フルモデルチェンジした8代目「フォルクスワーゲン 新型ゴルフ」は旧型から乗り換える価値あり! ただし1リッターと1.5リッターの選択は慎重にいきたい
MōTA / 2021年6月16日 11時30分
フォルクスワーゲン ゴルフは人気車種とあって、従来型を所有するユーザーも多い。そこで2021年6月15日に発売された8代目の新型ゴルフと、旧型(ゴルフ7)をカーライフジャーナリストの渡辺 陽一郎氏が徹底比較する。果たして新型ゴルフは、旧型から乗り替える価値のあるクルマなのか? 結論から言うと「大いにあり! ただし1リッターターボと1.5リッターターボは比較試乗してから決めるべし」。
フォルクスワーゲン初! 2つの新型ダウンサイジングターボエンジンとマイルドハイブリッドの新しい組み合わせが「eTSI」だ
フルモデルチェンジを実施したフォルクスワーゲン 新型ゴルフで最も注目される点は、新しい48Vマイルドハイブリッドを搭載したことだ。最高出力が9.4kW(13馬力)、最大トルクは62Nm(6.3kg-m)のモーター機能付き発電機、専用リチウムイオン電池、制御機能などによって成り立つ。
減速時にはモーター機能付き発電機が減速エネルギーを使って発電を行い、リチウムイオン電池に充電する。そこに蓄えられた電気は、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援、12Vの電装系にも供給される。アイドリングストップ後の再始動は、モーター機能付き発電機がベルトを介して行うため、スターターモーターのような金属音を響かせない。静かにエンジンを始動させるから、アイドリング停止と再始動を頻繁に行っても煩わしく感じない。従ってアイドリングストップを積極的に作動できる。そのために燃費効率も向上した。
新型ゴルフに搭載されるのは2つの「eTSI」エンジン! 3気筒1リッターターボと4気筒1.5リッターターボを比較
新型ゴルフ「eTSI アクティブ」が搭載する直列3気筒 1リッターターボは、WLTCモード燃費が20.4km/Lと良好だ。直列4気筒1.5リッターターボの「eTSI スタイル」と「eTSI Rライン」も、マイルドハイブリッドを搭載して18.7km/Lになる。動力性能は、eTSIアクティブが搭載する1リッターターボの場合、最高出力は110馬力(5500回転)、最大トルクは20.4kg-m(2000~3000回転)だ。先代型の1.2リッターターボは105馬力(4500~5500回転)・17.8kg-m(1400~4000回転)だったので、先代型の動力性能は自然吸気(ノンターボエンジン)であれば1.8リッターと同等で、新型は2リッター並みだ。
1リッターターボはちょっとノイジーだが、モーター補助によるなめらかな加速が魅力
運転感覚を新旧モデルで比べてみよう。アクセルペダルを深く踏んだ時、新型ゴルフ eTSI アクティブの1リッターターボでは、先代型の1.2リッターターボに比べ、3気筒特有の粗い音質が響く。
その一方で発進時などは、モーター駆動の支援によって新型の加速が滑らかに感じる。新型の3気筒のノイズは、登坂路で分かりやすいため、販売店の試乗車で試してみたい。
旧型のTSI 1.4ターボと同等の性能を持つ新型eTSI 1.5リッターターボだが、さらに力強く感じられる
eTSI スタイルとeTSI Rラインの1.5リッターターボは、最高出力が150馬力(5000~6000回転)、最大トルクは25.5kg-m(1500~3500回転)になる。先代型の1.4リッターターボは最高出力140馬力(4500~6000回転)、最大トルク25.5kg-m(1500~3500回転)だから、性能は同程度だ。それでも乗り比べると、新型は実用回転域の駆動力が少し強く、高回転域の吹き上がりも活発だ。1.5リッターターボは4気筒だから、3気筒の1リッターターボと違って、ノイズは気にならない。
飛躍的に進歩したデジタルコクピットと先進運転支援機能こそ新型ゴルフに乗り換える最大のメリットだ
内装が革新的! 大型液晶ディスプレイに囲まれるデジタルコクピットプロが未来過ぎてカッコいい
新型ゴルフの内装で最も注目されるのは、デジタルメータークラスターの「デジタルコクピットプロ」を標準装着したことだ。ステアリングホイールの奥側に高解像度の液晶ディスプレイが備わり、速度やエンジン回転数のほかにカーナビ画面なども表示できる。インパネの中央には、インフォテイメントシステムの10インチディスプレイが装着され、各種の情報を表示できる。オプションのディスカバープロパッケージを装着すると、SSDナビゲーションシステムと地デジTV受信機能も加わる。オプション価格は19万8000円だ。
