スバル 新型レヴォーグの安全性はやっぱりホンモノ! JNCAPでほぼ満点を獲得した要因はスバルの安全思想にあった
MōTA / 2021年5月25日 14時30分
自動車事故対策機構が実施しいてる性能評価試験の結果が発表された。これは昨今普及が進む衝突被害軽減ブレーキをはじめとした予防安全技術に対する評価を行う試験で、2020年度に発売をした新型車の中でスバル レヴォーグが堂々の1位を獲得したのだ。その発表に併せてスバルは新型レヴォーグの安全思想について発表会を実施。今回は新型レヴォーグが打ち立てた記録と、スバルの考える安全思想についてレポートする。結論からいうと、新型レヴォーグは今一番おすすめできるクルマということだった。
新型レヴォーグの安全性は堂々の1位を獲得! アイサイトXはやっぱり買いだった
2020年12月にスバル入魂のミドルステーションワゴンとして登場した新型レヴォーグ。ステーションワゴンに対する需要が低迷している状況ながら、登場以来約2万4000台を受注しているという人気車である。
その人気の理由としてはスバル車らしい走行性能や各部の質感の高さ、アイサイトXを含めた新世代の先進安全装備や衝突安全性をはじめとした高い総合的な安全性が挙げられる。新型レヴォーグは日本カー・オブ・ザ・イヤー2020に続き、独立行政法人自動車事故対策機構NASVAが行う自動車アセスメント(いわゆるJNCAPと呼ばれるクルマの安全性の評価)においても2020年度の試験車の中でトップとなるファイブスター大賞を受賞した。
新型レヴォーグがJNCAPで獲得した得点は、JNCAPの得点体系が衝突安全性100点、自動ブレーキの性能をはじめとした予防安全性82点、主にコネクテッド機能の性能となる事故自動通報システム8点の合計190満点のところ、衝突安全性96.9点、予防安全性82点、事故自動通報システム8点の合計186.9点というほぼ満点の成績だった。
このような背景もあり、スバルは主に衝突安全性を中心とした新型レヴォーグの総合安全性能の高さを詳細に紹介する説明会をオンラインで実施。当記事では新型レヴォーグの安全思想についてレポートする。
アイサイト装着車の事故率が劇的な低下を記録! スバルの安全思想は約60年前から始まっていた
説明会では、はじめに藤貫 哲郎 執行役員CTO(最高技術責任者) 技術統括本部長 兼 技術研究所長から、スバルが掲げる「2030年を目標としたスバル車が関係する死亡事故ゼロ」に向けたスバルの安全への想いや歴史、今後の展望などが語られた。
現在も続くスバルの安全思想は、スバルの前身である中島飛行機飛行機まで遡る。飛行機の墜落は死に近いものだけに、あらゆる非常事態の想定や危険な状況にならない対策や視界の確保などを入念に行っていたことが基礎となっており、いわばスバルのDNAである。
スバルの旧社名である富士重工になってからも安全性に関しては、1958年登場のスバル 360から追突事故を想定した実験の映像が残っているなど、「クルマの安全性」という考えがほぼなかった時代から全方位安全思想に基づく衝突安全ボディが採用されていたのだ。 その後、1989年に登場した初代レガシィにはアイサイトの前身となるステレオカメラを使ったADA(アクティブドライビングアシスト)の開発が始まったという経緯がある。死亡事故0も夢じゃない! アイサイト装着車の衝突事故発生率は1%以下
また衝突安全性では1998年登場の3代目レガシィで新環状力骨構造ボディ、2016年登場の現行インプレッサでは衝突安全性の向上にも貢献する新世代のSGP(スバルグローバルプラットホーム)と歩行者保護エアバッグが採用。さらには予防安全では2008年に現在スバルの基幹技術の1つとなっているアイサイトが4代目レガシィの最終モデルで採用された。
アイサイトは2010年に5代目レガシィに追加され、10万円という安さもあり一気に普及したver.2、2014年の初代レヴォーグに搭載されたアイサイトver.3。そして2017年に初代レヴォーグとWRX S4の改良で採用されたツーリングアシスト、アイサイトXを含めた現行レヴォーグと進化を続けているのだ。>>
結果、近年のスバル車はアイサイトから見ていくと、
アイサイトver.2装着車では追突事故が84%。歩行者との事故が49%減少
ver.3装着車では追突事故の発生率が0.06%
と劇的に低下しているのだ。日本のJNCAPやアメリカの保険機関が行う安全性のテストでも非常に高い評価が続いている。
今後に関しては予防、衝突安全性、コネクテッド機能による早期救命の進化を目指しているという。
アイサイト装着車の死亡事故は過去4年間でたったの5件
新型レヴォーグの開発責任者である五島 賢PGM(プロダクトゼネラルマネージャー)からは、安全性の全体像が語られ、分野ごとに盛り込まれた安全性向上のための具体的な技術としては、以下5つの点が挙げられた。
