新型ゴルフvsカローラ、実質50万円以上高いゴルフを買う理由は“高速性能”だけじゃなかった!? 新型ゴルフとトヨタ カローラをコスパと性能で比較
MōTA / 2021年6月28日 21時0分
2021年6月、フォルクスワーゲンの代表的モデル「ゴルフ」が8代目にフルモデルチェンジした。日本では様々なモデルがライバル車に相当するが、今回は同じくメーカーを代表するモデル「トヨタ カローラ」を取り上げたい。どちらも世界でトップを争う最量販ブランドだ。そんな2台を日本で比較したらどうなるだろうか。主にコスパと性能の面で徹底比較してみた!
世界中で売られる代表的モデル「ゴルフ」と「カローラ」は正真正銘のライバル関係にある
国内向けのトヨタ カローラは、グローバルで売られるモデルよりもサイズを抑えた日本特別仕様
現行型は海外仕様のトヨタ カローラとプラットフォームを共通化する3ナンバー車になったが、海外のカローラは、全幅が約1800mmとワイドでホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2700mmと長い。これでは日本のカローラとしてはボディが大きいから、全幅を1740mmに抑えた。ホイールベースも、セダン、ツーリング(ワゴン)ともに、5ドアハッチバックのスポーツと同じ2640mmにした。ゴルフの2620mmとほぼ同じ数値だ。
装備差を考えてもゴルフより55万円は割安なカローラ! しかし燃費はゴルフのほうが優れる
新型ゴルフの4グレードで最もお買い得なのは1リッターターボ「eTSI アクティブ」
ゴルフ eTSI アクティブに積まれるエンジンは直列3気筒 1リッターターボで、最高出力は110馬力(5500回転)、最大トルクは20.4kg-m(2000~3000回転)を発生させる。
ゴルフ eTSI アクティブの装備は、衝突被害軽減ブレーキ、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなどの先進運転支援機能、リヤビューカメラ、デジタルメータークラスターのデジタルコクピットプロ、液晶画面を備えたインフォテイメントシステム、16インチアルミホイールなど、充実した内容となる。
カローラセダンの中で最もお買い得なのは1.8リッター「W×B(ダブル バイ ビー)」
カローラセダン1.8 W×Bの最高出力は140馬力(6200回転)、最大トルクは17.3kg-m(3900回転)だから、ゴルフの1リッターターボに比べると、最高出力は30馬力上まわって最大トルクは3.1kg-m低い。差し引きすれば同等の性能だ。
カローラセダン 1.8 W×Bの装備は、衝突被害軽減ブレーキ、自動制御クルーズコントロールなどの運転支援機能、バイビームLEDヘッドランプ、自発光式オプティトロンメーター、7インチディスプレイオーディオ、17インチアルミホイールなどだ。専用通信機能も備わり、緊急時にSOSを発信したり、エアバッグが展開した時には、消防や警察に自動通報する機能も備わる。
意外!? カタログ燃費値は、カローラよりもゴルフのほうが優れる
その代わりトヨタ カローラセダン&ツーリングの1.8リッターエンジン(2ZE-FAE型)は、改良を加えたものの基本設計が古い。アイドリングストップも装着されず、コストを徹底的に安く抑えた。その結果、前述の割安感が実現されている。
カローラセダン1.8 W×Bのカタログ燃費値は14.6km/L(WLTCモード燃費)だ。ゴルフに1リッターターボを搭載したeTSI アクティブのカタログ燃費18.6km/Lに比べると、燃費数値は78%に留まる。カローラは、価格が安い代わりに燃費などに差が生じた。
もちろんカローラにはハイブリッドモデルもあるが、カローラセダン W×Bで比べると、43万4500円も高い275万円だ。カタログ燃費は一気に25.6km/Lへと向上するが、さきほどの装備差を除く55万円の差異も10万円少々に縮まってしまう。
