燃費がさらに2割アップ!? エコな48Vハイブリッドをもっと生かすドラテクとは|ボルボ XC60 B5の燃費性能をガチで検証
MōTA / 2020年7月7日 14時0分
昨今、SUVがアツい!なんて、わざわざ言う必要もないくらい、SUVはもっとも人気のあるボディタイプだ。ただ、コンパクトカーなどに比べれば車体が大きく重量もあるため、どうしても“燃費”という点では不利。しかも、輸入車となれば、燃費に対して良い印象を持っていないユーザーも少なくないだろう。 >> そんな中、今回ボルボ・カージャパン主催の報道陣向け試乗会で、2020年4月23日に発売されたばかりのボルボ XC60 B5 AWD Inscriptionの燃費を実際に試すチャンスが訪れた。環境に配慮した48Vハイブリッドだという。
6チームによるガチンコ燃費競争にチームMOTAも参戦!
そもそも今回は、いつもの試乗会とはちょっと違う雰囲気。「XC60 B5 Fuel economy competition」と題された企画で、MOTAを含めた5媒体にボルボ・カージャパン広報部を加えた全6チームによる燃費競争をやりながら、ボルボのロングドライブ性能を堪能しようという趣向なのだ。スタートは東京・芝公園。常磐道を通って福島県いわき市にある「シーフードレストラン メヒコ」を目指す、走行距離200km超えのロングランドライブである。
48Vハイブリッドってどんな仕組み!?
まずは我々MOTAチームが駆る、ボルボ XC60 B5 AWD Inscriptionを簡単におさらいしておこう。“B5”とは、これまでのT5エンジンに変わるもので、第3世代に進化した2リッター直列4気筒ターボDrive-E(ドライブ・イー)エンジンに、発電と動力補助機能を併せ持つISGM(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター・モジュール)を備えたマイルドハイブリッドシステムのこと。
従来よりも電圧の大きな48Vバッテリーを使用することで、これまでの12V電源よりも力強く、かつ、いわゆるストロングハイブリッドよりも重量増加を最小限に抑えた。
発進や加速時には、最大40Nmのトルクを発生するISGMが動力を補助。さらにエンジン内部の摩擦抵抗を抑え、条件が揃えば2気筒を休止するCDA(気筒休止)を備えたことで、エンジンの運転効率を高めている。
なお実測値に近いとされるWLTCモード燃費は11.5km/L。各モードでは市街地モード8.3km/L、郊外モード11.9km/L、高速道路モード13.5km/Lとなっている。
もともとボルボは、ロングドライブを得意としているだけに、これらの新機構がどの程度威力を発揮するのか、そして新世代エンジンの進化具合など、非常に楽しみな試乗会となった。
決して電気が主張しない滑らかな加速
スタート地点において、広報の方に車両の燃費計をリセットしてもらい、いざスタート。1900mmの全幅、ちょっと狭い都内、さらにMOTAのT編集長を乗せている(!)とくれば、それなりに緊張していたが、走り出してみるとアラ不思議。もちろん、1900mmという大きさは多少感じるものの、車両感覚が掴みやすく運転がとてもしやすい。48Vのマイルドハイブリッドはとにかく自然で、デキの良いスーパーチャージャーのような感覚。モーターでグイグイ盛り立てるというよりは、ターボの加給が立ち上がるまでを補いつつ、全体的にトルクを上乗せしてくれるような感覚(あくまでも感覚)で、1.9トン超えの車とは思えないほど軽快かつ滑らかに加速することができる。
これまで2代目XC60のデビュー以来数千キロに渡る試乗を重ねてきたT編集長によれば「以前のモデルに比べて吹け上がりも軽快になったかも?」とのこと。好印象なのは、進化した第3世代エンジンによる効果も相当に大きそうだ。
エコランだけど無理はせず…その姿勢がのちに勝敗を左右…!?
