カッコいい特別仕様車は工場発案!? 大変革期に生まれたRAV4の特別仕様車は超本気だった
MōTA / 2020年11月16日 13時30分
2019年にデビューしたRAV4が未だ人気を博している。追加設定されたPHVモデルは即日完売となるなど、とにかくノリに乗っているのはご存知の通り。しかも、ここに来てダメ押しの一手とも言える特別仕様車を追加したのだ。今回は、そのクルマを紹介しつつ、変わりつつあるトヨタをご紹介する。 >>
トヨタSUVがアツい! すべてが売れまくり
2019年晩秋にデビューしたライズも好調。2020年の初夏に登場したハリアーも好調。初秋に発売されたヤリスクロスも好調。それどころか2019年春にデビューしたRAV4も、いまだに好調なのだという。トヨタのSUVは送り出されるモデルすべてが大成功、といった印象だ。車体の大きさも異なり、それぞれ違ったキャラクターを持たされて、より多くのユーザーの好みや望みに応えてきた、というワケだ。
RAV4に至ってはSNS発信のオーナーズクラブが誕生したり、思い思いのカスタマイズが施された愛車で集うミーティングが行われたりと、ユーザー同士の交流も活発で、この手のクルマにしては珍しいと感じるくらいに、“趣味のクルマ”としての側面が大きく膨らんでいる様子。>>
RAV4の世界観をもっと強烈に!
そうしたRAV4ユーザーをざわつかせる特別仕様車が、10月に登場しラインアップの中でもっともタフなイメージの強いグレード”Adventure”(アドベンチャー)に設定された“オフロード・パッケージ”だ。RAV4のイメージをさらに強調するようなエクステリア、他のモデルと異なることが“そこはかとなく”判るインテリア、そして元々それなり以上に高いレベルにある悪路走破性を高める足まわりが与えられたモデルである。
らしさ全開! 専用パーツが超カッコいい
パッと見の瞬間から“あれ?”と違いを感じるのは、フロントバンパー下側のスキッドプレートとリアのスキッドプレートが、他のモデルのシルバーとは異なる専用のグレーメタリックにペイントされていることが大きい。表情がさらに引き締まって、力強さのようなものが感じられるのだ。 ルーフレールがブリッジ型となり、そこには販売店装着のオプションとなるクロスバーを加えることも可能。 インテリアに目を移すと、シートが専用のフェイクレザーを使ったものとなり、そのシートやインパネ、ドアトリムなどのステッチはレッド。センターのオープントレイやフロントのカップホルダーのアクセントカラーもレッドとされている。>>
伊達じゃない! 完成度はホンモノ
最も重要な違いは、ホイールが19インチ→18インチへとインチダウンされたマットブラック仕様のものとなり、普通のタイヤと較べたら段違いに悪路にも強いオールテレインを履いてることだろう。 それだけならドレスアップの範疇かと思われるかも知れないが、最低地上高を10mm上げ、ダンパーの減衰など専用のチューニングを受けたサスペンションまで組み込まれている。最低地上高210mmというのは、他車のライバル達と較べても高いといえる数値。同じトヨタ内では、ランドクルーザーが225mm、ランドクルーザープラドより220mm、ヤリスクロスは170mmmm、ライズは185mmというイメージ。
ベースのアドベンチャーの200mmでさえ結構な高さだということが数字の上でも判ると思うが、さらに10mm高くなったその“たった10mm”が実は相当に大きいということは、悪路を走る人なら実感を持って理解できることだろう。ちなみにここでの+10mmとルーフレールの+35mmで、全高は1735mmとノーマルモデル比で45mm高くなった計算だが、これがRAV4アドベンチャーをさらに堂々とした印象に見せている一員であることも間違いない。
たった10mm、されど10mm。この差が悪路では超役立つ
このオフロード・パッケージに僅かながら試乗することができた。傾斜、モーグル、登下坂といった特設コースのみだったから、このサスペンションとタイヤによる乗り心地がどうだとかコントロール性がどうだとか、そういうところの違いは判らなかった。
特設コースは、都市型SUVでは4WDであっても難しいけど本格派のクロカン4WDなら問題なくクリアできるようなレベルで、通常のRAV4アドベンチャーでもウェットコンディションでなければおそらく行けちゃうから、オフロード・パッケージでは当然ながらほぼ楽勝。
ただし他の人がトライしているところを観察していたら、慣れないドライバーだとフロアを摺ってしまうギリギリといった場面があったりもしたので、+10mmの効果をしっかり確認することはできた。
何よりこのルックスがカッコイイ。それだけでもいいじゃん、と感じたほどだった。にも関わらず、価格は15万円ほど高いだけなのだ。これって結構お買い得なんじゃないか?
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誕生のキッカケは工場!? 柔軟な姿勢でニーズに応える
ちなみにこのオフロード・パッケージは、RAV4を生産している高岡工場からの提案で誕生したモデルだ。高岡工場のスタッフ達が“RAV4にこんなモデルがあったら、さらに楽しいよね”と、北米仕様のパーツを吟味したり組み合わせを考えたり一部は開発などもして、作り上げた仕様なのだ。
普通なら生産作業の手数が増えるから、工場のスタッフとしては効率の面からも気持ちの面からも、あまり積極的になれなくても不思議はない。
ところが逆に、これは工場の方からの働きかけ、だ。そんなところに“RAV4 LOVE”なパッションやクルマ作りに関わる人としてのエネルギーの強さが感じられて、僕は妙に嬉しくなったのだった。
昔じゃ考えられない! トヨタは今大変革期
それに工場側からの提案という、いわば逆流のような企画の流れを柔軟に受け入れる現在のトヨタの姿勢に、軽く感動すらさせられた。例えば15年とか20年とか前のトヨタだったら、おそらくこういうことは実現できてなかっただろうと思うからだ。
畑の違うところからの提案に耳を貸すような柔らかさ、一箇所が尖った特定の層のみが喜ぶようなクルマを世に送り出す意欲。そうしたものは昔のトヨタからは感じられなかった。
もしかしたら実際にはあったのかも知れないが、こういうカタチで表に出てきたりはしなかった。
ひとりひとりのスタッフの方々は面白味があって素敵なのに、会社全体から受けるイメージが官僚主義的というか役所的。そんなお堅い印象を感じていたものだった。良くも悪くも超大企業、といった感じだったのだ。
ユーザーが不満を感じる欠点を潰していこうとするクルマ作りの姿勢が、どことなく面白味に欠ける没個性的なクルマ作りに感じられてしまった時代のトヨタとは、もう全然違う。クルマ作りに携わった人達も御自身がお持ちの個性をあんまり隠さないし、誤解されるかも知れないし無礼であることも承知しながら申し上げるなら『皆さん、よく笑ってる』。ビジネスマナーとしての笑顔じゃなく、本当に楽しそうに嬉しそうに、よく笑う。
だからなのだろう、おおまかに86がデビューした辺りからだろうか、近年のトヨタが送り出すクルマは楽しい。
僕個人はクルマに実用性より楽しさを求めちゃう性格で、そういう雑誌媒体を長年やってきたこともあって、おそらく他の同業の方々よりその辺りを見る目はキツイかも、という自覚がある。それでも“これ楽しいな”と素直に感じられるクルマが多いのだ。
トヨタって変わったな──とあらためて強く強く実感できて、妙に喜ばしい気持ちに包まれながら、僕は試乗会場を後にしたのだった。
【筆者:嶋田 智之】
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