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レクサス 初代LS(初代セルシオ)は世界のメーカーに影響を与えた傑作だった! 一体初代LSは何がスゴかったのか!?

MōTA / 2021年9月12日 15時30分

レクサス 初代LS

1989年に北米に投入されたレクサス 初代LS(当時の日本名トヨタ セルシオ)は言わずと知れた日本が誇る高級サルーンである。じつは初代LSは、北米のみならず世界中で大ヒットとなるだけでなく、メルセデス・ベンツをはじめとしたプレミアムブランド各社に大きな影響を与えた革命時的存在でもあったのだ。そこで今回は初代LSは一体何がすごかったのか!? そして世界に与えた影響を振り返ってみたい。結論から言えば、初代LSの存在がなかったら今の高級車市場は大きく変わっていたかもしれないのだった。

レクサス 初代LS

かつて初代LSは欧州プレミアムブランドに大影響を与えた革命児だった

2021年に日本導入が始まったメルセデス・ベンツ 新型Sクラスは高級車の王道となるモデルだ。それに加え、完成度も文句ないこともあり、都心では気候が暑くなった頃から目にする機会も順調に増えている。

レクサス LSの現行モデルはセダンというよりも4ドアクーペとなっており、ライバルであるSクラスや7シリーズとは少々異なるデザインとなっている

新型Sクラスの直接的なライバルとなる日本車は、レクサス LSである。ちなみにLSはトヨタ セルシオ時代も含めると現行モデルで5代目となる。

しかし、現行LSは4ドアクーペ的なコンセプトの分かりにくさに加え、クルマ自体も先代Sクラスに対しても見劣りするというのが率直な印象だ。

以上の経緯を考えながら1989年に登場した初代LSを振り返ると、「あのクルマはメルセデス・ベンツ SクラスやBMW 7シリーズといった世界の高級車に影響を与えた凄いクルマだった」ということを思い出し、ここでは初代LSの凄さを改めて解説していく。

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コスパのいい日本車が北米で大ヒット! その一方で北米ブランドの従業員は路頭に迷うことに……

初代LSの凄さを解説する前に、1980年代のアメリカに輸出される日本車を取り巻く背景としてあったのが、日本からの輸出台数制限である。

これは1970年代のオイルショック以降、コスパが高く、燃費もいい日本車はアメリカで大躍進した。

しかしアメリカで日本車が売れるようになれば、販売台数が落ち込んだためにアメリカビッグ3の従業員の多くが失業したのだった。もっともこの流れは当然で、当時のニュース映像には解雇されたアメリカビッグ3の元従業員がバットで日本車をメッタ打ちに破壊し、「いい気分だ」と言うシーンもあったくらいである。

その是正のため日本メーカーはホンダをパイオニアに1980年代から、現地生産を開始。今となっては当たり前であるが、アメリカでの雇用を創出しただけでなく、政治的な動きとして日本からの輸出台数制限も始まった。

日産の高級ブランド「インフィニティ」が送り出したのが初代Q45である。現在と同様に日本では同ブランドを展開しておらず、当時日産ディーラーで発売をしていた, Z32型フェアレディZは、これまでのデザインとは異なり、全く新しいデザインで投入された。こちらも北米で大ヒットとなった

日産の高級ブランド「インフィニティ」が送り出したのが初代Q45である。現在と同様に日本では同ブランドを展開しておらず、当時日産ディーラーで発売をしていた, Z32型フェアレディZは、これまでのデザインとは異なり、全く新しいデザインで投入された。こちらも北米で大ヒットとなった

このため日本メーカーは収益を考えると「日本から輸出するモデルは高額車にしたい」という方向となった。そのため平成初めに登場した初代セルシオ、インフィニティQ45、Z32型フェアレディZ、NSXはこういった背景も考慮の上、誕生したモデルでもある。

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ライバル車よりも安いうえに完成度はピカイチ! 当時の世界最高速度もマークしていた

話は変わって、クルマに限らず後発の商品、とくに高級品が実績ある既売の商品に必要な要素がある。それは「違う路線で勝負するか、同じ路線なら先発を圧倒的に上回る、その両方」と言われている。

