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絶好調のトヨタ ヤリスの裏で苦戦中のホンダ フィット。そのワケはN-BOXの価格設定にあった! とにかくフィットは一早いデザイン変更を切望

MōTA / 2021年6月6日 11時30分

トヨタ ヤリス&ホンダ フィット

2020年2月と同じ月にデビューしたホンダ フィットとトヨタ ヤリス。歴代モデルはどちらも大人気を博しているが、いまフィットが苦戦を強いられている。なにもクルマの性能が悪い云々の話ではなく、室内の広さや使い勝手を考えるとフィットはクラス随一のデキなのだ。にもかかわらず、なぜ明暗が別れてしまったのか!? その理由を探ってみたい。

トヨタ ヤリス&ホンダ フィット

ホンダ フィットとトヨタ ヤリスは同時期にデビューも販売台数はヤリスの圧勝

どちらも2019年の東京モーターショーへの出展を経て、2020年2月に発売されたトヨタ ヤリスとホンダ フィットは言うなれば同級生のコンパクトカーである。

それぞれを見ていくと、ジャンルは同じでも、そのキャラクターは後述するように対照的で、優劣ではなく「万人向けで売れそうなのはフィット」と感じる人は少なくないだろう。

しかし、2021年1月〜4月までの販売台数はヤリス(約4万台)、フィット(2万4261台)とヤリスの圧勝となっており、ここではその理由を考えてみた。

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同価格帯ながら性格は真逆のヤリスとフィット

高級車顔負けの先進安全装備とスポーティなデザインが魅力のヤリス

つり目のヘッドライトを採用しているため実用車としてはかなりデザイン性に優れるのがヤリスの魅力である

その前に2台の概要を簡単に紹介すると、日本では三世代続いたヴィッツからフルモデルチェンジを期に車名が改められたヤリス。ポジションとしてはデミオから続くマツダ2やスズキ スイフトが直接的なライバル車となるド真ん中のコンパクトカーである。

ヴィッツから心機一転したヤリスは「安全装備など上級車と同等の機能を持つ、車格や価格などに関係なく欲しくなるクルマという意味でのクラスレス」というコンセプトで開発された。

それだけにコンパクトカー用として新開発されたTNGA-Bプラットホームの採用や、新開発された1.5リッター3気筒ガソリンエンジンの搭載など、力の入ったモデルとなっている。

また、ド真ん中のコンパクトカーということもありスタイルや走りなど、全体的にスポーティな印象だ。

コンパクトカーなのに車内は広々! 1台で何役もこなすフィット

柴犬をモチーフにデザインされているため、ヤリスに比べて大人しい顔つきのフィット

一方のフィットは「センタータンクレイアウトなどによる、広さを核にした“これ1台で十分のコンパクトカー”」というコンセプトこそ、初代から基本的には不変である。

しかし、現行型4代目モデルはフロントに大きなサブウインドウを加えることによる視界の良さをはじめとした使いやすさにより注力。1.5リッターハイブリッドもDCT+1モーターからトランスミッションなしの2モーターとなるなど、着実な進化を遂げている。

基本となるベーシック、中核となるホーム、ラグジュアリーなリュクス、アクティブなネス、クロスオーバーのクロスターという5つのバリエーションをラインナップする点も大きな特徴だ。

車内の広さが魅力のフィットよりヤリスに人気が集中

ヤリスの後席は必要十分といったスペースである。実際に座ると決して狭いというワケではないがシートアレンジなどが手軽にできないのが難点, 対してフィットの後席は大人が足を組めるほど広大なスペースを確保。そして座面を持ち上げれば簡単にシートアレンジができるなど使い勝手もバツグン

ヤリスの後席は必要十分といったスペースである。実際に座ると決して狭いというワケではないがシートアレンジなどが手軽にできないのが難点, 対してフィットの後席は大人が足を組めるほど広大なスペースを確保。そして座面を持ち上げれば簡単にシートアレンジができるなど使い勝手もバツグン

まとめると「広くはないけど、趣味性も盛り込まれたヤリス」、「広さを含めた高い実用性を持ち、平均点の高いフィット」というイメージだ。

多く人が持つトヨタとホンダに対するイメージからすると、2台は両社が逆になったような性格を持つ。この点はともかくとして、この2台は冒頭に書いたようにフィットの方が万人向けに感じるだけに、販売でヤリスがフィットを圧勝しているというのは意外なのだ。

フィットの苦戦理由はN-BOXの価格設定が影響していた!?

