ガソリンとEVふたつの顔を持つプジョー 2008! 値段以上にガソリンとEVはいったい何が違うの!?
MōTA / 2020年12月8日 11時30分
世界各国のメーカーがこぞって推し進めている電動化。国産メーカーも奮闘しているが、このところフランス勢が日本に数多くのモデルを輩出している。しかもプジョーは売れ線であるコンパクトSUVの2008にEVを投入。価格的にも現実的なため、売れそうな予感満点なのだが、ガソリンモデルとの何が違うのか!? 実際に乗って検証してみた。 >>
PSAの電動化が止まらない! 日本市場には2008がベストサイズ
すでに日本市場に導入されているDS DS3クロスバックE-TENSEやプジョー e-208のほかにも、フランス本国ではシトロエン e-C4-100% electricやプジョー 3008ハイブリッド、508プジョー・スポール・エンジニアードなども登場し、このところラインアップの電動化が急激に進んでいるグループPSA。
なかでも最も市場からの注目度が高いと見られているのは、近年日本のみならず世界的に人気を博しているコンパクトSUVである、新型プジョー2008とそのEV仕様であるe-2008だろう。今回は、日本上陸を果たしたばかりの新型2008とe-2008のGT Lineを同時に借り出して、ガソリン車とEVでどのような違いがあるのか、直接比較してみた。
プラットフォームの自由度が見事! 内燃機関にEVまでこなす
新型2008は、新型208やDS3クロスバック、また2021年後半に日本に再上陸する予定のオペルのBセグメント・ハッチバックである6代目コルサなどと、CMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)と呼ばれる、PSAのコンパクトカー用プラットフォームを採用したコンパクトSUVである。CMPプラットフォームは、ガソリン/ディーゼル・エンジンの他にバッテリーEVにも対応した新世代プラットフォームで、駆動方式は前輪駆動のみ。ホイールベースは自由度が高く、新型208は2540mmだが、新型シトロエンC4は2670mmもある。
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2代目となる新型2008は、全長4305mm×全幅1770mm×全高1550mmで、先代と比較すると、全長が150mm、全幅は30mm拡大しているが、日本の道路環境で扱いやすいサイズに収まっている。ホイールベースは2610mmと、ひとまわり上のクラスに迫る長さだ。EVの航続距離はガソリンの約半分! 実用ベースならガソリンか?
搭載されるパワートレインは、本国には1.5リッター直4ディーゼルターボや6速MTもあるが、日本仕様は最高出力130PS/5500rpm、最大トルク230Nm/1750rpmの1.2リッター3気筒直噴ガソリンターボ「PureTech」エンジンに8速ATの組み合わせのみとなっている。駆動方式はFFだ。JC08モード燃費は19.2km/Lで、燃料タンク容量は44Lなので、満タン状態から800km以上は走れる計算だ。ちなみに今年導入された新型208には、ステーションワゴンの208SWが用意されない見通しである。通常時で434L、60:40で分割可倒するリアシートを倒せば最大で1467Lもの荷室を実現する新しい2008は、実質的に208SWの需要も受け持つモデルとして開発された。
対してe-2008は、この新型2008に50kWhのリチウムイオンバッテリーと最高出力136PS/5500rpm、最大トルク260Nm/300~3674rpmの交流同期電気モーターを搭載したピュアEVである。プラットフォームの呼称は「eCMP」となる。駆動方式はこちらも前輪駆動だ。バッテリーはフロントシート下とセンタートンネル、そしてリアシート下に「H型」に搭載。車両重量は1600kg(パノラミックサンルーフ装着車は1630)と、ガソリン車より330kg重い。JC08モードにおける電力消費率は140Wh/km。航続距離は385kmとなっている。
ガソリンは軽快な走りが魅力
実際に運転してみると、2008はとても軽快な印象だ。高張力鋼板や超ハイテン鋼、アルミニウム、複合素材などを用いて軽量化を図ったCMPの採用により、車両重量が1270kgと軽く、また3気筒エンジンを積むことから、クルマの動きがとても軽やかなのである。試乗車のGT Lineは、215/60R17サイズのミシュラン・プライマシー4を装着していたが、乗り心地はゴツゴツした印象はなく、しっかり履きこなしている印象だ。
3気筒エンジンも振動やノイズを上手く抑えていて静粛性はまずまず。吹け上がりは軽く、サウンドも安っぽさは無い。
パワーの出方もとてもリニアで8速ATの変速制御も滑らか。快適性はこのクラスのSUVとしては十分に高い部類に入ると言って良いだろう。
