【ランクル300、ラングラー、ディフェンダー比較】先進装備や装備面を考えると新型ランドクルーザー300が一番割安だった
MōTA / 2021年8月10日 19時0分
「Jeep Wrangler Rubicon Soft Top(ジープ ラングラー ルビコン ソフトトップ)」(ボディカラー:サージグリーンC/C)[2021年7月24日(土)発売・限定100台] [photo:FCAジャパン]
トヨタの本格オフロード四輪駆動車「ランドクルーザー」(ランクル)が14年ぶりのフルモデルチェンジを実施した。国内には対抗しうるライバル車などいない新型ランドクルーザー300だが、輸入車には「ジープ ラングラー」や「ランドローバー ディフェンダー」など、対抗馬となる硬派な本格的モデルが存在している。四輪駆動車にも精通するカーライフジャーナリストの渡辺 陽一郎が、3台の違いや魅力などを徹底比較した!
英国の伝統的な本格オフローダー「ランドローバー ディフェンダー」はランクル300の数少ない対抗車だ
2021年8月2日にフルモデルチェンジしたトヨタ 新型ランドクルーザー(ランドクルーザー300)は、悪路向けの本格的なLサイズのオフロードSUVだ。かつては日産にも対抗車となる「サファリ」が存在したが、現在は海外専売車となった。したがって日本車には、直接のライバルとなるモデルが見当たらない。いっぽうで海外にも目を向けると、ランドクルーザー300に対抗しうる本格オフローダーはいくつか見受けられる。日本にも導入されている輸入車なら「ランドローバー ディフェンダー」と「ジープ ラングラー」が挙げられる。
パワーの面ではランクルに比べやや見劣るディフェンダーの2リッターガソリンターボ
ランドクルーザーの中間グレード「VX」(630万円・ガソリン車)を選んだ場合、ランドローバー ディフェンダーでは、5ドアのロングボディを備えた「110S」(692万円)が比較相手のグレードだ。搭載されるエンジンは、直列4気筒2リッターガソリンターボで、最高出力は300馬力、最大トルクは400Nmになる。ランドクルーザーのV6 3.5ガソリンツインターボ 415馬力/650Nmに比べると動力性能は低い。
ディフェンダーの2リッターディーゼルターボなら300ps/650Nmというモデルもあるが、そちらは110Sで754万円と60万円の価格差が生じる。
ベースモデルにこそディフェンダーの魅力が詰まっている
ランドローバー ディフェンダーは装備も全般的にシンプルだ。その代わりボディとシャシーの基本性能が本質的に悪路走破力を高めている。操舵感も舗装路では少し鈍く、悪路でメリットを感じさせる。機能や装備と価格の割安感ではランドクルーザーが勝り、水平基調のボディを含めて、悪路における走りやすさならディフェンダーという選択になる。
ややマニアックなグレードだが、ディフェンダーではベーシックな110(5ドアは619万円/3ドアのショートは551万円)も魅力的だ。安全装備は相応に備えながら、ホワイトのスチールホイールなど、内外装をシンプルに仕上げた。一般的な選択ではないが、悪路向けSUVの本質を感じさせる。
ランドクルーザーZXの20インチアルミホイールは、キラキラと輝くスーパークロームメタリック塗装だから悪路に入り込む気分になれないが、ディフェンダー110なら悪路も気兼ねなく走破できる。
ランクル、ジムニー、そしてジープ ラングラー! 今の時代だからこそ光る本格オフロード四駆の魅力
輸入コンパクトカーと同等の売れ行きを示す異例の人気ぶり
SUVの本質という意味で、人気を急上昇させたのがジープ ラングラーだ。2021年1~6月の輸入車登録台数ランキングを見ると7位に入った。6位はメルセデス・ベンツ Aクラス、8位はフォルクスワーゲン ポロだから、ジープラングラーは、コンパクトで割安な定番車種と同等に売られている。
人気を高めた背景には、SUVに対するニーズの変化がある。以前はジープならチェロキーのようなシティ派が売れ筋だったが、最近は国産SUVを含めて、ハリアーのような乗用車感覚の車種が圧倒的に増えた。
こうした都会派SUVには飽食気味な中、いわば原点回帰として、ランドクルーザーやジムニーのような悪路向けの本格的なオフロードSUVが好まれている。
他のブランドでは得られない“本物の四輪駆動車”の伝統が息づいている
そしてジープ ラングラーは、第二次世界大戦で活躍したミリタリージープの直系だから、悪路向けSUVの典型だ。原点回帰のニーズに沿って、伝統の四輪駆動車ブランドが好調に売れているという訳だ。価格がランドクルーザー VX(630万円)に近いグレードは、5ドアボディにV型6気筒3.6リッターエンジンを搭載するジープ ラングラー アンリミテッド サハラ(618万円)だ。
最高出力は284馬力だから、動力性能はランドクルーザーに見劣りするが、4輪に車軸式サスペンションを装着する。悪路を力強く進むイメージが強い。装備もランドクルーザーには負けるが、運転支援機能なども含めて、ひと通りは充実している。ジープ ラングラーのフェンダーが張り出した外観は、まさにジープの伝統そのもので、ほかのブランドでは手に入らない。そこも魅力になる。
ランクルの本質は、困難な道路状況にも屈しない高い信頼性と買い得度にあり
以上のようにランドクルーザーは、国産SUVではキングサイズで価格も高いが、同価格帯の輸入ライバル車、ランドローバー ディフェンダーやジープ ラングラーに比べると意外に割安だ。ただし、トヨタ車のひとつの優位点でもあるストロングハイブリッドシステムは新型ランドクルーザー300でも採用されない。これは、悪路での信頼性が何よりも重視されるためだ。
ランドクルーザーは、立ち往生すると生命にも危険が及ぶような地域でも重宝されている。だから、機構が複雑なうえ、修理の対応が容易には出来ないハイブリッドシステムなどは積まれない。あくまでも、トヨタ車らしい高い信頼性と買い得度が魅力になる。
ランドクルーザーはクラウン以上に長い伝統に支えられる車種とあって、トヨタ車の本質を強く感じさせるクルマに仕上げられている。
[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:TOYOTA・FCAジャパン・ジャガー・ランドローバー・ジャパン]
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