セドリックのパトカーが大活躍! カーアクションも見ものだった昭和の男臭い刑事ドラマ「大都会 パート3」に再注目せよ
MōTA / 2021年5月29日 19時0分
昭和の時代、刑事ドラマはかなりの数が製作されたが、やはり石原プロモーションによる作品は影響力が大きかった。中でも映画製作からテレビに進出した第一弾となる「大都会」シリーズは、歴史に残る作品である。今回は、特にカーアクションが見ものだった「大都会 パート3」を中心に、昭和の男臭いハードボイルドな刑事(デカ)の話について語ってみよう。
[製作著作:石原プロモーション]石原プロ テレビ第一回作品として華々しくスタートした「大都会」シリーズ
激しいアクションのイメージが強いが、パートI「大都会 闘いの日々」は大人向けの重厚な人間ドラマだった
“大都会”シリーズは、日本テレビ系列にて、毎週火曜午後9時から放映されていた刑事ドラマである。1976年1月から1979年9月にかけ、「大都会 闘いの日々」(大都会 パートI)、「大都会 パートII」、「大都会 パートIII」の全3シリーズが放映された。いずれも東京・渋谷に近い“城西警察署”が舞台となっている。
大都会 パートIとも称される「大都会 闘いの日々」は、“石原プロ テレビ第一回作品“として華々しくスタートした。脚本は「北の国から」などでおなじみの倉本 聰がメインの脚本家として参加。“マル暴”(暴力団の事案)担当となる渡 哲也扮する黒岩刑事、石原 裕次郎が記者クラブキャップの滝川に扮していた。その後の「大都会 パートII」や「大都会 パートIII」のような派手なアクションシーンはほとんど目立つことはない人間ドラマだが、むしろ「西部警察」など石原プロの刑事ドラマに一定のイメージを持つ方にこそ観てほしい、大人向けの重厚な作品となっている。
松田 優作演じる徳吉刑事がいい味出してた…「大都会 パートII」
さてパートIが1976年8月に終了し、1977年4月から装いも新たに「大都会 パートII」が始まる。
パートIIからは、城西警察署 捜査第1課が舞台となるが、渡 哲也扮する黒岩 頼介は部長刑事に昇進。アドリブを飛ばしまくる徳吉刑事(松田 優作)はじめ、捜査1課(黒岩軍団)による、ガンアクションやカーアクションをふんだんに採り入れて悪人と闘う刑事アクションドラマとなった。なお石原 裕次郎氏はパートIIから“渋谷病院(城西警察署の嘱託病院)”の医師“宗方 悟朗”役で登場。医師でありながら、何かと黒岩軍団の捜査に口を挟んでくるのが特徴だ。
裕次郎のキャスティングが警察関係者でないことは、当時やはり日本テレビ系金曜午後8時から放映していた「太陽にほえろ!」(製作:東宝・日本テレビ)にて、“ボス”こと、警視庁 七曲署の藤堂 俊介 捜査1係 係長のキャスティングと被るのを避ける狙いがあったのではないかともされている。
「大都会 パートIII」からは日産自動車が全面協力! 新車のパトカー軍団や救急車などを大盤振る舞いで提供した
大都会 パートIIが1978年3月末に終了すると、少し間を置いて「大都会 パートIII」が1978年10月から放映開始となる。
舞台は引き続き、城西署 捜査1課。黒岩部長刑事率いる“黒岩軍団”が、パートII以上に派手なアクションで大活躍するものであった。捜査メンバーでは松田 優作が外れ、パートIで新聞記者役だった寺尾 聰(牧野 次郎)がダーティーハリーばりに44マグナムをぶっ放す役で新規参加。石原 裕次郎はパートIIから引き続き渋谷病院の宗方 悟朗 医師役で登場している。カーアクション好きにとっては、本作からオープニングの最後に“協力 日産自動車”と入るようになったのは大きな違いだ。
黒パトだけでなく、パンダカラーの白黒パトカーには、4代目(330型)後期モデルの新車が一気に導入されたほか、S30型フェアレディZ 2by2の白黒パトカー(のちに塗り替えられ、石原 良純氏の愛車になったらしい…)や、渋谷病院の救急車(キャラバン)など、登場車両は日産全面協力による大盤振る舞いの状態だった。大量のパトカーが隊列を組み登場するあのオープニングは「大都会 パートIII」が元祖だった!