後席は兄貴分と同等の広さ! ラゲッジの使い勝手も文句なし
またホイールベースが長い事もあって、キャビンスペースも広々としている。とくに後席スペースは、大柄な男性でも十分に余裕があり、座面やシートバックはやや短いが、ひとクラス上の3008に迫る広さを実現している。 リアシートを倒したときのラゲッジフロアもフラットで、テールゲートの開口部形状も良いので、使い勝手はかなり良さそうである。>>
対してEVは重厚&パワフル。乗り心地も高級車並み
一方、EV仕様であるe-2008の乗り味はかなり異なる。基本的にはガソリン車の延長線上にあるのだが、車両の低い位置に重量のあるバッテリーを搭載しているため、明らかに低重心なクルマを運転している感覚なのである。 また車両重量が格段に重いにもかかわらず、EVだけに加速はとてもパワフル。発進直後から260Nmの最大トルクを発揮する電気モーターのおかげで、絶対的な動力性能は、6PSと30Nmというガソリン車との性能差以上に大きい。アクセルペダルを深く踏み込めば、そのアグレッシブなデザインに負けない猛烈な加速が味わえる。
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静粛性と快適性がイイ! ワンペダルドライブもできるゾ
特筆すべきは快適性の高さだ。EVなので静粛性が抜群に高いのはもちろんだが、215/55R18と銘柄は同一ながらガソリン車のGT Lineより1インチ大きく、より低扁平なタイヤを装着しているにもかかわらず、乗り心地はよりフラットで、ロールやピッチングも少ない。
重量増に対応するためにスプリングやショックアブソーバーは、より固められているはずだが、プジョーならではの「猫足」感は、明らかにe-2008の方が上だ。
ハンドリングの正確性もe-2008の方が優れている。確かにクルマ自体は重たいのだが、低重心である事に加えて前後重量配分も良いため、コーナリング時の姿勢がとても自然で、ステアリングの修正が明らかに少なく、狙った走行ラインにクルマがピタッと決まる。直進性も非常に優れているので、疲労も少ない。Bモードを使用すれば、完全停止はしないが、市街地ならほぼワンペダルでドライブできるのもいい。
後席はガソリンよりもわずかに狭い程度
フロントシート下にバッテリーがあるため、後席乗員の足元スペースがやや狭いというウィークポイントはあるが、気になるのはそれくらい。ラゲッジ容量もガソリン車と変わらない。現時点でこのクラスのSUVとしては世界トップレベルの走りと快適性、実用性を備えていると言えるだろう。この部分だけでも買う価値は十分にある。
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航続距離は実用レベルでは問題なし
問題は航続距離だが、今回、丸3日間使用してみた感じでは、フル充電状態からの実際の航続距離は300km程度である。また高速道路を比較的ハイペースで走ったり、エアコンに負荷がかかるような状態だと、航続距離はさらに短くなる。
だが自宅に200V電源がある人なら、帰宅時に充電を開始すれば一晩でフル充電状態になるし、最近は公共の駐車場に20kWや50kWの急速充電器が設置されている所も増えている。ちなみにe-2008は6kWまでの普通充電と、50kWまでのCHAdeMO 1.0規格による充電に対応しており、50kWの急速充電器を使用すれば、50分で80%の充電が可能。買い物や食事をしている間に充電すれば、実用上ほぼ問題無い。
差額130万円の価値あり! フツーに使えるEVだった
とはいえ、ガソリン車と使い勝手の点で差がないというワケではない。やはり充電インフラは、とくに都市部を離れるとまだ十分とは言えず、高速道路のSAなどでは「充電待ち」も発生する。e-2008は、実際にはフル充電状態で片道120km、往復250km程度の移動であれば、「電欠」を気にせずに外出できる、といった感覚である。車両価格は2008 GT Lineが338万円、e-2008 GT Lineは468万円と130万円の差があるが、そこはあまり心配する必要はないだろう。
PSAは車両価格だけでなく、補助金や税金、ランニングコストなどを含めた所有・運用全体のコストを、ICE(内燃機関)車とEVで同等とする「TCO(トータル・コスト・オブ・オーナーシップ)」というコンセプトを打ち出している。あまり走らず、短期間で乗り換えるような人はEVの方が高く付くかもしれないが、平均的なユーザーであれば、e-2008を選んでも、財布に厳しいということはないはずである。
【筆者:竹花 寿実/撮影:小林 岳夫】
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