巨大ボディの新型Sクラスは意外と小回り性能バツグン!? 注目のARナビと個人認証機能を1日試してみた
MōTA / 2021年4月12日 19時50分
メルセデス・ベンツのフラッグシップセダンのSクラスがフルモデルチェンジを果たした。最高級モデルとあって1日中試乗してもすべての機能を試せないほどの内容であったのだが、注目はAR技術を駆使したナビと指紋や暗証番号を入力する個人認証機能など、まるで映画の世界と言いたくなるほど夢にまでみた機能が実用化されているのだ。今回は走りの良さではなく、これらの新機能を徹底的にテスト。新型Sクラスはどんな世界を体感できるのか!?
売れ筋はコンパクト&SUVながら最高級セダンSクラスは次元の違うデキ
最近の都内では、メルセデス・ベンツと言えばヘビーデューティユースのGクラスとコンパクトのAクラスやBクラス、それらのSUV版であるGLAやGLBを眼にすることが多くなってきた。
けれども、依然としてブランドを代表するのはSクラスだろう。大型でVIPを後席に乗せることの多いSクラスが周囲に放つ威厳のようなものは新型も変わらない。
全車4WDモデルに! 空力性能アップの装備も充実
しかし、中身は新機能と進化がたくさん盛り込まれている。近付いてみると、ボディに埋め込まれたのには驚かされた。テスラのモデルSのようだ。空力特性と言えば、ボディ各部のチリの詰めもさらに進んでいて、表面は非常に滑らかだ。それを表すCd(空気抵抗係数)値は0.22と量産車最高の水準を達成している。
日本仕様で用意されるのは、ガソリンエンジンのS500 4MATICとディーゼルのS400d 4MATICに、それぞれのロングホイールベース版で、合計4モデル。車名の通り、Sクラスはすべて4輪駆動となった。
意外と小回り性能抜群! 後輪操舵で狭い道も楽チン
そのS500 4MATIC ロング(以下、S500)で出発する際に、いきなり新型の恩恵を賜ることになった。
都心のホテル地下駐車場からS500を出す際に、駐車場の壁や隣のクルマ、向かいのクルマなどに用心しながら出そうとしたら、思いの外スンナリと通路に出ることができたのである。標準装備されることになったの効能だ。時速60キロまでは、後輪は前輪と逆方向(逆位相)に最大4.5度切れ、時速60キロを超えると同じ方向(同位相)に最大3.0度切れて、コーナリングの安定性向上に寄与する。
これはSクラスだけの装備ではなく、世界的な流行でもある。近年ではベントレーのフライングスパーやスーパーカーのランボルギーニ・アヴェンタドールなどにも採用されている。
新型Sクラスは全長5180mm(ロングは5290mm)x全幅1920mmx全高1505mmにもなる大きさなので、この4WSはありがたい。オーナーとなって毎日運転する人には、そのありがたみを噛み締めることだろう。個人認証設定で自分好みのセッティングに
新型Sクラスには世界初やメルセデス・ベンツ初採用の機能と装備がとても多い、と前述した。
生体認証が可能になったのには、個人的にとても惹かれた。メーターパネル内のカメラでは顔を、センターのディプレイパネルでは指紋を、音声では声、画面からはPINコードなどを使って事前に登録しておいたユーザーを認証し、各種の車両設定を呼び出し、自分好みの設定で走り出すことができる。セキュリテイ上も効果が高いだろう。 設定が可能なのは、シート、ステアリング、ドアミラーのポジション、メーターパネルディスプレイの表示スタイル、スマートフォンのペアリング、ナビゲーションのお気に入り設定など。筆者は、数年前から、こうした生体認証による車両設定を強く望んでいた。それが実現したので、今後は他のクルマにも早く広がって欲しい。
多機能&高機能化する現代のクルマでは必須の機能ではないかと考えていたのである。家電製品や家具などでは生体認証は実用化されているわけなのだから、クルマでできないわけがないと思っていたら、やはりメルセデス・ベンツが実現してくれた。
道間違えとおさらば! ARナビの案内はピカイチの扱いやすさだった
他にも、注目の“初モノ”はある。ARによるナビゲーションだ。地図の上を矢印で示すのではなく、S500のカメラが重ね合わせている。 矢印は、ヘッドアップディスプレイにも映し出すこともできて、念が入っている。ヘッドアップディスプレイの表示も、何通りにか設定可能できる。これまでのカーナビの見せ方とあまりにも違っているために、最初は戸惑い気味だったが、慣れるに従って、こちらの方が圧倒的にわかりやすい。
とくに、片側1車線の細い道が交差する住宅地や不規則に道路が交わり合う市街地などでは実際の道と方向を把握しやすい。
今回は、同業のM氏をピックアップしてから箱根に向かうため、そうした一般道を抜ける必要があり、ARナビゲーションを試すことができた。
滑らかな加速が自慢! 静粛性もバツグン
M氏を乗せて、東名高速道路に乗った。「うわぁ、スゴい。リアシートは快適だ」経験豊富なM氏が驚くほど、後ろは快適なようだ。後で、交代してもらおう。
運転席も、当然のように快適だ。ターボチャージャーと電動コンプレッサーのコンビで過給される直列6気筒3.0リッターエンジンの最高出力は330馬力、最大トルクは700Nmを発生する。さらに、ISG(モーター機能付き発電機)と48V電気システムも組み合わさり、9段ATと結合されて0-100km/h加速は5.4秒。