●0次安全性:良好な視界、デジタルマルチビューモニターなどの充実したカメラ類
●走行安全:シンメトリカルAWDや高い基本性能
●予防安全:Xを含む新世代アイサイト
●衝突安全:後述
●つながる安全/スバルスターリンクによるエアバッグが開くほどの事故の際のオペレーターさんからの呼びかけや反応がない場合の救急車などの手配、突然かつ重度の体調不良の際のSOSコール、トラブル時の対応
高齢化社会も想定した安全思想
衝突安全性に関しては古川寿也車両研究実験第三部 部長 兼 車両安全開発部 部長兼 SUBARU研究センター 担当部長がプレゼンテーションを行った。
スバルでは日米、特に米国での事故実態調査を行っており、調査から得た改良すべきポイントと具体的な対策として以下の通り。1.SUVをはじめとした車重の重いクルマとの衝突の増加を想定し、キャビン(車内)の強化
2.高齢化も関連した胸部へのダメージ低減の必要性を想定したエアバッグ類、シートベルト関係の改良
3.ドライバーの不注意が事故発生の大きな割合を占めていることから、ドライバーを監視するDMS(ドライバーモニタリングシステム)、アイサイトの進化といったクルマのサポート
以上3つの点にスバルは注力しているのだ。
ちなみに2019年の調査によると、日本で登録から4年以内のスバル車が関係した死亡事故は相手が歩行者か自転車が1件、クルマ対クルマが1件、単独事故1件の3件と現時点でも非常に少ない点にも驚かされた。
ボディが衝撃を吸収! 乗員は大怪我なしで生還できる設計
今回のイベントのハイライトとなったのは音警報付シートベルトリマインダーについて。というのもここでは後席シートベルト装着の重要性も強調するため、デモンストレーションは運転席と後席右側の乗員ダミーはシートベルトを装着、後席左側の乗員ダミーはシートベルト未装着という状態で、64km/hのスピードでクルマの右側40%を衝突させるオフセット衝突実験だったからだ。64km/hでの衝突は映像で見ても想像以上にスピード感があるため、衝突した瞬間は目を覆いたくなるものだった。またスロー映像ではシートベルトをしていない後席左側の乗員ダミーが前方に飛ばされた姿も僅かに見えた。
オフセット衝突した新型レヴォーグの車体前方は、グッチャリと損傷している。だが、グッチャリと損傷してくれたことで衝突エネルギーをシッカリと吸収し、キャビンの変形はなく、ドアも容易に開くのだった。そのため実際に新型レヴォーグで実際に事故に遭っても、シートベルトをしている乗員は大きな怪我なく生還できるだろう。
シートベルトリマインダーは救世主!?
しかしシートベルトをしていた乗員ダミーとは対照的に、シートベルトをしていなかった後席左側の乗員ダミーは後席におらず、助手席座面に頭を下にした状態で飛ばされていた。スロー映像を見ると衝突した際にダミーはお尻をルーフに当てながら頭をサッカーのヘディングのようにダッシュボードのカーナビが付くところに強くぶつけており、これでは死に至る可能性は非常に高いと言わざるを得ない。
少々イベントの意図からはずれるが、現行レヴォーグの衝突安全性の高さ以上に、シートベルトを装着する重要性を再認識させられる実験であった。
「シートベルトはすぐに装着できますから、クルマに乗ったら必ず装着してください」という古川氏の言葉が非常に印象的だった。
また先代レヴォーグで世界初採用された音警報付シートベルトリマインダーは後席シートベルトの装着率向上に大きく貢献しているという。
筆者はスバル車で大事故を経験も無傷だった
なお、お恥ずかしい話ながら現在41歳の筆者は20代後半の時に乗っていた2代目レガシィでボンネットが盛り上がるくらいの追突事故を起こしたことがあったが、怪我もなく生還できた。クルマは修理代の関係もあり廃車となってしまったものの、今こうやって原稿を書けているのはいきなり遭遇した最後の仕事も体を張って完璧にこなしてくれた2代目レガシィのおかげであり、そのときにはスバル車の安全性の高さを実体験した。同時にこのことを思い出しながら原稿を書いていたら、本当に涙が止まらなくなってしまった。
アイサイトXだけでも買い! 新型レヴォーグには是非つけたい装備だ
衝突安全性は普段使うことがない性能なだけに(もちろんクルマの保有期間中使わないで済めばそれに越したことはない)、 現行レヴォーグは冒頭に書いた走行安全やアイサイトといった部分の魅力が目立っているのは事実だ。
しかし、新型レヴォーグはデモンストレーションの通り衝突安全性をはじめとした安全性も非常に高いだけに、クルマを選ぶ際に安全性を重視する人や安全性を含め輸入車を考えている人にもぜひ候補に入れて欲しいクルマであることをこのイベントで再認識した。
【筆者:永田 恵一】
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