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SUV vs ワゴン どっちが好み!? アウディの人気モデル Q5&A4アバントを乗り比べてみた

MōTA / 2021年3月27日 9時0分

アウディ 新型Q5 40TDI クワトロ アドバンスト

かつて一大ブームを巻き起こしたワゴン(ステーションワゴン)に代わり、ここ10数年は世界的にSUVが急激に勢力を拡大している。そんなトレンドに合わせるかのように、国産メーカーのワゴンのラインナップはすっかり姿を消してしまった。 いっぽう欧州メーカーでもSUVを幅広く用意するが、ワゴンモデルもしっかり存続し、根強いファンの需要に応えているのが特徴だ。どちらも荷物がたくさん積めて長距離ドライブも楽しめるSUVとワゴン。その違いはどこにあるのだろうか。今回は欧州の老舗ワゴンメーカーでもあるアウディの2台を徹底比較。それぞれの特色について検証してみた。 筆者は、国内外の新車事情に精通するカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏だ。

アウディ A4アバント 40 TDI クワトロ Sライン[ボディカラー:タンゴレッドメタリック(2021年1月7日発売/B9系・マイナーチェンジモデル)]

アウディ Q5とA4アバント、まずはスペック面から比較してみる

アウディ A4アバント, アウディ Q5

アウディ A4アバント, アウディ Q5

SUVラインナップを拡充しつつ、ワゴンモデルも維持し続けるアウディ

昨今はSUVの人気が非常に高い。アウディでもユーザーの需要に応え、コンパクトな「Q2」からLサイズの「Q8」まで、5車種のSUVを揃える。

その一方でアウディといえば、洗練されたワゴン(ステーションワゴン)の印象も根強い。A4アバントは、その代表といえるだろう。

国産のワゴンモデルが相次いで撤退する中でも販売は続けられており、相変わらず根強い支持を集めている。

そこで今回は、ミドルサイズSUVの「アウディ Q5」と、ワゴンの「A4アバント」を比べてみたい。

ホイールベースは共通だがエンジン性能や車重などは異なる

アウディ Q5とA4アバントは、両車ともエンジンを縦向きに搭載するレイアウトで、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値まで含めてプラットフォームは共通だ。駆動方式は、A4の場合前輪駆動の2WDと4WD(クワトロシステム)が設定され、Q5は4WDのみとなる。

今回比較試乗したグレードは、Q5が「40TDI クワトロ アドバンスト」(681万円)、A4アバントは「40TDI クワトロ Sライン」(641万円)であった。

ボディサイズはQ5の場合、全長4680mm×全幅1900mm×全高1665mm。A4アバントは、4770mm×1845mm×1435mmだ。ホイールベースは両車とも2825mmで等しい。

エンジンは両車とも直列4気筒2リッタークリーンディーゼルターボを搭載する。

Q5の動力性能は、最高出力が204馬力(3800~4200回転)、最大トルクは40.8kg-m(1750~3250回転)になる。A4アバントは、190馬力(3800~4200回転)・40.8kg-m(1750~3000回転)とされ、数値は若干異なっている。

トランスミッションは、両車とも7速のSトロニックで、駆動方式はA4も含めて4WDだ。車両重量はQ5が1910kg、A4アバントは1700kgになる。Q5はSUVとあって210kgほど重い。

ボディサイズを比べると、ホイールベースは同じだが、全長はA4アバントが90mm長く、全幅はQ5が55mmワイドで、全高はQ5が230mm高い。

全高の違いがクルマの性格を決定付けている

アウディ Q5とA4アバントで、数値が最も大きく異なるのは全高だ。2台の運転感覚を比べた時も、全高の違いが大きく影響していた。

同じカーブを同程度の速度で曲がると、Q5はボディの傾き方が大きい。下り坂のカーブを曲がりながら、危険回避を想定してブレーキペダルを踏んだ時も、Q5はボディの上側が振られやすい。

A4アバントは低重心だから、同じ操作をしてもQ5に比べて挙動変化が小さい。

ただしQ5はボディの傾き方は拡大するものの、走行安定性は損ないにくい。全幅が55mmワイドなこともあり、4輪の接地性は優れている。そしてQ5では大きめの挙動変化が穏やかに進むから、ドライバーが操っている実感を得やすい。

