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ホンダらしさ全開! ホンダeは超がつくほど小回りバツグン&走りは超新鮮なデキ

MōTA / 2020年10月23日 14時30分

ホンダ Honda e(ホンダイー)

興味のない人にとっては、どうでもイイ話ではあるが、RRと聞けばクルマ好きは「お!」となるハズ。そう、ホンダ初のEVとしてデビューしたホンダeはボディの後方に駆動系を配し、後輪を駆動するポルシェなどの本格派のスポーツカーが採用する配置なのだ。ホンダeはご存知の通り、スポーツカーではないが、RRとしたメリットがかなりあるという。今回、実際に街中でテストしたので、その答えを教えます! >>

ホンダ Honda e(ホンダイー)

賛否あるが、バッテリー容量は必要十分

全長3895×全幅1750×全高1510mmと、かなりコンパクト。フロントのドアハンドルは収納式、リヤはヴェゼルなどと同じ窓側に設置されており、一見2ドアのようにも見えるデザインだ

パッと見はFFハッチバックに見えるが、モーターはリヤに搭載され、後輪を駆動する。モーターはクラリティと同じで出力はベースグレードが136馬力、上級のアドバンスが154馬力でトルクは共通の315Nm。

バッテリーは35.5kWhの容量で航続距離(WLTCモード)はベースグレードが283km、アドバンスが259km。これに関しては賛否があるようだが、筆者はバッテリーが少ないので普通・急速ともに充電時間も速いうえに、EVにしては車両重量も軽量なので電費も良いなど、これ1台ですべてを賄う……という使い方をしなければ十分だと思っている。

開発途中でコンセプトを大変更! 結果ホンダらしさ全開のデキに

前輪の切れ角を見て! ドリフトマシン並みに切れるフロントタイヤはRRにしたおかげで実現。転回時などは超便利

プラットフォームはホンダe専用でリヤにモーターを搭載、後輪を駆動させるRR方式だ。

じつは開発当初はFFレイアウトで進めていたそうだが、フロントオーバーハングが伸びる/転舵がしづらい……という問題が発生。ボディ設計部門から「リヤ駆動にしてほしい」と話しが持ち上がったそうだ。

すると他の設計からも「これだけトルクがあってFFは……」との意見も見え隠れしていたこともあり、開発途中リヤ駆動に変更されたそうだ。じつは開発途中のフルモデルチェンジはホンダの伝統でもあるのだ(笑)。

市販車最強レベルの小回り性能! 狭い道や切り返しは絶品レベル

同サイズのクルマでは何度も切返さなければならないシーンでも、ホンダeであれば一発でクリア! それほど小回り性能がバツグンなのだ

RR駆動にしたことで前後オーバーハングは短いまま、転舵の問題も解決し最小回転半径は軽自動車をも超える4.3m、さらに前後重量配分は50:50……といいコト尽くしである。

サスペンションはこのサイズのクルマでは珍しい4輪ストラットを採用。基本素性の良さに加えて床下にバッテリーを搭載する事による低重心化(何とNSX並み!!)も相まって、ステアリングやサスペンションの味付けも基本に忠実なセットだ。

写真は上級グレードのアドバンスが装着する17インチタイヤだ

ちなみにタイヤは前後異形サイズで、ベースモデルはフロント185/60R16・リヤ205/55R16のヨコハマ・ブルーアースA。一方アドバンスはフロント205/45ZR17・リヤ225/45ZR17のミシュラン・パイロットスポーツ4を履く。

ホンダ Honda e(ホンダイー)

EVらしい爆発的加速は0! 力強さではなく気持ち良さがウリ

では、実際に乗るとどうか? 今回試乗したモデルは上級のアドバンスだ。第一印象はいい意味で「EVらしくないな」である。

テスラなどのように“ガツン”とくるタイプではなく、内燃機関車からの乗り換えでもすぐに慣れそうなフィーリングが魅力

モーターは内燃機関と違って「応答遅れ」はゼロ、アクセルを踏んだ瞬間から必要な駆動力が得られる……という意味ではEVの特徴は感じるが、他社製のEVのように踏んだ瞬間から「凄いでしょ!!」というようなエンターテイメント的な力強さではない。

