GT-Rにシルビア、タイプR…90年代の国産名車が狙われている! 盗難後1~2時間で解体も!? 国産旧車盗難の実態を業者に訊いた[クルマ事件簿]
MōTA / 2021年8月31日 14時50分
近年、80年代後半から90年代に生産された国産スポーツカーの盗難が急増している。主たる理由は海外で日本製スポーツカーの人気が高まっていることにある。とくにスカイラインGT-Rなど、海外での正規販売がほとんどなく左ハンドル車も製造されなかった車種は、人気も価格もすさまじく高騰している。また、アメリカで販売されていたスープラやシビック、インテグラなどの車両であっても「真の日本車に乗りたい!」という熱狂的な日本車マニアにとって、右ハンドル車は憧れの存在なのである。
なぜ増えている!? 80~90年代国産名車たちの盗難
1980年代から90年代の日本車がなぜ、日本のファンが気安く手を出せないほどの価格に高騰してしまったのか?その発端はアメリカの「25年ルール」と呼ばれる制度にある。製造から25年経過するとFMVSSというアメリカの保安基準がすべて撤廃され、日本車だけではなくFMVSSに適合しないすべてのクルマがアメリカでの販売や登録が可能となる(一部の州には別途規制がある場合も)。
では、盗まれたクルマは「その後」どうなるのだろうか? 旧車ではない新しめのクルマを含めて紹介してみたい。「その後」は大きく分けると2つの方法で流通することになる。
盗難されたクルマのその後は2つの展開に分かれる
1.ほぼそのままの形で中古車として国内で流通(レクサス各車種、プリウス、メルセデス・ベンツなど比較的新しい車種)
2.解体して海外へ輸出、または国内でヤフオク!などのオークションやメルカリなどのフリマサイトに出品する(RX-7、シビックタイプR、同インテグラ、インプレッサ、80スープラ、シルビア等の国産旧車スポーツカーに多い)
さらにこれ以外に特殊な例として、スカイラインGT-R(R34)のように高額で取引されるクルマの場合は、アメリカで合法(製造年月から25年経過)となるタイミングまで保管しておく場合もある。
また、中東の国々で(存在しないはずの)左ハンドル仕様のR32スカイラインが多数走っているように、右ハンドルから換装される例も少なくない。
旧車盗難の実態! 海外流出のみならず、部品にバラされ国内のネットオークションへ出品される例も!?
上記で1、のパターンの多くは「リレーアタック」(家の玄関などに置かれたスマートキーから発信される微弱な電波を増幅させてクルマのロックを解除してエンジン始動する手口)で盗まれている。盗んだクルマはそのままでは流通できないので(盗難届が出されると車検証に盗難情報が記載される)、同じ車種の事故車両を入手しナンバープレートや車台番号を盗んだクルマに巧妙に移植して中古車市場に流す例も多い。 2.の事例の場合、スマートキーを持たない国産旧車スポーツカーなどがこのパターンとなる。車台番号やエンジン番号を消して履歴が分からないようにバラされて海外に密輸されることが多いが、昨年はコロナ感染拡大で(アメリカを除く)海外諸国に出るコンテナ船が止まっていた時期もあり、ヤフオク!やメルカリなどのフリマサイトを通じて国内で部品として販売される例も少なくなかった。
警察やネットオークション業者と協力し盗難手続きを行うも、証明は困難を極める
オーナーは盗難されたら直ちに警察で盗難手続きを行うが、一度ヤフオク!などに出品されると(オーナー自らが落札して買い戻したとしても)、それが盗まれたクルマの部品だと証明されるのは非常に困難だ。エンジン番号、車台番号、社外品サスペンションのシリアル番号などで確実に盗難されたクルマであることが証明されれば、ヤフオク!運営者により出品削除・出品者利用停止などの措置が行われる。オーナーが行う警察への盗難被害の相談に加えて、ヤフオク!運営者からも警察に通報して捜査が行われる道が開けてくる。一方で、出品する側は当然、それらの履歴が分からないようにしているため、現実は非常に厳しい。
旧車は数時間で解体される!? 衝撃の実態を解体業者に聞いた
盗難車目撃証言の数時間後、ネットオークションに“部品”として出展された衝撃の事例も!
ところで、国産旧車は盗まれてどれくらいで解体されるのだろうか?盗まれてすぐヤード(解体作業場)に運び込まれるパターンが主流だが、場所によっては防犯カメラやNシステム、目撃者から逃れるためにヤード近くの目立たないコインパーキング等で2-3日「寝かす」例もあるという。
昨年秋に東海地方で盗まれた80スープラは盗まれて数時間後に千葉県内で走行している確実な目撃情報があり、さらにその数時間後には早くもヤフオク!に部品として出品されていた。恐ろしいまでのスピード感である。
「旧車なら1時間から2時間でバラバラに解体出来ます」自動車解体業者に訊いた“解体”の実態
旧車の解体はどれくらいで完了するのか?関東地方で解体業を営む業者に聞いてみたところ…
「国産の90年代スポーツカーは解体が簡単ですよ。作業員4人で9時〜17時(1時間に1回10分休憩12時〜13時は昼休憩)で5台〜7台がバラせます。古いクルマはエアバッグがなく、電子デバイスなども複雑ではありませんから、早いものだと2-3人&1-2時間の作業で解体が完了します。」
「新しめのドイツ車などはエアバッグの数が多くて解体作業に時間がかかります。外車は工具の規格が違ったりしたりエアバッグの位置や量なども国産車とは違いますからね。」
「また、最近のクルマは車内を広くするために、人が座る部分以外はキツキツに作られてたり、特殊なボルトをつかってたりしています。これも解体に時間がかかる理由です。」
「ハイブリッドや電気自動車だとそのユニットをまず完全放電させないと感電したら大変なのでさらに時間かかりますね」
国産旧車のスポーツカーオーナーは今からでも万全の防犯対策を! 条件によっては車両保険に入ることも
国産旧車スポーツカーのオーナーは、防犯対策を怠らないことを心がけて欲しい。実際に盗まれた車両の防犯対策を調べると、「ドアロックだけ」という例も少なくない。もちろん、万全にしていても盗まれることはある。車庫やセキュリティ対策の条件によっては、旧車でも車両保険に入ることができるので、盗まれた後の対策を講じておくことも考えておくと良いだろう。
[筆者:加藤 久美子/撮影:加藤 博人・TOYOTA・NISSAN・Honda・SUBARU・Mazda]
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