2022年登場の新型エクストレイルはVCターボと新世代e-POWERを搭載し、低燃費かつ高性能なクルマに! VCターボ車の価格は330万円台から
MōTA / 2021年7月25日 15時0分
日産が新開発した直列3気筒 1.5リッターVCターボエンジンを搭載した新型エクストレイルのプロトタイプ車両に試乗した。2022年早々に国内デビュー予定の新型エクストレイルでは、このVCターボに日産独自のハイブリッドシステム“e-POWER(イーパワー)”が組み合わされることが明らかになった。カーライフジャーナリストの渡辺 陽一郎氏が、新世代VCターボ+e-POWER技術の詳細と、国内向け新型エクストレイルの価格についてレポートする。
高効率で低燃費! 日産が世界に先駆け実用化させた理想の新技術「VCターボ」
人気の高いミドルサイズSUVの日産 エクストレイルは、2022年の2~3月にフルモデルチェンジを行う模様だ。そのベースは2020年に北米で発売された新型ローグ、あるいは中国で発表された新型エクストレイルだ。4代目となる新型「エクストレイル」解説の前編では、新搭載される直列3気筒1.5リッター VCターボエンジンのプロトタイプ(試作車)による運転感覚などをお伝えした。日産の新技術であるVCターボでは、圧縮比を走行状態に応じて8:1から14:1まで変化させ、高い動力性能を得たり、低燃費運転を行うことが可能だ。高効率で低燃費という訳だ。
前回はその技術の詳細や試乗の印象などをお届けしたが、今回は新型エクストレイル解説の後編として、さらに新たな情報を盛り込みたい。
高効率・低燃費に発電できて、いざとなればハイパワーも発揮出来る二面性を持つVCターボエンジン
新世代e-POWERと組み合わされる新型VCターボエンジンは最も効率の良い回転領域の定速で発電
あらためて振り返りとなるが、日産の次期エクストレイルの注目点として挙げられるのが、新開発された直列3気筒1.5リッター VCターボエンジンである。そしてこのパワーユニットは、新しいハイブリッドのe-POWER(イーパワー)にも使われることが明らかになった。e-POWERと可変圧縮比ターボは、親和性が高いからだ。e-POWERは、2016年に登場した日産のコンパクトカー、先代ノートを皮切りに採用が始まった。エンジンは発電機の作動だけに使われ、ホイールを直接には駆動しない。ホイールを駆動するのはモーターだから、エンジンの回転は、基本的には速度の増減にかかわらず高効率な回転域を保てる。発電用エンジンだから、発電効率だけを追求して、燃料消費量を抑えられるわけだ。
そこで次期エクストレイルのe-POWERは機能をさらに進化させ「定点発電」を行うようにした。エンジンを最も効率の優れた一定の回転で作動させて、低燃費を追求する。
いざパワーが必要になった際には圧縮比を下げ、エンジンをフル稼働させる
ただし登坂路などでアクセルペダルを深く踏んだ時は、定点発電では電気の供給が間に合わない。エンジン回転を高めて、活発に発電する必要が生じる。そこでe-POWERに、圧縮比を変化させられるVCターボエンジンを組み合わせるわけだ。穏やかに巡航している時は、圧縮比を14:1の水準まで高めて、一定の回転数で回して定点発電を行う。燃費効率が追求されて燃料消費量を抑えられる。
登坂路などでモーターに十分な電気を供給したい時は、圧縮比を8:1の水準まで下げてターボも作動させ、タップリと燃料を使ってエンジンと発電機をフルに作動させる。
新型エクストレイルは新型ノートのようなe-POWER専用車にはならない!? RAV4やCX-5との競合を考えるとVCターボ単体搭載車も導入か
このように、高効率なVCターボエンジンとe-POWERを組み合わせることで、さまざまな走行状況に対応することが可能だ。その代わりコストは高くなるだろう。そこで次期エクストレイルの価格についても考えたい。コンパクトカーのノートでは、現行型のパワーユニットをe-POWERに絞り、ノーマルエンジンは廃止した。先代ノートでも販売総数の75%前後をハイブリッドが占めたからだ。それでもノーマルエンジンの約25%は失われるため、この補填も視野に入れて上級シリーズのノートオーラを追加した。
