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トヨタはなぜGR86やGRスープラなどのスポーツカーを単独で開発しないのか!? その答えはスポーツカービジネスの難しさにあった

MōTA / 2021年5月17日 19時30分

トヨタはなぜ単独でスポーツカーを開発しないのか?

まもなく登場するトヨタ GR86、そして兄弟車のスバル 新型BRZ。兄弟車と書いたのはこのクルマはトヨタとスバルの共同開発で生まれたモデルであるからなのだが、じつはこのところトヨタが発売するスポーツカーはどれも他のメーカーとタッグを組んで開発がなされている。 GRスープラもBMWと共同開発なのだった。そこで疑問なのだが、一体なぜトヨタは単独でスポーツカーを作らないのだろうか? 今回はその理由を探ってみたい。結論から言うとスポーツカービジネスは“儲かりづらい”からなのだが、真相はいかに!?

トヨタはなぜ単独でスポーツカーを開発しないのか?

名車と呼ばれるモデルも決して台数は捌けていない! スポーツカー作りほど儲からないビジネスはないのだった

答えは超簡単、ぶっちゃけスポーツカーが儲からないからです。販売台数をみれば一目瞭然。例えば日本自慢の箱庭スポーツカー、ホンダ ビートは約5年で累計3.4万台、スズキ カプチーノは7年で2.7万台しか作られず、来年生産終了のホンダS660も4万台程度と言われてます。

今どき同じ軽ハイトワゴンのN-BOXが“ひと月”に国内で2万台近く売れる時代。4〜5年で乗用車のたったフタ月分しか売れない不便な2人乗りのクルマ、それも専用設計多し……が儲かるわけないでしょう?

スポーツカービジネスで儲かっているのはフェラーリだけ!? ポルシェですらメインはSUV

スポーツカービジネスで成功していると言われているフェラーリですらSUVモデルの投入を予定しているほど

そもそもスポーツカー作りが儲かるならみんなやっているし、長く作り続けるし、安全性能が足りなくなっても続編を作るはず。作らないってことは利益が出てないんです。メーカーは慈善事業やってるわけじゃないんだから! 実際、筆者小沢からみて純粋にスポーツカーだけで長らく儲けているメーカーはフェラーリやランボルギーニぐらい。

スポーツカーのイメージが強いポルシェだが、販売台数のほとんどを占めているのがカイエンやマカンといったSUVモデルたち。くわえてパナメーラという大型サルーンなど、かつてのイメージと大きく異なるモデルが人気を博しているのだった

かつてはポルシェもそうでしたが、1990年代に経営難に陥り、今やポルシェの販売台数の7割がSUV。しかもフォルクスワーゲングループ傘下に入ってプラットフォームを共有化し、上手にコストを下げています。最近では英国マクラーレンも頑張ってますが、本格的にロードカービジネスに乗り出したのはここ10年の話。

中でも70年以上の長きに渡ってコンスタントにスポーツカービジネスを続けているのは事実上フェラーリだけかも? それも1台3000万円前後の超高付加価値値のスーパースポーツ専門で年間生産1万台以下。ほとんど走る超ハイブランドファッションを作っているような特殊な存在だと言えます。

国産モデルで成功したのはマツダ ロードスターなど数えるほど……

ホンダ S660は発売後たった5年足らずで生産終了に。大きな理由として今後変更される安全規制にクリアできないとの理由であったが、直近の販売台数をみても決して成功といえる成績ではなかったのだ

かたや我がニッポンが誇る良くて利益率8%の大衆車メーカーがスポーツカーを作るのは並大抵じゃありません。上記で語ったように不便な事実上の2人乗りカーは絶対台数が出ませんし、ブランドポジション的にフェラーリ、ランボルギーニみたいな値付けもNG。そりゃホンダS550も500万円で売れたら2万台でペイできるかもですがそんなの絶対無理。

しかも今はスポーツカーと言えど先進安全機能やコネクティビティ機能も必須で価格は高騰気味。よって今、200万円台スタートの大衆スポーツカーは世界広しとはいえマツダロードスターぐらいで、あとはセミ高級スポーツともいえる400万円スタートの日産 フェアレディZ。かつてあったフィアットやMGなどの欧州系大衆スポーツは露と消えたか、中国などに売られたのです。

日本独自の軽自動車規格ではないうえに低価格! という見事なパッケージングで日本のみならず世界中で愛されているマツダ ロードスター。事実もっとも売れてたスポーツカーとしてギネス記録を更新中である

そんな中、参考になるのはマツダの戦略でなんとロードスターは2016年に27年間で世界累計台数100万台の大記録を打ち立てました。高くなくてもコンスタントに台数が出れば大衆スポーツカーは成立するのです。

そこで大切になってくるのは「スポーツカー広角打法」。狭い地域で売れる軽なんかじゃ絶対ダメで、日本はもちろんスポーツカー大国北米は絶対ですし、欧州マーケットも必須。この点をオープン2シーターのロードスターは見事に条件をクリアしてます。

トヨタが打ち出した“スポーツカー共同開発”は理にかなった作戦だった

2012年に投入したトヨタ 初代86、そしてスバル BRZと同様に新型モデルも共同開発を敢行している

さらにトヨタが打ち出したのは「オトモダチ作戦」。台数の出ないスポーツカーをトヨタだけでなく仲間ブランドと一緒に売り、販売台数を稼ぐと共に開発費を分担するやり方です。2019年には500万円超スポーツカーのスープラをBMWと共同開発しましたし、2012年には200万円超大衆スポーツカーのトヨタ86をスバルと共同開発しました。

特に86は約8年で世界累計20万台超、兄弟車のスバルBRZが9万台超と大成功。このスポーツカー冬の時代、一世代で30万台を売り切る力は素晴らしく、大成功と言えるでしょう。

トヨタがスポーツカーを作り続けるのは自動車産業に真摯に取り組んでいる証

とはいえ見方によってはたったの30万台。プリウスが1年間で売れるぐらいの数ですし、トヨタがスポーツカー作りを止め、セダンやSUVやミニバン作りに専念したらもっと効率的に利益を出せるでしょう。生産台数も上がるかもしれない。

GRスープラはBMWと共同開発で生み出されたモデルである。兄弟車であるBMW Z4はオープンカーという違いはあるものの、内装やエンジンといった部分はマークを変えた程度と差別化を最小限に抑えている

しかし、自動車は道具であると同時に快楽の塊であり愛が付く工業製品です。道具と割り切ったとたん、将来的にコストの安い中国車や韓国車に負けてしまう可能性なども出てきます。つまりトヨタがスポーツカーを作るということは、それだけ自動車産業に対して真剣に取り組んでいるということなのです。

クルマの利便性と同時に、楽しさも追求することにより、今後もトヨタらしい楽しい愛の工業製品を創造していくことができる。子どもの教育だってそう。勉強だけでなく遊びも教える。そうしないとバランスの取れた強い存在にはなれないってことですよ。

【筆者:小沢 コージ】

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