具体的になぜヤリスはフィットを圧勝しているのか? 筆者の結論は「フィットのスタイルに若干クセがあるということ以外、クルマ自体に大きな原因があるのではない。ヤリスに強い追い風が吹いて、フィットに向かい風となる要素が多いから」であると感じている。

ヤリス人気はディーラーの体制変更にアリ!? アクアなどからの乗り換えも目立つ

2020年5月からトヨタは全ディーラーで全車種を取り扱うようになったため、ヤリスに人気が集中。同様にアルファードとヴェルファイアはどちらも人気車種であったが、今やアルファードに人気が集中している状況である

トヨタの全ディーラー全車種扱いが大きな要因ではないだろうか。

というのもヴィッツ&ヤリスは2020年4月までネッツ店専売であったが、2020年5月からはトヨタは全ディーラー全車種扱いにより、ヤリスもトヨタの全店舗で買えるようになったのだ。

そうなるとヴィッツからの乗り換えに加え、コンパクトカーのアクア、パッソを検討していたユーザーの選択肢にもなる。

さらにアクアとパッソは登場から時間が経っていることもあり、価格を重視するユーザー以外はヤリスを選ぶ傾向にあるのだ。そう考えると、ヤリスが売れるのは理解できる。

フィットを買うならN-BOXもアリ!? 軽自動車で十分と感じるユーザーが増加中

フィットの苦戦理由はヤリス人気だけでなく、じつは同じ会社のN-BOXの影響も少なからず受けている。というのはフィットとN-BOXの価格帯はグレードによってはバッティングしているのだった

対してフィットはキープコンセプトでのフルモデルチェンジだったため、2013年登場の先代型3代目フィットユーザーだと乗り換えるほどの決定打には欠け、フィットからの買い換えが進んでいないのかもしれない。

そして筆者は現行N-BOXが登場してから「価格はそれほど変わらず、4人乗車までなら十分広い上に完成度が非常に高い。そして維持費も安いN-BOXがあれば、フィットを買う必要性は薄くなりそう」と感じていた。同様に感じるユーザーが多いからこそ、N-BOXのほうが圧倒的に売れている。その分、フィットが伸び悩んでいるというのは紛れもない事実であろう。

フィットにはスポーツモデルなしでヤリスより華がないのが原因!?

ヤリスファミリーにはヤリスとヤリスクロス、そしてスポーツモデルのGRヤリスもラインアップしている

ヤリスにはスポーツモデルとは言えないにせよ、スポーツ走行などに使う素材として面白い1.5リッターガソリン+6速MTがラインナップ。それに加え、別のクルマとなるが、3ドア+ワイドボディのGRヤリスの存在もヤリスのイメージアップに貢献していると思われる。

それに対しフィットは先代モデルまであった1.5リッターガソリンで6速MTもあるスポーツモデルトのRSが廃止されたのもあり、全体的に華に欠けるのだった。

この点は販売台数という意味では大きなものでないと思うが、全体的なイメージとしては無視できない差なのではないのだろうか。

ヤリス人気の裏にはトヨタディーラーとの“長い付き合い”からトヨタを選ぶユーザーも

後席を頻繁に使用するならばオススメしたいのは断然フィットであったが……

1つ私の身内であったヤリスとフィットに関する話を実体験として書いていく。

私の叔母は15年乗ったトヨタ ラクティスの初代モデルの買い換えを計画しており、候補に挙がったのはこの2台だった。叔母は私の両親と仲が良く3人、つまりリアシートを使って移動することもそれなりにあるので、筆者は広さを理由にフィットを勧めた。しかし、叔母は「付き合いのないホンダより、付き合いの長いトヨタの方が安心だわ」とヤリスハイブリッドを選んだのだ。

このようにヤリスは全ディーラー全車種扱いという追い風に加え、トヨタと付き合いがある一般ユーザーが買っているケースも少なくないのかもしれない。

フィットのデザイン変更に期待!

フィットは6月3日(木)に一部改良されたが、既報の通り細かい改良が行われ、コンプリートカーのModuloXと20周年を記念した特別仕様車の追加は目立つが、販売台数が増えそうな変更はないというのが率直な印象だ。

しかしホンダ フィットが基本のしっかりした良いクルマであることに変わりはない。東京オートサロン2021に出展されたフィットクロスターカスタムのような方向でSUVモデルを強化したり、かつてのスポーツモデル「RS」を復活させるなど、テコ入れ策はありうる。それだけに、ホンダの巻き返しにはまだまだ期待したいところだ。

【筆者:永田 恵一】

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