先進運転支援機能の充実ぶりにも注目
安全装備や運転支援機能も進化した。ステアリングの操舵支援機能は、以前は時速60km以下で作動したが、新型では高速域までカバーできる。車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも全車速追従型だから、長距離移動時にはドライバーの疲労が軽減され、安全性をさらに向上させる。
衝突被害軽減ブレーキは、歩行者に加えて自転車も検知する。ドライバーが意識を失うなど運転操作を行えないと判断された時は、自動的にハザードランプやホーンを作動させて周囲に注意喚起を行い、同一車線内で車両を停止させる。停止後は電動パーキングブレーキを作動させ、ドアロックを解除して救出を容易にする。
このように安全装備と運転支援機能の充実は、新型に乗り替える一番のメリットだ。
新型ゴルフに用意された2つの「eTSI」エンジン、1リッターターボと1.5リッターターボはどっちが買い!? お得感は圧倒的に1リッター版だが、試乗でノイズの大きさは確かめておきたい
旧型の美点だった視界の良さや取り回し、居住性は新型にもそのまま継承! ただし内装にはコストダウンの跡も
新型ゴルフを旧型ゴルフと比較すると、視界や取りまわし性、前後席の居住性自体は先代型と大差ない。
新型のインパネは水平基調で流行に沿っているが、ウレタンパッドやメッキパーツは、むしろ先代型の方が上質だった印象も受ける。ATレバーも従来型はオーソドックスなスライド式で誰にでも馴染みやすかったが、新型は小さなスイッチを前後に動かす方式だ。ユーザーによっては馴染みにくいだろう。慣れるまでは、誤操作をしないように注意したい。
1リッターターボ「eTSI アクティブ」(312万5000円)を買うなら、オプションの「テクノロジーパッケージ」(20万9000円)追加は必須!
フォルクスワーゲン 新型ゴルフの車両価格は、直列3気筒 1リッターターボエンジンを搭載するeTSI アクティブが312万5000円だ。先代型のTSIコンフォートラインに比べると、約27万円値上げされた。マイルドハイブリッドの採用、安全装備の充実、デジタルコクピットプロなどの標準装着によって価格が上乗せされている。
購入時には安全装備がさらに充実するセットオプションの「テクノロジーパッケージ」を装着したい。オプション価格は20万9000円だが、対向車などの眩惑を抑えるLEDマトリックスヘッドライト、車庫入れなどの徐行時に衝突被害軽減ブレーキを作動させるパークディスタンスコントロール、ヘッドアップディスプレイなど10種類の安全装備が加わる。機能と価格のバランスを考えると買い得だ。
1.5リッターターボのeTSIを買うならリセールバリューの高さが期待される「Rライン」がオススメ
1.5リッターターボの車両価格は、eTSI スタイルが370万5000円、eTSI Rラインは375万5000円になる。先代型の1.4リッターターボを搭載するTSI ハイラインに比べると、eTSI スタイルは32万円ほど値上げされた。eTSI スタイルとeTSI Rラインの選択は、一般的には後者が買い得だ。
eTSI Rラインは5万円の上乗せで、ギヤ比を可変式にしたプログレッシブステアリング、専用スポーツサスペンション、トップスポーツシートなどが加わるからだ。数年後に売却する時も、eTSI Rラインが高値になる。なお1.5リッターターボを選ぶ時も「テクノロジーパッケージ」を装着したい。悩ましい選択! eTSIは1リッターか、それとも1.5リッターか!? ディーラーで比較試乗し慎重に決めるべきだ
そして、8代目フォルクスワーゲン 新型ゴルフの選択で最も悩むのが、1リッターターボと1.5リッターターボだろう。1.5リッターのeTSI スタイルは1リッターのeTSI アクティブに比べて58万円高いが、この内の約17万円は装備の違いによって埋まる。そうなるとターボエンジンの正味価格差は約41万円だ。1気筒/500ccの価格差としては金額が大きい。
つまり新型ゴルフでは、1リッターターボの価格を戦略的に安く抑えた。それでも前述の通りノイズや動力性能に差があるので、両方を乗り比べてから選択したい。
[筆者:渡辺 陽一郎(カーライフジャーナリスト)/撮影:茂呂 幸正・フォルクスワーゲングループジャパン]
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