イヤな渋滞が快適な時間に!? 世界初の自動運転レベル3を搭載したレジェンドを試してみた
MōTA / 2021年4月1日 12時0分
運転中、もっとも苦痛な時間はやはり渋滞だ。進んだと思ったら、また停止を繰り返すために精神的にも、肉体的にもかなり疲れるのだ。もしその面倒な作業をクルマが行ってくれるとしたら、どんなにラクだろか。実は、今回テストしたホンダ レジェンドにもそんな夢の技術が搭載されたのだ。一体どれほど快適に、そして安心して乗れるのだろう。実際に渋滞に突っ込んで試してみた。
最大の違いはアイズオフ機能!
いよいよ、自動運転車の公道試乗がかなう時がやってきた。そう、ホンダ・レジェンドに搭載された、国土交通省から自動運行装置として形式指定を取得した自動運転レベル3(条件付き自動運転車/限定領域)のホンダセンシングエリートのテストドライブである。
自動運転レベル3って一体何!? レジェンドは今までの何が違うのか
ここで、自動運転のレベルについてまず説明すると現在、多くのクルマに採用されている運転支援機能はレベル2にあたる。ACC(アダプティブクルーズコントロール)とホンダで言うLKAS=車線維持支援システムによる、ステアリングに軽く手を添え、ペダル操作から解放。高速道路や自動車専用道路での車線内をキープしつつ、前車に追従、または一定速度で走れることを言う。
またレベル2にはレベル2+が存在する。それはドライバーが前をしっかり見ているという条件で、ハンズオフが可能になる運転支援である(自動運転ではない)。
では、自動運転の範疇になるレベル3が2+とどう違うのかと言えば、レベル2+のハンズオフにアイズオフが加わるところ。Eyes off、つまり“前を見ていなくていい”ということだ。
実証実験で130万キロ走行! 安全性はしっかり担保
さて、レジェンドのホンダセンシングエリートのシステムは、約1000万通りのシミュレーション、約130万kmの走行実証実験を経て開発されたもので、デバイスの不具合による安全性、信頼性にも徹底的に配慮されているという。
自動運転レベル3を実現するセンシングには、前部のカメラ2基、前後5基のミリ波レーダー、さらのライダーという超高価な赤外線(レーザー)センサーも前後に5基搭載することで車両周囲360度を常時監視する。 それに加え3D高精度地図、全地球衛星システムGNSSなどの情報を用い、自車の位置や道路状況を高度の把握。ただし、ドライバーの視界が奪われるような大雨、霧、大雪などで道路上の白線が認識できないと、自動運転レベル3は行えない(白線の塗り替え中も含む)とのことだ(東京の首都高C1などきついカーブだらけの路線も除外)。>>
目玉のハンズオフ機能は125km/hまで使用可能! 車線変更すらも支援
ホンダセンシングエリートの機能について詳しく説明すると、まずは自動運転レベル2+とも言えるハンズオフ機能である。高速道路や自動車専用道路で、渋滞追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)と車線維持支援システム(LKAS)が作動中に一定の条件を満たすと、ドライバーがステアリングから手を放しても、システムが運転操作を支援してくれる機能だ。
それには、ハンズオフ機能付き車線内運転支援機能、ハンズオフ機能付き車線変更支援機能、ハンズオフ機能付き高度車線変更支援機能が含まれる。
操作はボタン2つ押すだけ!
では、さっそくホンダセンシングエリートが装備されたレジェンドで走り出そう。首都高に乗り、ステアリング上の簡単な操作でACCとLKASを作動させる。すると、手を軽くステアリングに添えた状態で、システムがハンズオフ可能と判断すると(約65km/h以上)、ステアリング、ナビ画面、助手席前の3か所のイルミネーションがブルーに光り、ハンズオフが可能になったことを示してくれる。ハンズオフが可能な速度は、ACCの設定上限速度と同じ125km/hまでとなる。
レベル3が発動するのは渋滞時のみ。それも条件が整った状態で
とはいえ、ここまではあくまで運転支援の自動運転レベル2+の機能でしかない。
公道初体験のアイズオフと呼ぶべき自動運転レベル3(条件付き自動運転車/限定領域=トラフィックジャムパイロット)が発揮されるのは、限定領域という但し書きがあるように、高速道路や自動車専用道路を走行中に発動される。
しかも一度、車速が30km/h以下に落ち、システムが前後車両などを判断し、渋滞(限定領域)と判定した上で、約50km/hまでの車速域となる(一般道では不可)。
システム作動中はナビの操作や動画鑑賞が可能に
ここで、「それではスバル・レヴォーグのアイサイトX(自動運転レベル2+相当)と変わらないじゃないか?」と思うかもしれないが、そこは、自動運転レベル2とレベル3の大きく高い壁の手前と向こう側の違いがある。
つまり、アイサイトXでも高速道路や自動車専用道路での渋滞時、時速約50km/hまではハンズオフドライブが可能だが、ドライバーはしっかりと前を向いている必要がある(システムにドライバーの顔の向きをモニターされている)。そう、運転の主体はあくまでドライバーにあるというわけだ。>>
走行中にナビ設定&動画鑑賞も! 渋滞が快適な時間に
が、レジェンドのホンダセンシングエリートで可能な自動運転レベル3となるトラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)が作動した状態では、ついに自動運転レベル3の領域となり、システムが運転を担うことになる(ただし、システムから操作要求があればすぐにドライバーが運転操作を行える状態にあることが必須)。
それは12・3インチのフル液晶グラフィックモニター(メーターパネル)にトラフィックジャムパイロットの作動が開始されたことが示され、前を向いている必要はない。ナビ画面でDVDの鑑賞、ナビ設定などを行うことが可能になるのだ。ちなみに、ドライバーは常に、ナビ画面左にあるカメラでモニターされている。レベル3に感動して夫婦間も良好に!?
