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日産 キックス e-POWERがデビュー後1年経過! ウリはヤリスクロスやヴェゼルに比べ爽快な走りの性能と広い室内だ

MōTA / 2021年8月20日 22時0分

日産 キックス e-POWER [Photo:NISSAN]

日産 新型キックス(KICKS e-POWER)が2020年6月30日に日本で発売されて、早くも1年が過ぎた。キックスは、従来あったジュークに代わる、全く新しいコンパクトサイズのクロスオーバーSUV。タイの日産工場で生産される輸入車である。のちに登場したライバルのトヨタ 新型ヤリスクロスやホンダ 新型ヴェゼルに比べ、キックスの優位点はどこだろうか。ここで改めて検証してみよう。

日産 新型キックス

全車ハイブリッドのみという特徴を持つ日産のコンパクトSUV「キックス」

2020年6月に行われた新型キックス発表会の模様

日産 キックスで特筆すべき特徴は、純粋なエンジン車を用意せずに全車をハイブリッドカーとしたことだ。海外向けにはガソリン車もあるので、これは「用意できない」というよりは「用意しない」というイメージ戦略的な意味合いが強いと考えるのが妥当。とはいえ人気車種の「トヨタ アクア」も10年近く前の登場時からハイブリッド専用車なのだから、今さら声高に叫ぶことではないかもしれない。

デビュー後1年、輸入車ゆえの波はあるものの一定の人気をキープし続ける

日産 キックス e-POWER 販売推移[2020年6月~2021年7月]

まずは、日産 キックスの販売台数をグラフで確認してみよう。2020年の7月や8月は、デビュー直後にもかかわらず販売台数が少ないが、これはコロナ禍に関連した工場稼働の制約や部品供給の遅れなどの影響。受注にしっかり対応できていなかったのだ。

その後増産態勢が敷かれ、9月以降はボリュームが増えていることからも、販売初期は好調なスタートダッシュを決めたことがわかる。

今年2021年4月以降は台数的には落ち着いた状況だが、とはいえ2021年7月の新車販売ランキング(登録車)では21位につけているので、一定の人気をキープしていると判断していいだろう。

キックス最大のライバル「トヨタ ヤリスクロス」「ホンダ ヴェゼル」に比べ広い荷室とゆとりの後席が自慢

トヨタ ヤリスクロス, ホンダ ヴェゼル

トヨタ ヤリスクロス, ホンダ ヴェゼル

それにしても、コンパクトクロスオーバーSUVを取り巻く環境はここ1年で大きく変わった。

キックス発売後の2020年8月には、そのライバルに相当する「トヨタ ヤリスクロス」がデビュー。2021年4月には、人気モデルである「ホンダ ヴェゼル」がフルモデルチェンジして2代目へ進化した。

ボディサイズで3車を比べてみると、全長が小さな順にヤリスクロス(4180mm)、キックス(4295mm)、ヴェゼル(4330mm)となる。ヤリスクロスはひとまわり小さいが、その背景にあるのは同門の「トヨタ C-HR」(4390mm)や、今後登場が噂されている「カローラクロス」(4460mm)との差を明確にするためと考えるのが自然だ。

ヤリスクロスやヴェゼルにはあるガソリン車は設定しないという割り切りの良さも

冒頭でも触れたように、ライバルに対するキックスの大きな特徴は、ハイブリッド専用車ということ。思い切った戦略に出たものである。確かにヤリスクロスもヴェゼルも、販売の大部分を占めるのはハイブリッドモデルだが、とはいえガソリン車のニーズを捨てるのは大きな決断に他ならない。

パッケージングはそれぞれ違いがある。まず後席スペース。もっとも足元が広いのはヴェゼルで、新型はさらに拡大された。キックスは次点。ただ、“ヴェゼルと比べれば狭い”というだけで、単独で見ると足元は呆れるほど広いし、頭上はヴェゼルよりもキックスのほうが余裕はある。

キックスの後席はライバル車に比べ頭上空間の広さが特徴, キックスの荷室はクラス最大423リットルの容量を誇る

キックスの後席はライバル車に比べ頭上空間の広さが特徴, キックスの荷室はクラス最大423リットルの容量を誇る

キックスでクラス最大を誇るのがラゲッジスペースだ。荷室容量は423リットル。デビュー時に先代ヴェゼル(390リットル)よりも広かったことでクラスナンバーワンとなったが、そのヴェゼルは新型になり、荷室奥行きが先代より狭くなっている(容量は非公表だが先代未満)。

後席や荷室の広さでいえば、ヤリスクロスにキックスやヴェゼルを超える部分はない。

キックスの弱点は「4WDがない」こと!

キックス e-POWERには4WD車の設定はないが、ガソリン車に比べ非常に繊細なモーター制御による雪上でのトラクションコントロールが特徴だ

いっぽうで、キックスにはウィークポイントもある。まずはスイッチなど一部の仕立ての質感が物足りないこと。このクラスは質感向上が著しいだけに、それは惜しい。

もうひとつは4WDがないことだ。降雪地域以外のユーザーにはほぼ関係ないのだが、4WDを選ぶのが当たり前の雪国の人にとってはかなりのウィークポイントとなる。

たしかにキックスのようなモーター駆動車はトラクションコントロールの制御が綿密で、氷の上のように滑る路面でもエンジン車よりも走りやすい。それは認める。しかしながら、やはり4WDにはかなわないのもまた事実だ。

新型ヴェゼルはハイブリッドでも(モーターではなく)機械的に後輪へトルクを送る4WDを用意。トラクション能力の高さをPRしている。

いっぽうヤリスクロスは後輪をモーター駆動式とし、滑りやすい状況でタイヤの空転を防ぐ滑りやすい道用の制御モード(このクラスのトヨタ車では初めて)を用意するなど、降雪地域のユーザーを獲得しようと力が入っている。

e-POWER特有の爽快な加速感はヤリスクロスやヴェゼルを圧倒する気持ち良さ

さて、ライバルが出そろったいま、日産 キックスをどう評価すべきか。

積極的に選ぶ理由はしっかりある、それは後席や荷室が広いパッケージングの良さだ。

荷物が増えがちなキャンプに出掛ける人などは、絶対的な荷室の広さが大切。コンパクトSUVのかなでも、荷室が広いモデルが欲しい人にはキックスを積極的にお勧めする。

日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER」

もうひとつは、パワートレインの爽快感だ。

日産が「e-POWER(イーパワー)」と呼ぶ、駆動力をすべてモーターで生み出すハイブリッドシステム(シリーズハイブリッド)は制御が巧みで、アクセルを踏み込んだ時のシャープで盛り上がる加速が持ち味。その気持ちよさは、ヴェゼルやヤリスクロスのハイブリッドでは味わえない。

ホンダ 新型ヴェゼルは仕組みが日産に近い(ホンダ式のほうが構造は複雑だ)が、アクセルを踏んだ時の心地よさは日産に及ばず。ヤリスクロスは、従来のトヨタ式ハイブリッドに比べると加速フィールかなり改善されているが、こちらもまたキックスに届かずだ。

さて、2021年7月の販売ランキングをみると、キックスの2828台に対して、ヴェゼルは7573台。そしてヤリスクロスは1万967台と圧倒的リード。この三角関係が今後、どう変化していくか興味深く見届けたい。

[筆者:工藤 貴宏/撮影:土屋 勇人・NISSAN]

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