そんな最新の48Vハイブリッドに感動しつつ、首都高から常磐道に入る。今回の企画はあくまで燃費競争。法定速度を守りつつ、全車速追従機能付ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)とパイロット・アシスト(車線維持支援機能)を起動し、一定走行を心掛ける。もちろん走行モードはEco(エコ)を選択。Ecoモードはエココースト機能やアイドリングストップの強化、エアコンの最適化など、車両制御の様々な部分に燃費向上のための制御が加わる。さらに試乗車はオプションのエアサスペンション装着車だったので、通常モード(Comfort)に比べ車高も10mmダウンし、空気抵抗まで低減するのだからスゴイ。ここは素直に“文明のチカラ”に頼ることにする。
ACC&パイロット・アシスト任せでエアコンもON! 快適快適♪
ちなみに梅雨入りしていたこともあり、試乗日は湿度は高め。男2人のむさくるしいドライブにエアコンは必須だ。そんな訳でエアコンはオートモードONにしっ放し。ただし走行モードがEcoの場合はエアコンの効きも抑えられる。平日午前の常磐道下りということもあり、渋滞は皆無。常に一定速度で走っているため、条件としてはCDA(気筒休止)が作動しているはずだが、切り替えポイントは意識を集中していても全く分からず、とにかく車内の静粛性は常に高い。
まさか! 痛恨のミス!…勝敗を大きく分けたモード選択の差
途中、撮影やトイレ休憩などで2回ほどサービスエリアに寄ったのだが、ここで大きなミス。そしてそのミスが、あとあと燃費競争の結果に大きく響くことになる…。休憩後も順調に進み、いわき中央インターから、国道49号線へ入る信号待ちでそのミスに気が付く。走行モードが「ECO」ではなく「コンフォート」になっている!
どうやらエンジンを切ると、自動的に走行モードがコンフォート(ノーマル)に戻る設定のようで、それに気が付かず、全行程の半分以上をコンフォートで走っていたのだ。EcoモードではフルデジタルのメーターパネルもEcoモード用の表示になっているわけで、気が付かなかったのは完全に筆者のミスです。ハイ…。
片道200キロくらいのドライブなんて楽勝だった
燃費競争という企画内容を考えると、残念やら申し訳ないやらの気持ちでいっぱいになりつつ、隣のT編集長も微妙な顔をしているのが横目にも伝わってくる(お、怒ってるのか、もしかして!?)…。しかしここまでの平均燃費を見ると、あれれ? 意外と悪くない。WLTCモード燃費の数値は明らかに超えている。
そんな拍子抜けしたような思いに駆られつつも下道を約12km程走り、無事「シーフードレストラン メヒコ」に到着。東京・芝公園を出発してから、途中休憩をはさみつつ約2時間半、200km以上走ってきたけれど、疲労感はほとんどない。過去にXC60などで何度も北海道から東京までドライブした経験を持つT編集長曰く「楽勝ですね」と笑顔に。あ、怒ってはいなかったようで一安心(笑)。
トップチーム記録は19.1km/L!果たしてMOTAチームの結果は?
シーフードレストラン メヒコでは、参加者全員が本物のフラミンゴに感動しつつ、カニの半身がドドンと乗った名物のカニピラフ(筆者はウニピラフ!)に舌鼓を打ちつつ、運命の結果発表へと移っていく。
潔く結果をお伝えすると、MOTAチームの平均燃費は16.2km/Lで堂々のビリ!(う、申し訳ない…。)そして、なんとトップの記録は驚愕の19.1km/L!
ええっ!?
車重1.9トンを超えるAWDのSUVとして、その記録は驚くべき結果だ。繰り返しになるが、WLTCモード燃費は11.5km/Lなのだから、大幅にモード燃費を超えてきた!
筆者、負け惜しみ(!?)の弁解を述べる
ただし、ここで一つ負け惜しみを言わせていただきたい。T編集長はもちろんのこと、元整備士である筆者は、どういったことに気を付ければ燃費が良くなるのか、ある程度の基礎知識は持ち合わせている。エアコンを切り、無駄な加減速を行わないなど、様々なテクニックを駆使すれば燃費は確実に伸ばすことができる。
だがしかし!
一般ユーザーの立場で考えれば、湿度の高い梅雨時期にエアコンを切り、法定速度できっちり走り切る、などということはまず行わないはず。そのため、実は最初から燃費競争でトップになる気はなく、想定した通りの結果(ECOモードの設定ミス以外は…)。つまり、一般ユーザーが特に気を使わず、時間に余裕を持って快適に移動するのと同じような条件でも、モード燃費のみならず、事前情報で聞かされていた14.7km/Lという参考実測燃費(ボルボ・カー・ジャパン社内測定値)をも大きく超えることができたのである。これは、ヤラセ無し、忖度無しで言って、十分すぎる燃費性能だと言えるのではないだろうか。
「低燃費走行に挑戦!」僕らも燃費2割アップを目指す!
