トヨタ待望の電気自動車はレクサスから! 販売価格600万円強のUX300eは買いか!? ベースモデルとの最大の違いは後席にアリ
MōTA / 2021年3月16日 11時30分
レクサス、いやトヨタで国内の個人ユーザー向けとしては初の電気自動車(EV)「レクサス UX300e」を投入した。2020年度分はわずか135台の限定販売となる。世界的に大注目のコンパクトSUV市場に殴り込みをかけたカタチだ。ご存知の通りトヨタグループはプリウスをはじめとするハイブリッドカーに注力しており、電動化は得意中の得意なのだが、初のEVは一体どんな仕上がりなのか?
日本初導入のEVはレクサスブランドで勝負
レクサスUX300eはレクサス初、そしてトヨタ初の市販型本格EV(電気自動車)だ。
車名の通り、UX300eのベースとなっているのはコンパクトSUVのUX。2リッター4気筒エンジンと2リッター4気筒エンジン+モーターのハイブリッドをラインアップするUXのパワートレインを、最高出力150kW、最大トルク300Nmのモーターに置き換えて、前輪を駆動する。駆動用バッテリーの総電力量は54.4kWhだ。>>
今買える電気自動車は大きく2種類存在
どんなEVなのかイメージしやすいように、まず他社のEVと比較してみよう。現在発売中のEVを、まず大きくふたつに分けると、モーターの数がひとつかふたつで分けることができる。
昨年発表されたホンダeや2021年に発表されたマツダMX-30 EVモデル、ベテランの日産 リーフなどと同じく、レクサス UX300eのモーターはひとつ。 ジャガー I-PACEやアウディ e-tron、ポルシェ タイカン、モデル3・スタンダードレンジプラス以外のテスラ各車などは、みんな前後に1基ずつの2モーター構成。2021年中に発表が予定されている日産の新型アリアも2モーターと伝えられている。ボディが中型から大型で、航続距離も長く、性能も高いEVではモーターを2基搭載し、前輪と後輪を駆動するのがスタンダードになっている。
それに対して小型で、なおかつエンジン車モデルから発展したモデルが1モーターとなっている。ベースとなる内燃機関モデルを持たず、独自に開発されたホンダeの痛快で独特な走りっぷりと、同じモデルで1モーター版と2モーター版の両方が用意されているテスラ モデル3は選択肢の広さが光っている。
UXの航続距離は必要にして十分というイメージ
次にUX300eの立ち位置を探ってみるとすると、同じモーター1基グループの中での駆動用バッテリーの総電力量を較べてみたい。前述の通り、UX300eは54.4kWh。ホンダeとMX-30 EV MODELが共通の35.5kWh。日産リーフには、40kWhと62kWhの2種類がある。
つまりUX300eはモーターを1基搭載するEVのグループにあって、駆動用バッテリーの容量はリーフの次に大きい。満充電による航続可能距離は367km。街中で使うコミューター以上の距離が確保されている。
さすがレクサス! 徹底的に雑音を排除
メインスイッチのボタンを押してONにし、シフトレバーを“D”に入れ、走り出すところまではエンジン版のUXとまったく変わらない。しかし、走り出しは全然違う。EVを一度でも体感済みの人にとっては当たり前過ぎて恐縮だけども、静かで、滑らかに加速していくのはエンジン版とまったく違うのだ。ちょっと踏んだだけで、音もなくスーッと加速していく。この感じはUX300e独自のものではなくて、EV特有のものだ。
徹底的に遮音! レクサスらしいきめ細やかな作り
UX300eでは、そのEVの長所をさらに活かすべくさまざまな工夫を施している。
実例を挙げると、床下のバッテリーに遮音壁としての機能を持たせたほか、アコースティックガラスをフロントドアに採用するなど、パワートレインがほぼ無音であるがゆえに目立って聞こえてきてしまう風切り音や小石や砂などが巻き上げて、ボディの床下に当たる音なども遮断しようとしている。実にキメの細かい、レクサスらしい心配りによるクルマ造りだと思う。
バッテリー配置の工夫で快適性アップ
