MX-30 EVモデルはまるでガソリン車! EV特有の直線的な加速が注目されるクルマづくりに一石投じるマツダの目論見とは?
MōTA / 2021年2月16日 11時30分
世界的にクルマの電動化が急務となった今、マツダも史上初の電気自動車MX-30 EVモデルを発売。既存の電気自動車はモーター加速を全面に押し出したパワフルさが注目されているが、マツダはあえてその逆! 内燃機関モデルに近い仕上がりとなっているという。果たしてマツダ初の電気自動車の出来栄えはいかに!? 電気になっても“マツダらしさ”は残っているのだろうか。
EVを主眼に開発! そのため室内は広々
まずはこのクルマの成り立ちから説明すれば、先に欧州でEVモデルのみが発売されている。つまり、MX-30そのものが、EV前提に開発された観音開きドアを備えるクロスオーバーモデルであり、日本市場では買いやすいマイルドハイブリッドモデルを用意し、先行発売されたということになる。
その意味は大きい。ピュアEVありきのクルマだけに、バッテリーを積んでも、室内、ラゲッジスペースが途端に狭くなるといったネガはないのである。
実際、室内空間、ラゲッジスペースともに、内燃機関車のマイルドハイブリッドモデルと変わらないスペースが確保されているのだ。
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あえて小さなバッテリーを搭載! 普段使いに特化
マツダが掲げる2050年カーボンニュートラル実現に向けて、バッテリーの生産から始まるライフサイクルにおけるCO2の排出量をより少なくするために決められたバッテリー容量、総電力量は35,5kWhと控えめで(シティコミューターEVのホンダeと同じ)、一充電航続距離はWLTC総合モードで256kmとなる(ホンダeは同259~283km)。
そう、ロングレンジを狙わず、日常的な使い勝手に適するバッテリー容量、一充電航続距離に的を絞ったのである。
マツダらしさ満載! 既存車と同じ運転感覚は嬉しい
マツダらしいのは、モーターペダルと呼ぶアクセルペダルの踏み方に呼応するEVサウンドだ。EVはエンジンサウンドがないが、しかしマツダは車速感を実感、コントロールしやすいように、あえて(モーター)サウンドを造り込み(聞かせ)、人馬一体、クルマとの一体感を高めているという。
右パドルに注目! スピード調整が超しやすい
また、パドルシフトの考え方もほかとは異なる。左パドルはガソリン車の減速方向に準じた、回生減速度を強め、車速の上昇を抑え、カーブの手前、下り坂などでの一定速度の走行をしやすくしてくれる効果がある。山道での、ガソリン車で言えばシフトダウン効果、走りやすさに直結する。
一方、注目してほしい右パドルは、回生減速度を低下させ、速度を維持しやすく、一定速度での巡航のしやすさをサポートしてくれる効果を狙っている(注目すべき理由は後述)。
重たいバッテリー搭載するも前後バランスはピカイチ
ここで前後重量配分が気になるマニアもいるはずだが、エンジンがなかろうと、モーター、インバーターはけっこうな重量物であり、加えて約300kgとなるバッテリーが車体中央床下に積まれているため、前後重量配分は56:44に収まっている。
充電コードの収納場所は要改善
EVらしくないのがイイ! 違和感のない加速が最大のポイント
EVモデルならではなのは、クラシックな3連メーターの表示、インパネ中央に平べったく配置されるナビ、というか相変わらず小さすぎるディスプレー内のEV専用の情報ぐらいなものである。
MX-30 マイルドハイブリッドモデルに対してエクストラコストを払うユーザーにしてみれば、エクステリアを含め、もう少し特別感を演出してくれてもいいのでは?なんて思えたりするかもだ。
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過剰な演出0! EVらしくない自然な運転感覚がイイ
その理由はまずペダルフィール、というかペダル操作に対するモーターの反応がスイッチ的ではなく、EVっぽくない。つまり、内燃機関を積んだクルマのように自然なのである(厳密には異なるが)。
豊潤なトルク、タメのある(CX-5はMCで新ペダルを採用し、タメは減少したが)ペダルフィール、そしてなによりもガソリン車とは別格の上質なドライブフィールを楽しませてくれたからである。
例のサウンド効果もあって、MX-30マイルドハイブリッドモデルから乗り換えた直後さえ、違和感がない自然さが好ましく感じられたのである。
ただ、モーター音の演出が不要と感じる時もあるはずなので、できればON/OFFスイッチが欲しいところではある。
乗り心地は世界レベル! マツダの技が光る仕上がり
MX-30 EVモデルの感動ポイントはまだまだある。それが乗り心地。
そもそも先に強豪ひしめく欧州で勝負しているだけに、マツダ車最上級どころか、このクラスとして世界的にも一流の乗り心地を示してくれたのだ。
同時に試乗したMX-30マイルドハイブリッドモデルと比較すれば、その差は歴然。幹線道路の荒れた路面、高速道路の継ぎ目などを乗り越えたときのいなし方、収束性、それがもたらすフラットライド、快適感はもう素晴らしいの一言の先にある。
超好印象の走行性能と乗り心地を実現できたワケとは?
操縦安定性やダイナミクス性能の向上はもちろん、乗り心地にも大きく寄与しているのだそうだ。付け加えれば、開発陣がテストしているであろう、e-GVC PlusのON/OFF(市販車ではできない)で、その効果(差)が明確に実証されていると踏んでいい。
※GVC:ハンドル操作をした際に発生する車両の前後左右の動きを滑らかにさせる統合制御システム
新提案のパドル制御で異次元の加速を味わえる
HV、PHV(PHEV)を含む内燃機関車のパドルシフト操作の感覚とはまったく違うその心地良さ、気持ち良さから、何度も右パドルを操作(確認)してしまったほどである。
唯一の欠点は航続距離! もう少し伸ばして……
ただ、ファーストカーになりうるMX-30の車格、サイズゆえWLTCモードの一充電航続距離256km、試乗車の急速充電による約80%のフル充電状態で現実的に178kmと示されたスタート時の航続距離は、物足りないと言わざるを得ない。
いずれにしても、MX-30 EVモデルは、マツダのこだわりが詰まった、これまでの「デンキで静かにスムーズに走ってます」というEVとはちょっと違う、マツダ車らしい走りの奥行ある楽しさを、ごく自然に味わせてくれるピュアEVだと結論付けられる。
航続距離に制限され、街乗り、ショートドライブだけを繰り返すような使い方では、どうにももったいない!!と心底、思えたのも本当である。
アクセルがハンドルの中に!? 新提案の福祉車両は超画期的な仕上がりだった
カーブや交差点などでアクセル操作とステアリング操作を同時に行う場合は送りハンドルのような操作が必要となるが、EVの特性を生かし、走り始めてすぐに慣れる、自然な走行、そしてブレーキングが可能だった。
観音開きドアで乗り降りしやすいが、改善ポイントも
もっとも、リヤドアの自動開閉は、キーリモコンで行えると一層、便利かつ操作しやすいとも思った次第。また、アクセル、ブレーキを、始動の仕方によって、普通の操作、運転方法にチェンジすることも可能だから、ドライバー交代もしやすく、気が利いている仕上がりなのだ。
【筆者:青山 尚暉】
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