恥をしのんで・・・勝者に必殺技の数々を訊いてみた
とは言え、トイレ休憩後のミスに反省しつつ、いったいどんな方法を実践したのかを、恥をしのんでトップのチームにこっそり訊ねてみた。すると「エアコンは完全OFF」「基本的にACCは使わない」「アクセルは常に一定」「ACCを作動させている時、前に車が入ってきそうな場合は先読みしてあらかじめACCの設定速度を落とし、無駄な加速をさせない」などなど、かなり気合の入った回答が返ってきた。そこまでやるかー。
流石に普段そこまではできないなぁと思いつつ、自由行動となる帰りは、MOTAチームも超低燃費走行に挑戦する(というか編集長命令が下った!)。
燃費向上テクを駆使し、帰路は驚きの燃費結果を達成できた!
いわき市周辺でXC60 B5の撮影を済ませた後、燃費計をふたたびリセット。曇り空で気温も下がっていく夕方ということもあり、エアコンはOFFでも問題はなさそう。走行モードは必ずECOモードを使用し、もちろん法定速度厳守。さらにACC+パイロット・アシストは使いつつも、周りの車に影響されないよう車間距離を広めにとって走るなど、さっき訊いた技を全て駆使して走ってみた。その結果・・・帰路は何と19.7km/Lを記録!
福島・茨城から東京方面へ向かう常磐道は全体に下り坂が多いとは言え、夕刻の首都高速や都内の下道を走ったことを加味すれば、十分すぎる結果になったと自画自賛しておこう!
燃費2割アップを達成! でも、上には上がいたのだった・・・
ちなみに帰京後、ブービー賞だった某Motor MagazineチームのKさんに帰りの状況を聞いたところ、なんと20km/L超え!だったとか。ええっ! (やっぱり相当に悔しかった模様。わかります…)彼らも同様にエコモード・ACC・エアコンオフで走っていたようだが、我々との違いは、下り坂ではいったんACCを切り、積極的にエココースト機能(コースティングモード)へ切り替わるようにして走っていたとのこと。
コースティングモードは高速道路などで定速運転をしている際に自動的に空走状態(惰性走行)とすることで、エンジンブレーキがかからず、燃料消費をアイドリング時と同等にすることができるモード。ACC使用時には作動せず、またブレーキやアクセルを踏んだりシフト操作などをすれば即座に切り替わる。
一見地味な機能だが、やはり長距離での高速走行時における累積の燃費効果は、MOTAチームとの結果の違いで実感出来る。ああ、忘れてた…無念!ただ今回の試乗会では、燃費が不利と言われる大型SUVの輸入車で、しかも、一般ユーザーの使用条件に近い状態で16.2km/Lという結果を得られたことは、とても大きな収穫となった。これは言い訳でも負け惜しみでもなく、である。
[筆者:増田真吾/撮影:MOTA編集部]
VOLVO XC60 B5 AWD Inscription 主要諸元(スペック)
■全長×全幅×全高:4690mm×1900mm×1660mm/ホイールベース:2865mm/車両重量:1890kg/乗車定員:5名/エンジン種類:直列4気筒 DOHC16V インタークーラー付ターボチャージャー ガソリン直噴エンジン+電気モーター/総排気量:1968cc/最高出力:250ps(184kW)/5400-5700rpm/最大トルク:35.7kg-m(350Nm)/1800-4800rpm/使用燃料:無鉛プレミアムガソリン/モーター最高出力:10kW/3000rpm/モーター最大トルク:40Nm/2250pm/電池種類:リチウムイオン電池/トランスミッション:8速AT ギアトロニック/WLTCモード燃費:11.5km/L(市街地モード:8.3km/L/郊外モード:11.9km/L/高速道路モード:13.5km/L)/タイヤサイズ:235/55R19/サスペンション形式:(前)ダブルウィッシュボーン式(後)マルチリンク式/車両本体価格:734万円(消費税込)
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