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がんばれタント! 元祖スーパーハイトワゴンのダイハツ タントはなぜ首位になれないのか!?

MōTA / 2021年2月20日 11時0分

ダイハツ 新型タント(プロトモデル)

国内新車販売台数のうち、軽自動車の占める割合は4割弱を占めるまでに成長した。そんな重要な軽自動車市場の中で、昨今人気を集めているのは「ホンダ N-BOX」に代表されるスーパーハイトワゴンだ。実はこのジャンルを最初に創造したのは、ダイハツの「タント」である。 しかし今、タントはライバルの出現により苦境に立たされている。今回は改めて、超偉大なタントの功績を振り返ってみよう。

ダイハツ 新型タント(プロトモデル)

軽=狭いは終わり! タントは広さはウリの軽だった

初代モデルはスライドドアではなく、全てヒンジドアを採用

ダイハツ 初代タントがデビューしたのは2003年のこと。当時はスズキ ワゴンRやダイハツ ムーヴといったハイトワゴンが市場を席巻していたが、さらに背が高く、より広いスペースを! というコンセプトのもと生まれたのがタントである。

今でこそスーパーハイトワゴンはフツーに見かけるまでになったが、2003年当時はかなり奇抜なクルマとして捉えられていた。ところが、今までにない広い車内や使い勝手バツグンのラゲッジルームなどから、瞬く間にスター街道を進んでいったのだ。

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初代はスライドドアではなかった! 初の両側スライドドアはスズキだった

軽初の両側スライドドアは後発のスズキ パレットだった

現在はスーパーハイトワゴンにスライドドアは付き物であるが、初代タントは4枚全てがヒンジドアを採用していたのも見逃せない。スライドドアの代わりと言っては何だが、ほぼ90度に開くドアを採用することで使い勝手を向上させていたのだ。パワーウィンドウスイッチはドアパネルではなく、インパネに設置されるなど、見た目だけでなく車内も一風変わった設計となっていた。

初代モデルのヒットを受けて2007年に2代目タントがデビュー。このモデルからスライドドアを採用したのだが両側ではなく左側のみで、右側リアドアはヒンジタイプであった。

N-BOX登場でタントの販売台数が大きく変化

もちろんタント人気を尻目にライバル社が黙っているわけもなく、遅れること5年後の2008年には宿敵スズキからパレットがデビューするも、タントの牙城を崩せずに終わってしまった。その後2013年にスズキは後継に当たるスペーシアを投入するも首位奪還には至らず、2010年までスーパーハイトワゴン市場はタントの独壇場であったのだ。

2011年に登場したホンダ 初代N-BOXの投入により、タントの運命が少しづつ変わり始めた

ところが、だ。2011年にホンダ 初代N-BOXが発売されてから、タントの運命は大きく変わることとなる。後発ということもあり、スペーシアはもちろんタントを徹底的に研究し、室内の広さだけでなく犠牲になりがちであった走りの部分も抜きん出ていたのだ。

N-BOXヒットの後押しとなったのはカスタムモデルの派手さにある。軽自動車らしからぬ大きなグリルなど、これまでの常識を打ち破る挑戦的なデザインだったのだ

F1マシンを設計していた人間を開発メンバーに迎えるなど、ダイハツやスズキとは違い、登録車をメインとするホンダらしい一台であった。加えてN-BOXカスタムは当時のライバル車を圧倒する派手さも奏功し、瞬く間に超人気車種へと成長していったのだ。

2010年までは順調に推移していたが、2011年にガクっと台数を落としている。加えて2代目N-BOXが投入された2017年もまた同じ推移を示している

もちろんスーパーハイトワゴン市場を作ったのはタントであり、そのプライドもあったはず。そこでタントもいち早くスマアシなる先進装備を充実させるなど、あの手この手で改良を重ねるも、首位奪還を実現することなく現在に至っている。

問題は先進安全装備とデザインか

今まで犠牲となっていた走行性能を新世代プラットフォームの採用により、大幅に見直すなど現行タントは首位奪還を狙うべく開発

と簡単にタントの功績を振り返ってみたが、やはり今や当たり前となったスーパーハイトワゴン市場を作り出したのは日本の自動車史に残るほど偉大なことである。ライバルの登場によりやや低迷してしまったが、2019年に投入した現行タントはかなり本気で首位奪還を狙ったのだ。

トヨタが2015年に登場したプリウスより採用しているTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・プラットフォーム)は、トヨタ車の走行性能や質感を大幅にレベルアップしたものである。現行タントはTNGAのいわばダイハツ版にあたるDNGAを全面採用し、走行性能を大幅に向上させたのだ。加えてターボエンジン車には全車速対応のアダプティブクルーズコントロール(以下ACC)など、ライバル車より一歩先を目指した充実の装備が自慢であった。

ACCも全車標準にすべき

直感的に操作できるなど難しさはないが、なにせACCの採用グレードがターボのみというのは少々痛手

走行性能、そして先進安全装備の充実をアピールしたものの、未だ首位を奪還できていない。筆者の個人的な意見ではあるが、一部グレードにACCコントロールを採用したこと、そしてデザイン面に要因があるように思える。

というのも宿敵N-BOXはホンダセンシングと名付けられた先進安全装備を全車に標準装備としており、そのなかにはACCも含まれる。

タントの開発陣に理由を尋ねると「ほとんどの軽自動車オーナーは高速道路には乗らず、一般度がほとんどのため全車標準は見送った」という。たしかに実際の使用頻度は少ないかもしれないが、今や軽自動車をファーストカーにする人も少なくない時代である。そのためグレード構成などを見直す必要があるのではないだろうか。

もっといえば、ライバルのスズキ スペーシアは2020年の改良でノーマルモデルにもACCを装着できるようになるなど、軽自動車だから……という理由は通用しなくなってきている。

ちなみにベースグレード同士で価格を比較するとタントが124万3000円、対するN-BOXは142万8900円とその差は18万円である。軽自動車で差額18万円はかなりの違いではあるが、タントのベース価格を少しあげてでもACCを装着すべきのように思えるのだ。

ノーマルモデルのデザインが不評という声も

加えてデザインだ。タントカスタムはライバルのN-BOXやスペーシアと遜色なく、派手な見た目である。その一方でノーマルグレードが他のモデルよりもスポーティなデザインを採用している点にある。どこか輸入車チックな見た目でカッコいいのだが、都内近郊のダイハツディーラーに尋ねると「ノーマルモデルのデザインをライバル車のように穏やかな、もう少しわかりやすいデザインがいい」という声も少なからずあるようだ。

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せっかくスーパーハイトワゴン市場という飛ぶ鳥を落とす勢いのジャンルを作りあげたのだから、もう少しタントには頑張って欲しいところ。そこでデザイン面、先進安全装備などを見直して、再び首位に返り咲くことを願うばかりだ。

【筆者:MOTA編集部 木村 剛大】

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