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マイナーチェンジなのに変わりすぎ! 三菱 エクリプスクロスがイメージチェンジに成功したワケとは!?

MōTA / 2021年1月8日 11時30分

三菱 新型エクリプスクロスPHEV

新生三菱の第一弾として2020年12月4日にデビューした新型エクリプスクロスは、マイナーチェンジにもかかわらずPHEVモデルの追加、さらにデザインの大幅変更などフルモデルチェンジ並みの改良を施している。チマタでは「かなりカッコよくなった」と評価が高く、販売面においても若年層が増加しているなど、今大注目のモデルなのだ。でもなぜマイナーチェンジという限られた範囲で、ここまでイメージチェンジを果たせたのか? 三菱のデザインチームに直撃してみた。

三菱 新型エクリプスクロスPHEV

全長14センチ拡大で大人な雰囲気に

そもそも三菱 新型エクリプスクロスはミドルサイズSUVで、三菱の主力車種に位置付けられるモデルである。

2018年にデビューし、2020年12月に比較的規模の大きなマイナーチェンジを受けた。この際に2019年に追加したクリーンディーゼルターボを廃止し、PHEV(充電可能なハイブリッドシステム)モデルを新たに追加。ボディサイズと外観のデザインに大きな変更を施したのだ。

従来型エクリプスクロス, 新型エクリプスクロス

従来型エクリプスクロス, 新型エクリプスクロス

ボディサイズは全長を140mm伸ばして4545mmとしている。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2670mmで変わらないため、ボディは前輪よりも前側で35mm、後輪よりも後ろ側で105mm、それぞれオーバーハングを拡大。前後オーバーハングを伸ばした大きな理由は、PHEVを設定したからだ。

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PHEVのユニット自体はアウトランダーPHEVと基本は同じだが、元々エクリプスクロスはスポーティな乗り味が自慢。そのためPHEVでもスポーティに振った味付けとなっている

PHEVは直列4気筒2.4Lエンジンを搭載して、前後にはモーターと制御機能を配置しており、12Vの補機バッテリーを後部に収めている。これらのシステムのために、エクリプスクロスPHEVは、ボディの前後を拡大する必要があったのだ。

そしてボディの拡大に伴い、改良後のエクリプスクロスは「ダーリング・グレイス/大胆にして優雅」というデザインコンセプトを新たに採用。オーバーハングの短い従来型は、外観が軽快に感じられたが、長く伸ばされることにより落ち着いた雰囲気となった。そこでデザインコンセプトにも優雅さを加え、サイズの拡大に応じた変更を施している。デザイナーは「大人の余裕といったイメージ」と説明している。

それに伴いボンネットの角度も変更。先代型は前方に向けた傾斜角度が大きめだったが、マイナーチェンジ後は水平に近付けている。その結果フロントマスクの厚みが増した印象だ。

ライト配置を逆に!? 最新のダイナミックシールド採用でイメージ様変わり

従来型エクリプスクロス, 新型エクリプスクロス

従来型エクリプスクロス, 新型エクリプスクロス

フロントマスクはダイナミックシールドと呼ばれる今の三菱車に共通するデザインだが、ヘッドランプの配置は大幅に変更している。従来型はヘッドランプを高い位置に水平配置する一般的な形状で、ダイナミックシールドの特徴とされるバンパー部分の両側には、ターンランプとフォグランプを組み込んでいた。

ヘッドライトといえば一般にフロントフェイス上部に設置されるが、エクリプスクロスは上部にウィンカーとポジションランプを。下部にロー/ハイビーム、さらにはフォグランプを配置

だが新型エクリプスクロスは、ヘッドランプとフォグランプがバンパー部分に移され、もともとヘッドライトが設置されていた高い位置にはターンランプ/ポジションランプ/デイタイムランニングランプが並ぶ。この改良後のレイアウトは、設計の新しいほかの三菱車(eKクロス/eKクロススペース)にも準じているモノだ。

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従来型のフロントバンパーは直線的なデザインであった, 対して新型はボディ同色とブラックを合わせることでSUVらしい力強さを表現している

従来型のフロントバンパーは直線的なデザインであった, 対して新型はボディ同色とブラックを合わせることでSUVらしい力強さを表現している

バンパーの下側に装着されたスキッドプレートも変更され、フロントマスクの厚みが増して、ランプ類の配置も見直したことにより、SUVらしく存在感の強い顔立ちとなった。オーバーハングの拡大と相まって、ダーリング・グレイスの雰囲気も際立せているのだ。

