軽自動車の「衝突安全性能」、その現実は!?【I LOVE 軽カー】
MōTA / 2020年6月18日 12時25分
軽自動車は広い居住空間や高い利便性だけ? やっぱり事故ったら普通車に比べて危ない? そんなこと全然ありません! 最近の軽自動車は安全性能が格段に進化しているのです。ここでは、具体的に何がどう進化しているのか、メーカーによって何が違うのかを、各安全装備ごとに分かりやすくお届け! 今回は、軽自動車の「衝突安全性能」について解説していきます。
今回は「衝突してから効く安全性能」のお話
いま、自動車は「安全性能」で選ばれる時代になっている。それは軽自動車であっても変わりはない。
とはいえ、ひとくちに「安全性能」といってもいくつかの方向がある。大きく分けると「衝突する前の安全性能」と「衝突してからの安全性能」の2つだ。前者は予防安全性能などとも呼ばれ、代表的なのは「衝突回避支援ブレーキ(緊急自動ブレーキ)」など事故を未然に防ぐ仕掛け。後者は「衝撃吸収ボディ」や「エアバッグ」といった、事故を避けることができずにぶつかってから乗員を保護するものがあてはまる。今回は、後者の「衝突してから効く安全性能」をみていこう。
前方のエアバッグはもはや当たり前…、では側面のエアバッグは?
クルマが衝突した際に命を守ってくれる装備といえば、多くの人はエアバッグをイメージすると思う。エアバッグとは衝突した瞬間に袋(バッグ)に空気が入って風船のようになり、衝撃を吸収して和らげてくれるもの。実際に乗員を保護する効果は高い。しかし、そんな大切なエアバッグながら、「備わっていないクルマもある」と言えば意外に感じる人も多いことだろう。
たしかに、運転席と助手席の前にあり、前方からの衝撃に効果を発揮するエアバッグは昨今の新車は軽自動車でも全車標準装備だ。しかし、側面衝突(横から衝突されたとき)に横方向からの衝撃を吸収するエアバッグは、あなたのクルマや、あなたがこれから買おうとしているクルマには果たして搭載されているだろうか?
側面からの衝撃を和らげるエアバッグのひとつは「サイドエアバッグ」と呼ばれ、軽自動車では「標準装備されているクルマ」「オプションで選択できるクルマ」そして「装着できないクルマ」がある。安全を優先するクルマ選びなら、必ず装備しているクルマを選ぶべきだ。何よりも失いたくない、あなたと同乗者の大事な命のためである。さらに横方向のエアバッグとしては、サイドウインドウ付近に展開して頭部を衝撃から守る「カーテンエアバッグ」も存在する。もちろん軽自動車でも装着車があるから、搭載しているか否かはクルマ選びの基準とするべきだ。生死を分ける状況で、命を守るためにである。
実際に第三者機関が行った衝突実験の評価結果を見ることができる
ところで、ニュースなどで事故を起こした車両を見ると、あまりにボンネットがつぶれているのに「乗員は軽いけがで済んだ」と聞いて驚くことはないだろうか?
実は、そのつぶれたボンネットに大きな意味がある。つぶれることで事故の衝撃エネルギーを吸収し、逆に居住スペースは頑丈に作って変形を抑えて乗員を守る構造になっているのだ。それが衝撃吸収ボディである。
衝撃吸収ボディによる乗員保護性能の良し悪しは実際に事故を起こしてみないとわからない……のは半分事実であるが、実は目安となる評価があって公開されている。独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)がおこなっている、「JNCAP」と呼ばれる評価試験だ。メーカーを問わず同じ条件で衝突実験をおこない、その結果を「乗員保護性能」としてなどで公表。その結果は、安全性の高いクルマを求める人の、クルマ選びの目安となる質の高い情報といえる。クルマ選びにこれを利用しない手はないだろう。
また、その結果に「歩行者保護性能」や「シートベルト着用警報」の有無を評価に加えた「総合評価結果」も公開されているので参考とすることをオススメする。
サンプルとして、人気の軽自動車と参考車種の状況とエアバッグ装備状況を見てみよう。点数は数字が大きいほうが優れていて、★の数は多いほど高評価となる。
ホンダ N-WGN
総合点:88.7点(★★★★★)歩行者保護性能:30.37点(37点満点)
乗員保護性能:55.34点(59点満点)
シートベルト着用警報:3.00点(4点満点)
装備されているエアバッグ:フロント+サイド+サイドカーテン
日産 デイズ/三菱 eKワゴン/eKクロス
総合点:86.5点(★★★★★)歩行者保護性能:30.50点(37点満点)
乗員保護性能:53.07点(59点満点)
シートベルト着用警報:3.00点(4点満点)
装備されているエアバッグ:フロント+サイド+サイドカーテン
ダイハツ タント
総合点:80.2点(★★★★)歩行者保護性能:27.66点(37点満点)
乗員保護性能:49.58点(59点満点)
シートベルト着用警報:3.00点(4点満点)
装備されているエアバッグ:フロント+サイド+サイドカーテン
※参考までに登録車(白ナンバー車)の調査結果も
レクサス UX
総合点:87.3点(★★★★★)歩行者保護性能:27.86点(37点満点)
乗員保護性能:56.95点(59点満点)
シートベルト着用警報:2.50点(4点満点)
装備されているエアバッグ:フロント+ニー+サイド+サイドカーテン
ホンダ CR-V
総合点:85.9点(★★★★★)歩行者保護性能:26.02点(37点満点)
乗員保護性能:57.43点(59点満点)
シートベルト着用警報:2.50点(4点満点)
装備されているエアバッグ:フロント+サイド+サイドカーテン
メルセデス・ベンツ Cクラス(2019年モデル)
総合点:85.7点(★★★★★)歩行者保護性能:31.66点(37点満点)
乗員保護性能:52.08点(59点満点)
シートベルト着用警報:2.00点(4点満点)
装備されているエアバッグ:フロント+ニー(運転席)+サイド+サイドカーテン
リアルワールドでの事故は、状況により結果は千差万別
JNCAPの結果はあくまで定められた試験での結果であり、この結果がすべての事故の状況を表しているわけではない。それはしっかりと認識する必要がある。いっぽうで、この結果を登録車(白ナンバー車)と比べてみると軽自動車の乗員保護性能は大枠としては普通車に対して若干低めではあるものの、著しい差が生じているわけではないことがわかる。またN-WGNのように上級車を超えるほど優れた乗員保護性能を誇る軽自動車もある。ただし、現実の道路上でクルマ対クルマの衝突事故が起きた場合は、相手との相対関係によって車体が大きく重いクルマに比べると軽自動車の乗員保護性能は不利なケースがあることも否めない。なんとも微妙な表現だが、リアルワールドでの事故は、状況により結果は千差万別なのだ。
とはいえ間違いないのは、軽自動車でも安全性能は年々向上していること。そして、車種によるばらつきはあるが、全体的には普通車と比べても大きく劣るわけではないのは覚えておきたいところだ。
[筆者:工藤 貴宏]
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