あくまでもドライバーのペダル操作に合わせて必要なだけ力強さが増していく印象だが、後ろからグッと押されるRRの感覚は実感できる。

もちろん3リッターV6エンジン並みと謳われているトルクは数値以上の力強さを感じたが、これは航続距離を割り切ったことでバッテリー搭載による重要増も抑えてられているのが効いていると思う。

シニアチーフエンジニアを務めた一瀬氏は「EVはエコなのでECONモードは付けなかった」と語るが、個人的にはノーマル/スポーツだけでなく、もう少し穏やかな特性のモード(タウンモード!?)があってもいいように感じた。

クルマの動きは新鮮さバツグン

フットワークはいい意味では普通だ。直進時はコンパクトハッチであることを忘れるくらい重厚で路面にピターっと張り付くように真っ直ぐ走るが、そこからステアリングを切り込んでいくと、まるでギヤの精度が増したかのような高い応答性でキビキビとクルマのノーズをインに向けるハンドリングマシンに変貌する。

ただ、サスペンションはムダな動きは抑えるが決して引き締めすぎていない……と言う絶妙な味付けで、穏やかなのに一体感が高い、しなやかな動きなのにロール(車体の傾き)は少ないと言う不思議な感覚である。

つまり、従来のロールを抑えたわかりやすいスポーティさではなく、ロールを活かし綺麗に動かす……という新時代のスポーティというイメージ。これはモーターの特性(=振動が少ない)を活かしたマウント方法や、基本素性の良さ(前後重量配分50:50/低重心)を活かすことで、サスペンションを必要以上に固めなくても、理想の走りが実現できたのだろう。

転回やUターンが超ラクに

左前タイヤの切れ角に注目! どんだけ曲がるんだ? ってほど切れる!!

ホイールベース2530mmで最小回転半径4.3mの取り回しの良さは感動レベル。可変ギアレシオのステアリング(VGS)で大きく切る際にはクイックになるので操作は普通だが、Uターンや車高入れ時は慣れるまでは曲がり過ぎだと感じるレベルで、感覚としては後輪を軸に曲がっている印象だ。その時のフロントタイヤはドリフト競技マシンのような切れ角で驚く。これもRRのメリットのひとつだ。

乗り心地は若干ピッチング(前後の動き)を感じるものの、突き上げを含む路面からの入力を車体に伝えることなく、上手に吸収してくれるので非常に快適だ。ハンドリングと快適性のバランスという意味では、3/4代目オデッセイ・アブソルートや6/7代目アコード・ユーロRに似ているように感じた。

ブレーキが超自然! フツーのクルマと同じフィール

フロントシート間にはボタン式のシフトと電子パーキングブレーキ、さらにドラブモードボタンが配置される

ブレーキは回生協調を採用するが、タッチもフィールも通常のブレーキと勘違いするくらい自然である。シングルペダルコントルール(いわゆるワンペダルドライブ)も用意され、パドルシフトを使って回生レベルを3段階で調整可能だが、最大(約0.18G)でも日産のそれより滑らかかつ自然な制動Gだと感じた。

割切り作戦成功? 結果超面白いクルマに

そろそろ結論に行こう。ホンダeは1台ですべてをカバーするオールラウンダーではないので誰でも勧められるモデルではない。

が、いい意味での「割り切り」がクルマとしての魅力を高めたモデルだ。そういう意味では、マーケティングや販売の要望から生まれたモデルではなく、「こんなクルマはどうだ!!」と言う提案型の商品で、久々にホンダらしい一台だと感じた。

恐らく好き嫌いは確実に出ると思うが、欲しい人にとってはズバッと突き刺さる一台だろう。

開発を担当したシニアチーフエンジニアの一瀬氏は「電動化が避けて通れない時代ですが、多くのモデルは『バッテリーに合わせて車体を選ぶ』『バッテリーに合わせてコンセプトを決める』モデルが多いなか、ホンダeは『本当にユーザーに必要なEVは何か?』と言う提案になります。航続距離を200km+αと割り切ることで、従来の延長線上ではない新しい価値を盛り込むことができました」と語る。

つまり、ホンダeは内燃機関モデルからの「置き換え」ではなく「棲み分け」と言う考え方のモデルなのだ。

【筆者:山本 シンヤ】

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