにしていて!』とチラつかせてくださっていた。
試乗を終えてつい、走り寄ってしまった。
『佐伯さん、これミシュランに載っても良いくらいの絶品大トロでした!』と(私と佐伯氏はとにかくクルマを食べ物で表現するのがルーティンなのだ)。
『でしょう!ほんとうにこだわったんだよ、その秘密はね・・・』
以下、佐伯氏の独占インタビューを読者諸兄にコッソリお教えしよう。
PHVだけは格上のプラットフォームを使用
いや、TNGAのGA-Kであることは相違ない事実。しかし実はこのGA-Kには2種類のバリエーションがあるという。
ひとつはスモール〜ミッドサイズを担うGA-K。もう一つは大型ミッドサイズまでもを網羅するGA-K。具体的にはRAV4、ハリアーが前者、そして北米などで売られる大型の3列シートSUV、ハイランダーは後者に入るのだという。重量とパワーのあるRAV4 PHVにはより強度の高いこのハイランダーと同じプラットフォームを使用したというのだ。
さらにサスペンションもRAV4、ハリアー、そしてこのRAV4 PHVと、それぞれダンパーとブッシュなどの組み合わせを各車の特性に合わせて変えているのだという。
RAV4 PHVの上質できめ細やかな走り、その制御を支える技術の要とは
スポーツ4WDのようによく曲がり、しかもナチュラルだったRAV4 PHV
その前に個人的なインプレッションを述べさせていただくと、先述のとおり速いわパワフルだわE-Fourの電気式の四輪駆動の制御はきめ細やかだわで、モーター由来の圧倒的トルクが直線番長の揺るぎない稲妻のような加速を見せてくれはするんだけれども、そこからのフルブレーキ〜コーナリングと、走る・曲がる・止まるのどこを切り取っても質感の隙間がないと言うか、ダルさを感じさせないというか、とにかく制御がきめ細やかに張り巡らされているのにとても驚いた。
サスペンションは18〜19インチという大径タイヤ装着ながら、双方偏平率55%〜60%と高偏平なことも相まって、もっちりしたストロークを存分に楽しめるものだ。
しかし、通説でいえばストロークが深いということはロール変化も大きいということで、特にターンアウトではドライバーにテクニックを強いることがままある。
しかし、このRAV4 PHVに関しては、そのターンアウトあたりがまるでスポーツ四駆のように踏めば踏むだけ曲がっていくし、ハンドリングがとてもナチュラルなことに驚いていたのだ。
「“戻し側”制御の質感にこだわった」とはいったい!?
「今回こだわったのは“戻し側”の制御です。結局、そこが不自然だから次の加速、次のコーナリングに備えての負担が大きくなってしまう。戻し側が自然でリニアならば、ドライブの質感は格段にアップします。
驚いた。システム最高出力306PSを活かすのに、スペック表には掲載されない戻し側の制御に気を配ったとは!!
この“戻し”というのは、アクセルペダルのオンオフのオフ側、ブレーキペダルのオフ側、そしてハンドルの切り始めじゃなく戻すとき、を指す。特にアクセル・ブレーキなどペダル操作では、どんなドライバーでも意識の有無に関わらず、必ず“抜き”方向で調整を行っているはずなのだ。たとえば信号待ちのラインに合わせるとき。渋滞時のノロノロ運転。そしてハンドルも必ず“切り戻し”という操作が必要になる。これの質感をとにかく鍛えたのだという。
「ベンチマークしたクルマはありますか?」と聞くと「どのメーカーのどのクルマ、ではなく、人間が感覚的に“良い”と感じる感度のレベルをベンチマークした」のだそうだ。
今のトヨタのクルマの味付けの、真骨頂を見た気がした。豊田章男氏の言う「もっといいクルマづくり」とは、まさにこういうことなのだ。
“流行りの”ワンペダルドライブを採用しなかった理由
さらに言うなら「あ、でもワンペダルドライブに近い感覚なら、スポーツモードを選択していただければ可能ですので!」・・・全方位にぬかりなし。ぎゃふん。
そしてこの“戻し方向”の制御の緻密さこそ、大容量バッテリーに拠って設定に幅が広がったためというのだからユニークだ。PHVにしか出来ない上質さがあるということに、このパワートレーンの未来を感じた。
RAV4 PHVが示唆する次世代トヨタEVの方向性
万が一の時にも役立つ! 充実の外部給電機能
最大1500W(AC100V)の外部給電機能を標準装備しているのだ。ラゲッジスペースにあるコンセントのほか、付属のコネクターを普通充電インレットに差し込めば、それをコンセントとして使用することが可能。EV給電モードはバッテリー容量だけを使って給電するが、HV給電モードは優先的にバッテリー容量を使用するものの、所定値を下回るとエンジンが起動し、ガソリンで発電して給電する。その量、ガソリン満タンからなら生活に必要な3日分の電気をまかなえるという。
最後に。
このRAV4 PHVは将来のトヨタのピュアEVの方向性を示唆するものだそうだ。PHVで得た知見が活かされるんだとしたら・・・近い将来出てくるトヨタのEVは、かなりの質感を持っていると期待したい。
[筆者:今井 優杏/撮影:茂呂 幸正]
※6月12日(金)11:00 文字間違いを一部修正いたしました[MOTA編集部]
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