加えて、バッテリーパックを井桁形状の鋼鉄製アンダーフレーム上に搭載することで、路面からの衝撃を軽減しようとしたり、フロアと面で固定することでキャビン全体の剛性を向上させようとシャシーの根本的な部分の手当ても抜かりない。同様のことは、より大型のI-PACEやe-tronでも行われているが、UX300eのようなコンパクトなEVであっても上質な運転感覚と乗員全員の快適性を実現しようというレクサスの設計思想が現れている。
その効能は現れていて、舗装の荒れた路面や段差などを走り抜ける時に感じることができた。
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EV独特のクセなし! エンジン車から乗り換えても超自然
EV特有といえば、回生ブレーキである。エンジン車のエンジンブレーキに相当するようなもので、UX300eではハンドル裏のパドルによって回生ブレーキの加減をプラスマイナスそれぞれ2段階ずつ切り替えることができる。切り替えてみても、違いが少ない。もっと強力な回生ブレーキを備えているEVの方が多いくらいで、日産リーフなどは登場時は「ガソリン車から乗り換える人に違和感を持たれないように」という理由で、とても弱かった。
ほぼ同時に日本で発表されたBMWのEVであるi3が、停止するまでブレーキペダルを踏まずに済むほど、とても強力な回生ブレーキを備えているのと正反対であった。
しかし、そのリーフも一昨年のビッグマイナーチェンジで方針を大転換してi3のような「ワンペダルドライブ」で走れるようにしてきた。
走行モード変更するも、大きな差はなし
UX300eには走行モード切り替えも付いているので、スポーツモードを選んでみたが回生ブレーキの効き具合には違いが及んでいないように感じた。資料を確認すると、パドルで減速度を切り替えられることについて「EVの特性を最大限に活かしながら自然な操作性を実現しました」と書いてある。
ということは、意図的に回生ブレーキを強く効かせないように設定されているのか?
そうだったとしても、それは理解できる。コンサバ(保守的)な人には、こちらの方が「マイルドで乗りやすい」と気に入られるかもしれないからだ。
コストカットが目立つ車内! 後席の快適性は皆無
コンサバと言えば、ドライバーインターフェイスも同様だ。ボタンが多く、メーターパネルもデジタル表示部分の面積が決して広くなく、画面の切り替え範囲も狭い。もともと、エンジン車版のUX300からほとんど変えていないので、EVとなるとその保守的なところがとても目立ってしまっている。 EVでもっとも肝腎な電力量が、リアルのプラスチックの針が上下するガソリン残量計を流用しているのには驚かされた。デジタルの数字でも表示されるのだが、とても小さくて見やすいとはいえない。>>
また、運転支援機能の作動状況の表示が小さいのも、コンサバだ。EVでなくても、ヨーロッパ勢のこの点の進化は著しいのだ。
パーツを流用して節約することも大切だけれど、EVならではの新しい世界を体験させてくれることを期待したいところだ。
性能では数段上を行くテスラ モデル3は先日大幅な値下げをして1モーターのベーシックグレード「スタンダードレンジプラス」は429万円で買える。UX300eは580万円(version C)もする。試乗したversion Lに至っては635万円だ。
後席の足もとに注目! 大人は少々キツいか
もうひとつUX300eで憶えておきたいのは、バッテリーの車内への出っ張り分が無視できない点だ。後席に座った際に、前席シートと床に隙間がないので、足を潜り込ますことができないのだ。10数センチだけ足を伸ばすことができなくなるけれども、これが大きい。ガソリン版よりも車内空間が狭くなっていることを、購入する際には確認しておいた方が良いだろう。
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魅力は力強く、滑らかな加速にアリ
EV化による違いと、そうでないものが混在しているが、誰が乗っても手放しで褒めるのは追い越し加速の鮮やかさと上質さだ。ある程度の速度で走っている時に、そこからさらに速度を上げるべく右足を踏み込んだ際の力強く滑らかな加速は、発進時のそれよりもさらに上質なものだった。UX300eの最大の見せ場であった。【筆者:金子 浩久/撮影:佐藤 正己】
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