ちなみに外観を水平基調に近付けたことで運転席からボンネットの表面が見やすくなり、ボディの先端や車幅がわかりやすくなっているのもポイントだ。

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デザイン大胆変更の理由はPHEVの価格設定にあった

従来モデルはスキッドプレートはブラックで統一しており、どのグレードでもオフロード色の強いイメージであった, ところが新型は上級グレードのみスキッドプレートをボディ同色とするなど、他のグレードと差別化を測っている

従来モデルはスキッドプレートはブラックで統一しており、どのグレードでもオフロード色の強いイメージであった, ところが新型は上級グレードのみスキッドプレートをボディ同色とするなど、他のグレードと差別化を測っている

ここまでデザイン変更した背景には、PHEVの価格設定も要因のひとつだ。PHEVは高価格帯であり、売れ筋グレードとなるGやPは400万円をゆうに超える。そこで従来型に比べてデザインの質を高める必要が生じたのだ。外観の装飾も、最上級のPはスキッドプレートの配色をボディ同色とするなど、ほかのグレードと差別化を図っている。

その一方でもともとエクリプスクロスは、リヤゲートを寝かせるなど、外観をクーペ風に仕上げており、この特徴はマイナーチェンジ後も踏襲している。

賛否両論あったダブルウィンドウをやめたワケとは!?

従来モデルのリヤスタイルの特徴はダブルウィンドウであった。運転席からの視認性もデザインの割によかったのだが、個性的故に賛否両論あったのだ

だがボディ後部のリヤゲートは大幅に変更されている。従来型はリヤウィンドウを上下に二分割していたいわゆるダブルウィンドウを採用していたが、マイナーチェンジ後は一般的な1枚に変更。

従来モデルは後方視界の上下方向が広く確保されて外観もかなり個性的であり、ボディを横方向から見ると、リヤゲートが短く、後端部分を垂直にカットしたような軽快感もあったのだ。

新型エクリプスクロスは一般的なシングルガラスに変更。それに加えてリヤまわりのパーツを一新したために、塊感のあるデザインとなった

マイナーチェンジ後にこの形状を廃止した理由は2つある。まずリヤオーバーハングを105mm伸ばしたことだ。天井部分とリヤピラー(柱)は設計上変えられず、リヤゲートの変更のみで、リヤオーバーハングの拡大に対応している。そうなるとリヤウィンドウが従来よりも後方へ長く伸びるから、垂直にカットするリヤゲート形状は採用しにくい。仮にリヤウィンドウを二分割しても、下側の上下幅が薄くなってしまい、意味をなさないため、一般的な形状にしたのだ。

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左右にL字型のテールランプを新たに採用。夜間の視認性はもとより、この形状にすることで存在感をアピール

2つ目の理由は、ダーリング・グレイスと掲げられたデザインコンセプトだ。縦長のテールランプと二分割リヤウィンドウを備える従来型よりも、横長のテールランプに通常のリヤゲートを組み合わせた改良後の方が、優雅で落ち着いた雰囲気になる。つまりボディサイズの制約とデザインコンセプトの両面から、リヤゲートの形状を変更したというわけだ。

最小の投資で最大の効果を得たデザインの凄ワザとは

チーフデザイナーを努めた中神 秀泰氏は「今回のエクリプスクロスのマイナーチェンジは凄く苦労した」という。全長を140mm伸ばしながら、天井、ピラー、ドア、フェンダーなどの基本部分は変えられず、ボンネット/リヤゲート/前後バンパーの変更だけで対応しているからだ。

ほかのモデルにはないクーペルックの個性的なスタイリングのエクリプスクロス。「世界観を崩すことなく、改良をするのにはかなり苦労した」と中神氏

しかもエクリプスクロスは、サイドウィンドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げる個性的なウェッジシェイプが特徴だ。ボンネットやフロントマスク、切り詰められたボディの後部、二分割ウィンドウを備えるリヤゲートまで、すべてウェッジシェイプのサイドビューを中心に構成されている。その結果、独特の躍動感、軽快感、カッコ良さが表現されていたのだ。

にもかかわらずマイナーチェンジでは、基本部分は変えずにボンネットを水平に近づけ、リヤゲートを後方に伸ばして、全長も140mm拡大。これでは車両全体のプロポーションが崩れてしまい、クルマ全体としてバランス良く見せるため「凄く苦労した」わけだ。

エクリプスクロスのマイナーチェンジには、PHEVの搭載という技術的な側面まで含めて、数々の苦労が伴った。その代わり開発費用を抑えながら、フルモデルチェンジのような進化を達成している。今回のエクリプスクロスの開発は、有るべきマイナーチェンジの本質を突いたものといえるだろう。

【筆者:渡辺 陽一郎】

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