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N-ONEはホンダのアイコン!? 変わらない美学がそこにあった

MōTA / 2020年11月24日 14時30分

ホンダ 新型N-ONE

フルモデルチェンジといえば見た目がガラっと変わり、見ただけで「ああ、新型車だ」なんてユーザーが思うのが世の常。ところがホンダの新型N-ONEに至っては、本当に変わったの!? ってほど同じデザインで登場し、かなり世間をザワつかせている。一体なぜ、姿を変えなかったのか!? そのワケを開発者に直撃。 >>

ホンダ 新型N-ONE

熱狂的ファン多数! 超個性的なデザインがキモ

2011年にデビューした初代N-BOXはNシリーズの第一弾モデルでF1の技術を投入するなどかなり本気の一台であった, 2013年に投入された初代N-ワゴンはワゴンRやムーブといったハイトワゴンにカテゴライズされるモデルだ

2011年にデビューした初代N-BOXはNシリーズの第一弾モデルでF1の技術を投入するなどかなり本気の一台であった, 2013年に投入された初代N-ワゴンはワゴンRやムーブといったハイトワゴンにカテゴライズされるモデルだ

本題に入る前にホンダ N-ONEを少しおさらい。初代N-ONEがデビューしたのは2012年のこと。今やもっとも日本で売れているクルマにまで成長したN-BOXから始まったNシリーズの第三弾としてデビューしたハイトワゴンで、第四弾に当たるN-ワゴンは正統派ハイトワゴンなのに対し、N-ONEは個性派モデルという位置付けであった。

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1967年にデビューしたN360はスバル360などと同時期にデビューし、日本のマイカー黎明期を支えたモデルだ, 歴史的なN360を現代風にアレンジしたのが初代N-ONEだ。サイズは拡大したものの随所にセンパイのエッセンスを注入

1967年にデビューしたN360はスバル360などと同時期にデビューし、日本のマイカー黎明期を支えたモデルだ, 歴史的なN360を現代風にアレンジしたのが初代N-ONEだ。サイズは拡大したものの随所にセンパイのエッセンスを注入

もっと詳しくいうならばマイカー黎明期の1967年に登場したN360(通称Nコロ)を現代風にアレンジした、いわば復刻版のようなイメージだ。ホンダの狙い通り当時を知る5〜60代以上の方々に大ウケしただけでなく、見た目の可愛さから若年層、とくに女性から絶大な支持を集めたモデルである。

台数的にはN-BOXというお化けモデルには叶わないものの、着実にファンを獲得している隠れた名車でもあり、8年の時を経ていよいよ新型に切り替わったというイメージだ。

目指すはMINI! N-ONEはホンダの象徴になる

初代N-ONE, 新型N-ONE

初代N-ONE, 新型N-ONE

新旧を見比べても、正直大きな差はない。先にも述べた通り、通常クルマが世代交代する際はキープコンセプトといっても少なからず時代に即した、あるいはニーズの変化に応えるべく手を入れるのが世の常だ。にも関わらず、エクステリアに大きな変更をしなかったのは「N-ONEはホンダのアイコンと考えているから」と新型N-ONEの商品開発責任者を務めた宮本 渉氏は語る。

ホンダとしての見解はN-ONEをN-BOXのような稼ぎ頭として考えるのではなく、“ホンダ=N-ONE”となるようなモデルに育てていきたいと考えているのだ。

例えるならMINIやフィアットのチクエチェントのようにブランドの顔として捉えていると表現すればわかりやすいだろうか。

新型N-ONEの目玉は念願のMTモデルが追加されたことだ。じつは初代モデルに搭載することはスペース的に難しく、新プラットフォームの採用により実現。これにはN-VANを開発する際に、“商用車ならばMTニーズが必ずある”との判断から生まれたもので、N-ONEはそれを流用したイメージだ

それならばわざわざ大金をかけてフルモデルチェンジをせずに、N-ONEのまんま売り続ければいいのでは? という意見もあるはずだが、ホンダの答えは違った。先進安全装備ホンダセンシングや念願のMTモデルの追加を果たすためには、どうしたって新世代プラットフォームを採用するしか術はなく、新型へと切り替えたのだ。ここまでが姿を変えずにモデルチェンジをした理由である。

N-ONEの将来を決めたのは無茶ブリがキッカケ!?

