納車に大影響! 今話題の半導体問題ってそもそもなに!?
MōTA / 2021年4月10日 11時30分
半導体問題は近頃ネットやテレビのニュースでよく耳にする言葉だ。にもかかわらずその実態を本当に理解できている人は少ないはずである。そこで、この半導体問題とは、そもそも何が問題になっているのか? また我々の生活にどんな影響を及ぼすのだろうか? 素朴な疑問を専門家に聞いてみた。これから新車を購入する人は要注意です!
クルマを動かすために絶対に必要な部品だった
自動車産業は1ヶ月以内にも半導体不足による大幅な減産をしなければならなくなるだろう。半導体の消費量に対し完全なる供給量不足に追い込まれているのだ。対象はエンジンを制御するためのECUに始まり、自動ブレーキの制御や、ナビゲーション、ETC2.0など搭載している全ての電子機器に及ぶ。クルマの部品は、1つ足りなくても完成車にならないのだ。
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半導体不足の原因はコロナ禍と大規模火災にあった
そもそもなぜ半導体不足になったのか? 実は2年ほど前から供給量としてギリギリの状態にあった。高い性能&信頼性が要求される半導体の生産は、大企業じゃないとコストダウンできないのだ。
当然ながら巨額の投資を必要とする。そして需要に波があり、景気が悪いと売れなくなってしまう。半導体の工場を新設しようとすれば、ギャンブルのようなものなのである。
コロナ禍で需要は低下! テレワークなどの浸透によりニーズ急上昇
実際、2020年の春ぐらいから始まった新型コロナ禍により、半導体の需要は一気に減少している。だからこそ需要と供給のバランスがギリギリの状態だったにもかかわらず、供給量を増やさなかったのだ。当時の半導体メーカーは「投資しなくてよかった」と胸をなで下ろしたことだろう。
2020年の夏あたりから世界的に需要が盛り返し、フル生産に戻った。と思ったら、予想以上に需要が伸びたのだった。
主な理由としては外出しなくなったため、家でゲームをする人の増加。そしてテレワークによりパソコンの販売台数は急増したのだった。10月に入ると再び供給不足になり始める。立て続けに発生した火災&被災で大ピンチに
そんなタイミングで半導体大手の旭化成エレクトロニクス宮崎工場で大規模な火災が発生した。自動業界などへ向け生産していた半導体の供給が完全に止まってしまったのだ。
その被害は甚大! 生産ライン稼働まで半年かかると言われ、宮崎工場で生産していた半導体を後述のルネサスやセイコーエプソンなどに振り分けた(4月3日になって今回燃えた工場の再建を断念すると発表!)。
いずれにしろ宮崎工場の火事により半導体不足は決定的になる。世界規模で自動車生産ラインの断続的な停止が始まったのだった。
そして2021年2月の福島沖地震と、それによる停電でルネサスの主力工場である茨城県の那珂工場が停止。復旧した矢先に那珂工場が大規模火災事故を起こしたのである。しかも今回燃えた生産ライン、ルネサスにとって重要なモノであった。自動車などに使われる最先端の300mmウエハーを作っており、クリーンルームまで燃えてしまったという。
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海外も自然災害でダウン! 世界的な品薄に
海外の半導体工場も、様々な理由で減産を強いられてしまっている。台湾のTSMCは降雨不足による渇水で半導体の生産に必要な水を確保出来ず減産。やはり半導体大手のサムスンも2月に米国を襲った大寒波でテキサス工場が停止。
どの企業も他社の減産分をカバー出来るような話じゃない。新しい工場を作るまで(最短で2年)、完全な供給不足になりそうだ。
半導体なくして電化製品やクルマは作れない
ここまで読んで「半導体って何ですか?」と思う人も多いだろう。半導体のロジックについて説明しようとすれば「なぜTVが映るのか?」に等しいほど複雑なのだった。なので簡単に紹介すると、電子機器を制御するため必ず必要な構成部品になる。皆さん日常的に使っているSDカードなど半導体の集合体と言って良かろう。
初期の半導体は真空管が1単位。続いて大幅に小型化した「トランジスタ」となる。トランジスタ1000個分を小さいチップにまとめたのを『1KビットDRAM』(1970年)。20年後には1Kビットの64万倍の能力を持つ64Mビットとなり、さらに生産技術は進歩し今に至る。半導体がないと電子製品は作れないと言って良い。
先進装備だらけの新型車は納車遅れの可能性も
今後どうなるだろう? ルネサス那珂工場の火災による影響は、4月末あたりから深刻化。今のところ生産再開までのタイムラグは火災直後の見積もりより長くなり、最短で1ヶ月半と言われている。自動車メーカーも独自ルートでの調達戦略を立てているが、ゴールデンウィーク明けからの全ての車種に於いて減産は避けられない状況。納車遅れも出てくると思う。
【筆者:国沢 光宏】
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