だから、ドライバーが真横を見たり、助手席の人がカメラの画角を遮るような姿勢をとる場面では、トラフィックジャムパイロットの作動は一時的に解除されてしまう。
つまり、助手席の彼女が自動運転レベル3に感動して!? 思わずドライバーにキス、その反対も不可となる(ざ、残念!?)。
とはいえ長時間の渋滞で、トラフィックジャムパイロットの威力は絶大。今回も高速道路上で”運よく!?”けっこうな渋滞に巻き込まれたのだが、ステアリングを握る身としてストレスは最小限。ACCとLKASによる125km/hまで可能なハンズオフドライブ(こちらは、くどいようだが、ドライバーは前を向いている必要がある)との合わせ技で、渋滞を含む長距離移動を劇的に楽にしてくれることは間違いないと思えた。
なお、トラフィックジャムパイロットは、約50km/hに達するとキャンセルされるが、その後は、ハンズオフドライブも可能な自動運転レベル2+の状態に引き継がれる。
目線移動だけで勝手に車線変更!? この機能こそがもっとも便利
と、ホンダセンシングエリートはハンズオフ機能ばかりに注目が集まっているが、実は、それと同じ以上にすごいのが、世界初のハンズオフ機能付き高度車線変更支援機能だ。そもそもホンダセンシングエリートでは、高速道路や自動車専用道路を走行中、ドライバーが任意でウインカーを中ほどまで下げる操作を行い、約1秒維持することで、ハンズオフ状態で車線変更を行ってくれる!!
スイッチ操作による車線変更機能もあるのだが、このハンズオフ機能付き高度車線変更支援機能は、ステアリングにある高度車線変更支援スイッチがONの状態で、自車より遅い前走車がいた場合、システムが追い越しの可否を判断。
ウインカー操作なしに、自動で前車を追い越し、また元の車線に戻るという、自動運転そのものの世界を見せてくれる機能なのである(これから自動で追い越しますよ、という案内はある)。
ちなみに、高速道路の分岐、目的地設定で高速道路を下りるような、レーンチェンジを伴う可能性がある場面では、ハンズオフ機能は解除される。一方、合流地点では「譲る」制御が盛り込まれ、ハンズオフ機能は維持される。
一番の魅力は絶大な疲労軽減! まさに夢の技術だった
こうして、レジェンドのホンダセンシングエリートのハンズオフドライブ、車線変更支援機能、自動運転レベル3となるトラフィックジャムパイロットを体験してきたのだが、やはり、もっともドライバーのメリットなるのは、精神的、肉体的に疲れる渋滞時に発揮されるトラフィックジャムパイロットだと思えた。
個人的には、交通量の多い高速道路での高速ハンズオフドライブはけっこう緊張するし、車線変更も自身で行うことになんら面倒は感じない。しかし、運転でもっとも疲れるであろう長時間の渋滞時に前を向いていなくてよい……というトラフィックジャムパイロットの機能は、さすがに夢の自動運転技術だと感動することができたのである。
もちろん、自動運転レベル2+でのハンズオフドライブ中でも、LKASによってカーブをトレースすることは可能だし(東京の首都高C1など、カーブのきつい道が連続するところでは作動不可)、通常のACCではできないカーブの手前減速制御機能もしっかりと用意されている。
ただし、アイサイトXにある、料金所手前速度制御機能は持っていない。これは、やればできたそうだが、運転の主体がシステムとドライバーのどちらにあるのかを、自動運転レベルによって、はっきりと切り分けたいからだったという。
限定100台のみ! レベル3が一般化するにはまだ時間が必要
そんな、ホンダセンシングエリートを搭載したレジェンドだが、100台、リース限定で、価格はホンダセンシングエリートなしの従来車に対して400万円弱高い1100万円だ。これは、自動運転レベル3に不可欠な、まだ超高価なライダーセンサー(赤外線)を、カメラやセンサーとともに用いているからだ。つまり、自動運転レベル3を備えたクルマが一般的になるのには、まだまだ時間がかかるということだ。が、少なくとも、ホンダがレジェンドにホンダセンシングエリートで自動運転レベル3の第一歩の足跡を残したことは大きく評価していいと思える。
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そもそもレジェンドのデキが素晴らしい! 乗り心地は世界レベルだった
そうそう、言い忘れたが、ベース車のレジェンドそのものも素晴らしい。4輪の駆動力を自在に制御する革新技術、SPORT HYBRID SH-AWDや、システム最高出力382psを発生する3.5リッターV6エンジン+3基のモーターによる走行性能を誇る。
動力性能は、国産セダン最高峰、いや、欧州の高級セダンに肩を並べるレベルにあると言っていい。その高性能、上質感、運転の楽しさにも、改めて感心したところなのである。
渋滞が快適に!
国内での販売台数が年間200台ぐらいと、希少な!? 存在でもあるホンダのフラッグシップセダンのレジェンドだが、ホンダセンシングエリート搭載車の見分け方は、リヤに貼られた自動運転レベル3を表すステッカー(ホンダがデザインしたもの)。
これが印籠となり、渋滞時にトラフィックジャムパイロット=自動運転レベル3が作動中であれば、車内でドライバーが映画を見ていたりしても、おとがめなし、ということになる。渋滞が待ち遠しくなる、渋滞を楽しめる先進機能……それがホンダセンシングエリートと言っていいかも知れない。
なお、ホンダセンシングエリートと、日産のプロパイロット2.0、スバルのアイサイトXとの違いは、改めて別稿で紹介させていただきたい。
【筆者:青山 尚暉】
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