大都会 パートIIIのオープニングも見ものだった。石原プロといえばお馴染み、パトカー軍団のパレード(!?)走行である。時々YouTubeなどで、パトカーの隊列シーンに西部警察のテーマ曲と被せた動画を見かけることがあるが、元祖はこの大都会 パートIIIだったのだ。ロケは、横浜市青葉区の東急田園都市線及び横浜市営地下鉄のあざみ野駅近くで行われた。
アップダウンが続く長い直線の坂道を超望遠で撮影。片側1車線の道路を反対車線まで思い切り使い、なぜかむやみに蛇行運転しながら、たくさんのパトカーがサイレン音を鳴らしこちらに向かってくる。サイレン音もアメリカンポリスのようなサウンドで、これがまた格好良かった。
しかもバックにはヘリコプターまでも超低空で飛んでいるという、住宅が密集する現在のあざみ野では絶対できない撮影風景といえよう。白黒色のフェアレディZパトカーを先頭に、走ってくるのは新車の4代目セドリックが中心なのだが、よく見ると“タテグロ(片側縦2灯式ヘッドランプだったから)”と呼ばれた、当時でも結構古めの3代目日産 グロリア(合併前のプリンス自動車が開発したモデル)が1台混じっているほか、本編では出てこないフェアレディZの覆面車など、他車種も参加しているのが確認できる。
激しいカーアクションシーンになると、急に古びた230型セドリックへすり替わるのもお約束!
日産自動車から新車の提供を受けたことで、捜査車両や制服警官の乗る警ら車両は新車の4代目330型セドリック主体になった大都会 パートIII。しかしいざ激しい追走シーンなどが始まると急に、古い3代目(230型)セドリック/グロリアにすり替わるのもお約束であった。しかも大抵の場合、簡素なグリルと丸くて小さなホイールキャップのスタンダード仕様にグレードダウンしたのがわかる。幼心にもあからさまであったが「そろそろ、破壊シーンがはじまるな!」とワクワクして観ていたのが昨日のように思い出される。なにせほぼ毎週・毎話ごとに破壊シーンがあり、何台もの230セドグロがクラッシュしていた(アクシデントで、他車のクラッシュに巻き込まれ新車の330も破壊されたことも!)。今改めて考えても凄いことだ。 カーアクションの時に後席から前席を映す(俳優自ら激しいスタントを演じていることを見せるためだ)というパターンがあったが、刑事らがマニュアルコラムシフトで頻繁にシフトチェンジしている様子を見て、「ああタクシー上がりだな」と確認していた幼少期の筆者である。当時のタクシーは、前席ベンチシートの6人乗りにマニュアルコラムシフトが定番だった。後年、大都会シリーズなどのカースタントを担当していた方の話を聞く機会があったのだが、あくまでイメージとしながらも『シート(ビニールレザー地)の裂け目からクッションのスプリングが出ているような、とにかくヨレヨレのクルマだったと記憶している』と筆者に語ってくれた。
日テレで放映した「大都会」シリーズが、フォーマットもそのままにテレ朝「西部警察」へとお引越し
前作の大都会 パートIIより格段にアクションシーンが増えた大都会 パートIII。のちの「西部警察」シリーズのようにスーパーマシンが出てくるわけでもないし、壮大なスケールの地方ロケがあったわけでもない。都内及び近郊でのカーアクションや銃撃シーン、そして激しい暴力が繰り返された男臭いハードボイルドな内容なのだが、いままでの刑事ドラマにはない、車両の“破壊っぷりとそのスケール”に度肝を抜かされたのも鮮明に覚えている。平均視聴率20%以上と評判もよく続編が期待されたが、1979年9月11日に放送終了。1979年10月から大都会シリーズの続編といっていい「西部警察」が、コンセプトをほぼそのままに、なんとテレビ朝日系列で、黒岩軍団から大門軍団で再スタートすることとなる。“大人の事情”がいろいろあっての“引っ越し”と聞いている。
放映開始45周年記念!「大都会」シリーズ・コンプリートDVD-BOXが2021年8月4日に発売
かつて大都会シリーズを観ていた世代からまだ一度も観たことがないという世代までお伝えしたい大ニュースだ。1976年1月の「大都会 闘いの日々」放映開始から45周年を迎えた2021年8月4日(水)、大都会シリーズ全132話を収録したDVD-BOXが発売されることが決まった(発売元:株式会社ポニーキャニオン/製作著作:株式会社石原プロモーション)。2012年に石原プロモーション設立50周年を記念し発売していたDVDを、今回新たにコンパクトなサイズの新装パッケージとし、「大都会-闘いの日々-」(DVD 8枚組/価格:9548円)、「大都会 PART II」(DVD 13枚組/価格:1万6016円)、「大都会 PART III」(DVD 13枚組/価格:1万5092円)と価格も抑えてそれぞれ発売される。
発売時期の2021年8月は、昨年2020年8月に亡くなられた渡 哲也さんの1周忌というタイミングでもある。ここで改めて、熱き男たちの刑事ドラマを鑑賞してみてはいかがだろうか。
[筆者:MOTA編集部 劇中車研究班/撮影:MOTA編集部・日産自動車・石原プロモーション・トミーテック・ポニーキャニオン/製作著作:石原プロモーション]
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