寸分違わずまったく同じボディパネル、さらにはガラスを使用したモデルチェンジは初めてといってもいいほど珍しいこと。しかもちゃんとした狙いがあるのがホンダらしいところだ

新型N-ONEのボディ外板と各種ガラスは全て初代N-ONEと同じものを使用しており、これこそが今回のキモである。

だが、これら事実から考えるに「単なるコストカットじゃないか!」と考える人も多いだろうが、それは大きな間違い。もちろんコスト削減という側面はあるものの、「N-ONEをアイコンに」という考えは昨年2019年にデビューした2代目N-ワゴンの開発スタート時まで遡る。

新型N-ONEとN-ワゴンは同じプラットフォームを採用。N-BOXともほぼ同じモノなのだが、あちらはスライドドア&スーパーハイトワゴンと形が異なるために微妙に違うモノなのだ

2017年にデビューした現行N-BOXから始まった第二世代のNシリーズは、先進安全装備ホンダセンシングなどの次世代技術や走行性能向上のためにプラットフォームを一新しているのはご存知の通り。N-ワゴン&新型N-ONEもその流れを汲んだモノを採用しているのだが、この開発当時のエピソードが非常に興味深いのだ。

前述の宮本氏は「可能ならば初代N-ONEと同サイズのボディパネルを使えるように開発してほしい」とプラットフォーム開発チームに打診したのだそう。

エンジンやタイヤなどの必要最低限必要なパーツのほかに、今は衝突被害軽減ブレーキなどの先進装備も加わる。しかも軽自動車とあらば、限られた寸法でレイアウトする必要があるため、その要求は無茶ブリに等しいモノなのだが、開発チームは見事やってのけたのだ。

テールランプのデザインやリフレクターの位置を変更するなど、よく見るとかなり変わっているのだ

クルマ好きの方ならピンとくるだろうが、通常プラットフォームが変わってしまえば、同じボディパネルを使うなんてことは不可能に近く、これまでの自動車史を考えても前例はほぼなし。

通常、刻々と変化する衝突安全などの法規をクリアすべく、ボディサイズが大きくなってしまうこともしばしば。同じサイズで、しかもまったく同じボディ外板やガラスを使うなんてのは不可能に等しいのだ。

簡単にまとめると、現行N-ワゴンの開発をスタートした2014〜15年頃には、すでに次のN-ONEは同じボディ外板を使い、“イメージをそのままに新世代に進化させたい”という考えがこの頃からあったというワケだ。

ホンダ 新型N-ONE

伝統を作れ! N-ONEで日本車が変わる

確かに新型N-ONEは失礼を承知で言うと、代わり映えしないクルマだ。だが、それはただの手抜きではなく「N-ONEはホンダのアイコン」という言葉の通り、姿を変えないのがキモであり、それこそがN-ONEなのだ。

スライドドアなど確かに便利だが、N-ONEのような個性派にも注目だ!

これまでほとんどの日本車は代替わりする度にイメージチェンジを図ることもしばしばで、MINIのようなパッと見て伝統を感じるようなモデルはほぼない。それだけに新型N-ONEは見た目だけでいえばインパクトは確かに少ないが、大げさに言えば日本のクルマ史を変えうるほどの転機となる、歴史的な挑戦でもあるのだ。N-BOXのようなお化けクルマもいいが、N-ONEのような我が道を行く個性的な日本車が増えることを期待したい。

【筆者:MOTA編集部 木村 剛大】

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