スペック通りに速く、滑らかで静かな加速。日本仕様で標準装備されるエアサスペンションによって、あらゆるショックが遮断され、分厚い絨毯の上を走っているかのようだ。
路面からの細かなショックや瞬間的な振動なども車内には伝わってこない。アコースティックガラスの採用による遮音性も高い。
長距離ドライブが快適に! 充実の先進安全装備は直感的に操作可能
東名道の横浜町田インター手前で渋滞に巻き込まれ、ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)とLKAS(レーンキープアシスト)などの運転支援機能をすかさずオンにする。
適切な車間距離を維持することや細かなアクセルワークなどから解放され、運転支援機能を活用すると脳のECUがラクできて助かる。Sクラスは先代モデルからレーンチェンジアシスト機能「アクティブレーンチェンジングアシスト」も備わっていたが、渋滞中では試すことがなかった。モデルチェンジによって運転支援機能の精度が向上したと資料にあり、効き具合にまったく不満は感じられなかったが、操作方法のスイッチとロジックが改められていた。これで構わないのだが、先代もとくに車間距離の設定の仕方が独特でとても使いやすかったことを憶えている。
運転する楽しさも! 5種の走行モードは全て快適
走行モードは、エコ、コンフォート、スポーツ、スポーツプラス、インディビデュアルの5種類。渋滞が解けてから、コンフォートからスポーツに切り替えてみたが、心地良さに変わりはなかった。
コンフォートよりも低いギアを使いたがるが、9段もあるのでそれも違いは気にならない。高速道路では乗り心地が引き締まる分、スポーツでも快適だった。
山道だからスポーツモード一択かと言うと、そうでもないところが大したものだと思う。芦ノ湖スカイラインのような傾斜もコーナーもキツいところでも、コンフォートでも十分以上のペースで駆け上がっていく。
マッサージ機能のモードも多用! 後席モニターの機能もてんこ盛り
M氏に運転を代わり、後席に乗って東京に戻った。「やっぱり、Sクラスの後ろは違いますね」足もとも頭上も十分以上な空間が確保され、助手席の後ろ側のシートにはオットマンまで備わっている。快適そのものだ。シートも運転席のものとは明らかに違っていて、リラックスできる柔らかさだ。「長距離の国際フライトのビジネスクラスではなく、これはもうファーストクラスですね」と語るほど。マッサージだって、さまざまなモードが用意され、とても全部試すことができなかった。
ほとんどを音声認識で操作! 4人同時に話してもしっかり機能する頼もしさ
前席の背もたれに装備されたiPadを横置きしたぐらいのタッチパネルを触って操作できるのと併せ、もちろん音声入力も可能だ。「ハイ、メルセデス」で始まるMBUXによる音声入力操作は百発百中とまではいかなかったが、使いこなせたら便利だろう。
ナビや空調、音楽などはほとんどこれで済むようになる。音声入力操作は、新たに前後左右4つのシートのどのシートに座った人物が発した音声なのかを聞き分けることができるようにもなった。それを認識している時には、ドアサイドのアンビエントライトの色が変わって識別できるようになっている。つまり、エアコンやマッサージなどはその席の分だけでも音声操作で変えることができるのだ。
今考えられる先進機能は全載せ! 内容を考えれば納得の値段!?
六本木から箱根を3人で往復して、道中であらゆる新機能と新装備を試そうとしたけれども、たくさんあってとても無理だった。時間切れで試し切れなかったものがあるだろうし、僕らが新機能や新装備自体に気付いていないものもあっただろう。それほど、多くの部分が変わり、新しいものが加わった。また、3つの生体認証をはじめとして、スマートフォンを同期したり、アプリを使ってみたり試すことも、“休日に景色の良い道をゆったりとドライブを楽しむ”ような気分になってブルメスター製の高性能オーディオで音楽を楽しむようなこともできなかった。
あまりの多機能&高機能なので、とても「購入したオーナーと同じように」試乗することができたとは言い難かった。
つまり、それだけオーナーの好みや使い方を反映した設定を多岐に渡って行うことが可能になったと断言できる。だから、自宅ガレージにパーキングアシストを使って駐めるところから始まり、S500のすべての設定を試し、AppleCarPlayなども使いこなし、時には長距離を走って運転支援機能の進化ぶりも体感しないことには、このクルマの真の価値をうかがい知ることができたとは言えないだろう。
新型車の急速な多機能&高機能化の傾向は新型Sクラスに限らず、程度の差こそあれ最新のクルマどれにも共通している。
しかし、ここまであらゆるものが備わっているのは今のところこのSクラスだけだろう。さすがは自動車を生み出したメーカーだけのことはある。
現在、実用化されている最新の技術や機能、装備が考えられる限り盛り込まれている。足りないもの、忘れられているものが思い浮かばない。盤石の安定感、与党的な安心感。1740万円という価格は高価だけれども、2021年に発表される高級車として隙がなく、完璧に内容が伴っている。
【筆者:金子 浩久】
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