トヨタの本格的なハイブリッドシステムに比べれば、新型ゴルフのeTSIの燃費への寄与率は少ないが、その分コストを抑えた。
確かに新型ゴルフの1リッターターボは高効率だが、カローラのノンターボ1.8リッターエンジンの魅力も捨てがたい
自然な運転感覚で乗りやすいカローラの1.8リッターに対し、3気筒特有のノイズなどが気になる新型ゴルフの1リッターターボ
ゴルフの1リッターターボは、低回転域ではマイルドハイブリッドのモーターが駆動力を支援する。滑らかな発進が可能だが、その後に登坂路などでアクセルペダルを踏み増すと、3気筒特有のノイズが響きやすい。平坦路の巡航は快適で、実用回転域の駆動力にも余裕を感じるが、エンジンの負荷が増えると3気筒特有の粗さも目立つ。
動力性能と燃費を競えば、ゴルフの1リッターターボが勝るが、自然な運転感覚という意味ではカローラの1.8リッターエンジンにもメリットがある。
走行安定性は両車とも高レベルだが、運転の楽しさや高速域での直進性を得られるのはゴルフのほうだ
両車で異なるのは、カーブの曲がりやすさだ。ゴルフは、カローラセダンに比べるとクルマの向きを内側に向けやすい。峠道などでは運転しやすく感じる。高速時の直進安定性も良い。
カローラセダンもW×Bについては、相応に良く曲がってスポーティだが、乗り心地が硬い。危険回避を含めた走行安定性と乗り心地のバランスは、ゴルフが優れている。この点が先に述べたゴルフが55万円ほど割高になることで得られたメリットだ。
室内、特に後席の広さはフォルクスワーゲン ゴルフが圧倒的に有利だ
意外なことに小回り性能もゴルフのほうが優秀だった
フォルクスワーゲン 新型ゴルフの全長が4295mm、全幅は1790mmで、全高は1475mmになる。トヨタ カローラセダンは、全長4495mm、全幅1745mm、全高1435mmだ。
カローラは車体の後ろに独立したトランクボックスを持つセダン形状のため、全長はハッチバック型のゴルフよりも200mm長いが、全幅は45mm狭い。狭い道のスレ違いなどではカローラセダンが若干有利だ。
いっぽう最小回転半径は、カローラセダンで売れ筋になるSグレードとW×Bは5.3mだが、ゴルフは5.1mだ。実は小回り性能はゴルフが優れる。
後方視界は同程度だ。新型ゴルフは水平基調で側面の視界は良いが、ボディ後端のピラー(柱)は太く、斜め後方が見にくく感じる。
後席のひざ先、頭上空間ともに、握りこぶし半分ほどゴルフのほうが広い
ただしゴルフの後席は、座面の前側を大きく持ち上げた。長身の同乗者が座る時は、大腿部がしっかりと支えられて快適だが、小柄な乗員が座ると圧迫感が生じることもある。機能的には一長一短だ。後席を多用するユーザーはしっかり販売店の展示車両で確認して欲しい。
安全装備と先進運転支援機能も、それぞれに違いはあるが、大きな優劣はない。
カローラではなく、新型ゴルフを選ぶ理由は高速走行時の性能差だけじゃない!
ここまで述べてきたように、主に高速時を含めた走行安定性、操舵に対する反応の正確性、乗り心地、後席の快適性、燃費性能になる。
従って高速道路を使って長距離を移動したり、後席に同乗者を座らせて移動する機会の多いユーザーでは、ゴルフのメリットが際立つ。逆に高速道路はあまり使わず、2名以内の乗車で街中を多く走る用途では、カローラセダンの割安感が注目される。ゴルフとカローラセダンは、使い方に応じて選びたい。
[筆者:渡辺 陽一郎(カーライフジャーナリスト)/撮影:茂呂 幸正・和田 清志・島村 栄二・フォルクスワーゲングループジャパン・TOYOTA]
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