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高速道を守る黄色い変身ロボ!? 現場の命を守る「ハイウェイ・トランスフォーマー」とは

MōTA / 2020年12月3日 7時50分

大型移動式防護車両 ハイウェイ・トランスフォーマー 中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋が開発

2020年度のグッドデザイン賞にて金賞を取ったクルマがある。それが「大型移動式防護車両 ハイウェイ・トランスフォーマー」だ。クルマがロボットに変形するトランスフォーマーシリーズを彷彿とさせるネーミングだが、変形して人命を守るという点ではまさに同じ。世界でも類を見ないという、高速道路で活躍するこの製品、一体どんなものなのかご紹介しよう。

大型移動式防護車両 ハイウェイ・トランスフォーマー 中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋が開発

「ハイウェイ・トランスフォーマー」がグッドデザイン金賞受賞

グッドデザイン金賞を受賞した「ハイウェイ・トランスフォーマー」

中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋が開発した大型移動式防護車両「ハイウェイ・トランスフォーマー」が2020年度グッドデザイン金賞を受賞した。ぱっと見、高速道路でよく見かける黄色い作業車のようだが、この車両自体が何かの処理や運搬を行うわけではない。では何をするクルマなのかというと、高速道路上で働く作業員の人命を守るための「壁」となるのだ。

受賞の背景に、ながらスマホの恐怖

▲安全なスペース内で作業が出来るようになった

ハイウェイ・トランスフォーマーが開発されるきっかけとなったのは、とある痛ましい事故だ。

高速道路での作業現場に「ながらスマホ」の大型トラックが突っ込み、作業員1名が死亡、4名が重軽傷を負うという死傷事故があった。この時、作業エリアと走行エリアを隔てていたのはおなじみの樹脂製コーンであり、標識で注意喚起していたものの、大型トラックを止めることはできなかった。

作業員を守る! 国内で独自開発

このことをきっかけに、作業員を直接守るための製品や対策が模索された。しかし日本国内には該当するものがなく、海外まで視野を広げたところ、見つかったのはアメリカのトレーラー式の防護車両。さっそく輸入を検討したが、サイズが日本での保安基準に適合せず、断念せざるを得なかった。

そしてついに国内で独自に開発することとなり、中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋とトレーラーメーカーの東邦車輌が2018年末から共同開発を開始し、2020年4月から現場での運用が始まったのである。

移動する保護壁が、前後左右にトランスフォーム!

それでは、移動可能な「保護壁」であるハイウェイ・トランスフォーマーの変形をご紹介しよう。車両の大まかな構成は、前方の運転席部分と、「保護ビーム」と呼ばれる中央の壁部分、そして後方の衝撃緩衝装置だ。作業時には保護ビームを伸ばすことで最大全長23.4mとなるが、走行時の全長は15.9mで、トレーラー車として日本の保安基準内に収まる設計となっている。

▲作業前(全長15.9m)保護ビームも後方の緩衝装置もコンパクトに収納, ▲作業中(全長23.4m)保護ビームは右側にあり、緩衝装置も展開

▲作業前(全長15.9m)保護ビームも後方の緩衝装置もコンパクトに収納, ▲作業中(全長23.4m)保護ビームは右側にあり、緩衝装置も展開

また保護ビームは壁の全長を伸縮させられるだけでなく、左右にも移動できる。例えば高速道路の走行車線(左車線)での作業中は、ビームを右側に設置して約10m×2mの安全な作業スペースを確保。一方、追越車線上で中央分離帯などを補修する際などは、ビームを左側に寄せ、車両の向かって右側のスペースを空ける。

追突車両の安全も守る! 大型緩衝装置を日本初導入

作業中という表示の手前の、銀色の輪の部分が緩衝装置だ

車両後方に装備されたアメリカ製の大型緩衝装置は、高い衝撃吸収能力を持ち、衝突してくる誤進入車両の乗員を守るものとなっている。こちらも折り畳み式で、走行時は上部空間を上手に使ってコンパクトに収納できる点も工夫が凝らされている。

全長サイズを抑えながら、作業員のみならず追突車両の保護も配慮している点、そしてクルマ自体がクルマと人を守るという発想が、今回の受賞理由の一つともなっている。

中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋ってどんな会社?

今回、グッドデザイン金賞を受賞した中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋は、NEXCO中日本のグループ会社。主に高速道路の補修や保全などを行うほか、高速道路整備の安全を守るためのユニークなオリジナル商品も扱っている。せっかくなのでここで一部をご紹介しよう。

ネーミングセンスが光る!「しらすんだー」に「とまるぞー」!?

商品売れ筋ランキング第3位は、緊急避難信号送受信装置システム「しらすんだー」。これは交通監視員が危険を察知した時、持っている手旗のボタンを押すことで別の場所の作業員のヘルメットに光と大音量で知らせるセットだ。

▲3位「しらすんだー」のヘルメット警報装置, ▲2位「とまるくん(普通車用)」, ▲1位「とまるぞーII(大型車両用)」

▲3位「しらすんだー」のヘルメット警報装置, ▲2位「とまるくん(普通車用)」, ▲1位「とまるぞーII(大型車両用)」

▲3位「しらすんだー」のヘルメット警報装置, ▲2位「とまるくん(普通車用)」, ▲1位「とまるぞーII(大型車両用)」

第2位は、進入車両停止装置「とまるくん(普通車用)」。そして第1位は従来版からパワーアップした同装置「とまるぞーII(大型車両用)」。どちらも通行規制を示す標識の役割をするとともに、突っ込んできた車に引っかかって停止を補助するものだ。「とまるぞーII」は一人で持ち上げられないほどのサイズだが、分解できたり車輪で転がせたりと、作業員の設置の苦労までしっかり考えられている。

日々の高速道路整備には普段知ることのなかった思わぬ工夫と、無事故への願いが詰まっているのである。年末年始、高速道路を使う機会も増えるが、利用者みんなで交通安全を心がけたい。

2020年度グッドデザイン・ベスト100 デザイナーズ・プレゼンテーション

【動画:GOOD DESIGN AWARD(公益財団法人日本デザイン振興会)】

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