SUVクラスのハイブリッド比率は多くても4割! 新型エクストレイルをe-POWER専用車とするにはリスクが高過ぎる
しかしエクストレイルは、コンパクトカーのノートに比べて価格が高い。しかもSUVのハイブリッド比率は伸び悩み、ハリアーは約40%、RAV4は30%以下だ。新型エクストレイルをハイブリッドのe-POWERのみの設定にしたら、販売が低迷する心配がある。そこでe-POWERを装着しない直列3気筒1.5リッター・VCターボも用意すると見込まれる。直列3気筒1.5リッター VCターボの性能は、最高出力が204馬力(5600回転)、最大トルクは31.1kg-m(2800~4400回転)だから、自然吸気(ノンターボ)のノーマルエンジンであれば、2.5~3リッタークラスの水準だ。圧縮比の可変機能を装着して、実用燃費を1.8リッターノンターボエンジン(WLTCモード燃費は15~16km/L)と同等に抑えられることも考えると、価値判断の基準は、CX-5の直列4気筒 2.2リッタークリーンディーゼルターボ搭載車と同等と見て良いだろう。
新型エクストレイルを成功させるには、VCターボ車、e-POWER車共に割安感ある価格設定とする必要あり
VCターボ車の価格設定で目安にすべきライバルは「マツダ CX-5」のディーゼル車
燃費や性能に基づいた新型エクストレイルVCターボ車のライバル、マツダ CX-5 XD プロアクティブの価格は322万8500円、上級のXD Lパッケージは352万円(価格は共に2WD)だ。VCターボを搭載する次期エクストレイルも同程度と設定されるだろう。新型エクストレイルの直列3気筒 1.5リッター・VCターボを搭載する売れ筋グレードの価格は、335~340万円と見込まれる。現行型(3代目)日産 エクストレイルは、2WDの20Xiが316万1400円、上級の20Xi レザーエディションは335万9400円だから、メカニズムの上級化によって20万円前後の上乗せになる。
価格がそれ以上高まり、売れ筋グレードでも350万円に達すると、高級SUV「トヨタ ハリアー」の2リッターノーマルエンジン車と同じ価格帯に踏み込んでしまう。そうなると価格競争力の面で辛くなるから、売れ筋は340万円以下に抑えたいところだ。
余談だが、ホンダのCR-Vはそのあたりを完全に読み間違えた。割高な価格設定としたことが響き、販売に失敗している。
e-POWER車の価格基準は最大の宿敵「トヨタ RAV4」のハイブリッド
一方、VCターボ+e-POWERは、VCターボに比べて少なくとも30万円は値上げされるだろう。売れ筋グレードが365~370万円と見込まれる。現行エクストレイルのハイブリッドモデルに比べると、25万円前後は高い。ただし、トヨタ ハリアーのハイブリッドモデルの価格は、売れ筋のGで400万円。日産 新型エクストレイルと直接のライバルとなる「トヨタ RAV4」のハイブリッド Gは、4WDのみで402万9000円(仮に2WDがあれば約378万円と想定される)だから、この2車に比べると、エクストレイルe-POWERはVCターボを併用しても安く抑えられるだろう。このような価格設定で割安感を表現できれば、エクストレイルは再び人気を高めることが出来るはずだ。
ヒットの予感がする新型エクストレイル! ただし成否は価格設定にかかっている!
新型エクストレイルの水平基調の外観は、初代と2代目に似てシンプルで力強い印象があり、多くのユーザーに好まれるだろう。また車内は適度に広く、内装も上質だからファミリーカーとしても使いやすい。2022年初旬にも発売が期待される日産 新型エクストレイルは、価格設定で失敗さえしなければ、好調に売れることだろう。
[筆者:渡辺 陽一郎(カーライフジャーナリスト)/撮影:NISSAN・茂呂 幸正・MOTA編集部]
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