例えばタイムを計測するような走り方をすれば、低重心のA4アバントが速いだろうが、楽しさではQ5も優れている。両車の立場は対等だ。

見方を変えると、大きめの挙動変化が穏やかに進むQ5には、運転を上達させる効果もある。

例えばカーブへ進入する手前でブレーキペダルをラフに踏むと、高重心でボディの重いQ5は、A4アバントに比べて前後左右のボディの傾きが唐突に発生する。運転の仕方が雑になっていることがドライバー自身に分かりやすく、自然にていねいな運転を促す。

アウディ Q5とA4アバント、実際に乗り比べてみるとどうか

乗り心地が柔軟なQ5、機敏なA4アバント

乗り心地もQ5が快適だ。A4アバントも足まわりがしなやかに伸縮するが、Q5はそれ以上にリラックスできる。足まわりがゆったりと柔軟にストロークする感覚は、いかにもSUVらしい印象だ。

タイヤの違いもある。両車ともに19インチを装着していたが、Q5のサイズは235/55R19だから、A4アバントの245/35ZR19に比べて、空気の充填ボリュームが上まわる。

タイヤの銘柄は、Q5がコンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5、A4アバントはピレリ・Pゼロであった。Q5の操舵に対する反応は穏やかで、A4アバントはアウディとしては機敏な印象だ。

最低地上高は、Q5はSUVとあって185mmの余裕があり、A4アバントは120mmだ。Q5は悪路のデコボコを乗り越えやすく、駐車場の段差が大きめの場所でも下まわりを擦りにくい。A4アバントは低重心で走行安定性を向上させやすい。

ディーゼル同士ならどちらも余裕たっぷりで互角の性能

クリーンディーゼルターボエンジンの性能は、前述の通り同程度だ。実用回転域で、ガソリンエンジンでいえば4リッターに匹敵する駆動力を発揮するから運転しやすい。

街中では低回転域を保ちながら、速度を着実に高めていく。高速道路の巡航でも、登り坂に差し掛かってアクセルペダルを少し踏み増すと、過給効果が即座に発揮されて速度を滑らかに上昇させる。

ディーゼルとしては高回転域の吹き上がりも良く、フル加速する時には、両車とも4700回転付近まで回る。ATが7速だから、ギヤ比の割り方も細かい。街中や高速道路の巡航では低回転域、峠道では高回転域を維持しやすい。ディーゼル特有のノイズは聞こえるが、騒々しい印象は受けない。

両車の加速力を比べるとA4アバントが勝る。車両重量に210kgの差があるためであるが、Q5が重く感じることはない。

後席の余裕や荷室の使い勝手はQ5に軍配

アウディ A4アバント, アウディ Q5

アウディ A4アバント, アウディ Q5

アウディ Q5とA4アバントの内装も比べたい。

インパネ周辺の質感は両車とも同水準だ。居住性は異なり、シートに座ると、Q5では前後席とも床と座面の間隔に余裕がある。着座姿勢も異なる。

特に後席は、Q5が広々としている。身長170cmの大人4名が乗車した場合、Q5の後席に座る同乗者の膝先には、握りコブシ2つ半の余裕がある。この快適性はSUVのメリットだ。A4アバントにも相応の空間があるが、膝先スペースは握りコブシ2つ分だから、Q5に比べて少し狭い。床と座面の間隔も下まわるから、腰が落ち込んで膝の持ち上がる座り方になりやすい。

荷室はQ5が広い。全高が230mm高いので、荷室高にも余裕があり、荷物の収納性が優れている。

アウディのブランドイメージにマッチするのはQ5のキャラクターだ

山道や高速道路を機敏に走りたいならA4アバントがオススメだが…

SUVのQ5は、比較的新しい車種になるが、試乗するとアウディのブランドイメージにピッタリと合っていた。

アウディの特徴は、リラックスできる快適で馴染みやすい乗車感覚にあり、スポーティなBMWや緻密に造り込まれたメルセデス・ベンツとは対称的だ。

アウディ Q5の柔軟な乗り心地は、アウディらしさを際立たせていた。ゆったりとした気分で快適な運転を楽しみたいユーザーには、Q5が相応しいだろう。

筆者の渡辺 陽一郎氏

いっぽう、峠道や高速道路を機敏に走ったり、都市部の立体駐車場を使う機会の多いユーザーには、A4アバントが適しているのは確かだ。

いずれにせよ、一度アウディ Q5とA4アバントの両車を乗り比べてみれば、アウディへの理解がさらに深まると思う。Q5とA4アバントはアウディのセンターに位置する主力車種とあって、総合的に満足感の高い欠点を見つけにくい仕上がりを見せていた。

[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:小林 岳夫]

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