メルセデス・ベンツ 新型EQSはフル充電で780km走行可! 注目は巨大モニター抜群の操作性と全長5m超のサイズを感じさせない運転のしやすさにあった
MōTA / 2021年8月16日 19時0分
メルセデス・ベンツはこのところ電気自動車を積極的に投入している。ミドルサイズSUVのEQCやコンパクトSUVのEQAといったモデルたちである。今回ご紹介するのは、これまでのSUVではなく、メルセデスが得意とするセダンタイプの新型EQSである。しかも専用プラットフォームの採用や、全3つの巨大モニターを組み合わせた内装など、注目ポイントは盛りだくさんである。今回はドイツでジャーナリスト活動をしていた経験のある竹花寿実氏がその実力を検証する。結論から言えば、Sクラスを超える乗り心地や内装の使い勝手などはピカイチであった。
新型EQSの試乗会をスイスで開催
2021年4月に上海オートショーでワールドプレミアとなった、メルセデス・ベンツの新型BEV(バッテリーEV)であるEQS。こちらの国際試乗会が、スイス チューリッヒで開催された。
ここ1年半ほどは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う渡航制限のため海外取材がストップしていたが、ワクチン摂取率向上により状況が改善し、ようやく現地で取材するチャンスが巡ってきた。
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新型EQSはSクラスの派生モデルではない! 専用のプラットフォーム採用で電気自動車に相応しいパッケージング
EQCやEQAは、GLCやGLAをベースにした電気自動車だが、EQSはSクラスをベースに開発されたモデルではないのである。
EQSは新開発の電気自動車向けモジュラーアーキテクチャー「MB.EA」を採用している。
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専用開発プラットフォームのおかげでバッテリー搭載位置などを最適化
メルセデスが拘ったのは、まさにここである。内燃機関モデルも搭載できる既存のプラットフォームをベースにしていては、バッテリーや電気モーターの搭載方法や、パッケージング、軽量化、衝突安全性、エアロダイナミクスなどをBEVに最適化することができない。
だがBEV専用の車体を用いれば、これらを内燃機関モデルの設計に引っ張られずに総合的に解決する事ができ、BEVとして理想的なモデルを生み出すことが可能になるのだ。
フル充電で780km走行可能! 量産車随一の空理機性能が自慢
WLTPで最大780kmという航続距離は、まさに専用プラットフォーム「MB.EA」採用の賜物である。
電気モーターやリダクションギア、デフをひとまとめにした電動パワートレイン「eATS」を車体前後にコンパクトに搭載し、107.8kWhもの大容量リチウムイオンバッテリーをフロア下に配置。
車両重量も大量のバッテリーを積みながら2.5トン前後に抑え、長い航続距離を手に入れたのである。
日本市場でも急速充電器を展開予定! たった15分の充電で300km走行可能
大容量バッテリーは、充電に時間がかかるという問題がついて回るが、EQSは最大200kWの急速充電器に対応。わずか15分間で300km走行分の充電が可能だ。
日本ではCOMBO方式ではなくCHAdeMOとなるため、現時点では最大150kWの急速充電器しかない。だが、メルセデス・ベンツは年内に国内200か所以上の販売拠点に急速充電器を用意する予定だそうなので、外出先でも特に不便はなさそうである。
もちろん最大22kWの家庭用ウォールボックス(国内では出力が抑えられる可能性あり)でも充電できる。
新型EQSの内装はまるで巨大タブレット! アップデートでアプリ追加も可能
操作性やレスポンスも文句なし! EQS買うならオプションでMBUXハイパースクリーンの装着を
最上級の素材を惜しげなく使ったインテリアの仕立ても、まさにSクラスである。
だがインパネ全面がガラスで覆われた、MBUXハイパースクリーン(オプション)が、強烈なハイテク感を放つ点がSクラスと大きく異なる。
ドライバー正面の12.3インチTFTディスプレイと、中央の17.7インチOLEDタッチディスプレイ、助手席正面の12.3インチOLEDタッチディスプレイを1枚のゴリラガラスで覆ったMBUXハイパースクリーンは、MBUXのシステム自体も新しいものとなっている。
助手席モニターに注目! ドライバーが覗き込むと表示されない仕掛けも
助手席正面のディスプレイは、助手席に乗員がいるときだけ機能し、ドライバーがのぞき込むと画面が暗くなる機能も備わり安全面にも配慮されている。世界の自動車メーカーは、今後このMBUXハイパースクリーンをインフォテインメントシステムのベンチマークとすることになりそうである。
乗り心地は最高級サルーンのSクラス超え! 後輪操舵機能で小回り性能も十分
スタートボタンを押してシフトセレクターをDレンジに入れ、アクセルペダルを踏み込むと、動き出しはゆっくりだが、とても軽くクルマが前へ転がり始める。低速域の振る舞いと乗り心地は、まさにSクラスそのものだ。
購入後に後輪操舵の舵角をアップデートすることも
ホイールベースが3210mmもあるので、取り回しを気にしていたが、最大で10度(標準仕様は4.5度)も後輪がステアし、最小回転直径が10.9m(標準仕様は11.9m)となるリアアクスルステアリングのおかげで、全く気にならなかった。ちなみにリアアクスルステアリングは、購入後でもOTAで10度に変更する事が可能だ。
アウトバーンでは、Cd値0.20のエアロダイナミクスを体感。EQSはSクラスと同様に、ボディ骨格に発泡素材を充填するなどのノイズ対策が施されているが、さらに優れた空力性能のおかげで、風切り音が極めて小さく、かつて経験した事がない静寂な移動空間を味わった。
Sクラスと基本設計を共にする足回りとロングホイールベースによる乗り心地も、この上なく上質だ。
新型EQSには全4種の走行モードを装備! 走りはまさにSクラスの電気自動車版
アルプスのワインディングロードでは、予想以上にダイナミックな走りが楽しめた。EQSは、デフォルトの「コンフォート」のほか、「スポーツ」と「ECO」、「インディビジュアル」のドライブモードが用意されている。
コンフォートは走りと快適性が上手くバランスしていて、デイリーユースはこのままで十分といった印象。ECOは取り立てて遅いわけではないが、加速が若干もたつく感覚がある。
一方スポーツを選択すると、245kW(333PS)の最高出力と568Nmの最大トルクがフルに発揮され、意外なほどスポーティな走りを披露する。シフトパドルで「D+」、「D」、「D-」の3段階に調整出来る回生ブレーキを駆使すれば、なかなかダイナミックな走りが楽しめる。
ハンドリングは、一貫して弱アンダーステアで、とても正確に狙い通りの走行ラインをトレースできる。リアアクスルステアリングの制御も違和感はない。
ステアリングフィールも、全く雑味がなくしっとり滑らかで、Sクラスと基本的なテイストは共通する。またBEVらしく低速域からの加速がとても力強いので、車重が2480kgもある事を忘れてしまうほど身のこなしが軽く感じた。
日本市場には2022年投入! 自動運転レベル3にも対応する見込み
MBUXハイパースクリーンはとても出来が良く、来年にはドイツ市場を皮切りにレベル3の自動運転にも対応する。BEVを所有できる環境にいるならば、EQSという選択は大いにアリだ。ちなみにEQSは、ヨーロッパ市場では2021年内、日本市場には2022年秋に導入される予定である。
【筆者:竹花 寿実】
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