レクサス 初代LSはオーソドックスな高級車に見えるが、当時のSクラスや7シリーズを圧倒的に上回っていた部分は静粛性、燃費と動力性能のバランス、クオリティなどが挙げられる。

気味が悪いほど静か!? 初代LSの静粛性は世界トップレベル

静粛性が最大の魅力であり、発進時や巡行時にもほとんど揺れがなかったほどの仕上がりであった

具体的にはそれぞれの要素を見ていこう。

まずは静粛性だ。源流主義と呼ばれる「エンジンや駆動系など、各部分が出す音を元からなくす、小さくする」という思想により、初代LSは「気味が悪いくらい静か」と言われるほど、静かなクルマだった。

初代LSは世界随一の空力性能や世界最高速度をマーク

そして燃費と動力性能のバランスだ。エンジンは4リッターV8が新開発され、このV8エンジン自体の動力性能と燃費は世界トップクラスだった。このV8エンジンも目標達成のため駆動系などと同様に精度(部品などのバラつき)はそれまでの日本車とは桁違いの小ささだった。

また、初代LSは源流主義により遮音材などをガンガン詰め込まなくとも静かなクルマになったため、比較的軽量に仕上がった。そして、空気抵抗の低減も徹底的に行われたため、低燃費と250km/hの最高速を両立した。

ちなみに当時250km/hの最高速は初代LSに近いエンジンを積むベンツ420SEやBMW735iでは達していなかった速さである。

初代LSのオーディオや先進装備満載の仕上がり

当時珍しかったオプティトロンメーターや今で言うプレミアムオーディオのような高級スピーカーも採用していた

そしてクオリティの高さである。初代LSはオーソドックスな中で全体的なクオリティが高いクルマだったが、その中でもエンジンを掛けると黒いメーター内から白いアナログ画面や針が浮き上がるオプティトロンメーターや、オーディオの素晴らしさに対する評価は特に高かった。

ライバル車よりも300万円も安い価格設定もヒットの秘訣

初代LSのひとクラス下のモデルであったメルセデス・ベンツ ミディアムクラスとほとんど同じ450万円であったために、バーゲンプライスであったのだ

当時トヨタがアメリカで売っていたモデルのフラッグシップはクレシーダ(当時のマークII輸出仕様)という時代に登場。

価格はアメリカでメルセデス・ベンツ 300SEやBMW 735iが約700万円のところ、初代LSはベンツミディアムクラス(現在のEクラス)やBMW 5シリーズ並の約450万円だったのだから、そのインパクトは強烈だった。

結果、初代LSはアメリカで大ヒットし、当時バブル期だった日本でも大人気となったのは当然だった。

ベンツにBMW、そしてジャガーも敵意剥き出し!? 似たクルマを続々投入するほどの影響

また、初代LSはインパクトの大きいモデルだっただけに、欧州車メーカーなど多くのモデルに影響を与えたものまた事実である。

メルセデス・ベンツは主にアメリカでの初代LS対抗のため、ミディアムクラスに4リッターV8エンジンを搭載した400Eを追加。そして初代LSの登場後に開発されたジャガーのV8エンジンは、開発スタッフが「初代LSに搭載されたトヨタのV8エンジンの影響を受けた」と公言するものだったのだ。

キャデラックまでもが日本専用設計のモデルを投入

アメリカ車が日本向けにウィンカー位置を日本向けに改良することが極めて異例である。現在日本で売られているモデルたちは北米と同じ左側ウィンカーとなっている

さらにはLSが2代目モデルになってからの話だが、日本で販売されたキャデラック セビルというモデルは日本でセルシオと勝負するために独自の仕様となっていたほど。具体的には、右ハンドル+右ウインカーとし、価格もセルシオと比べられる500万円台前半に抑えたのだった。

日本人の国民性によるものなのか、日本車は性能の追究や改善こそ上手いものの、世界に影響を与えるような新発想のものは少ないとよく言われる。しかしそんな中、初代LSが初代プリウス、日産GT-R、初代フェアレディZ、ホンダ NSX、マツダ ロードスターと並ぶ、世界に影響を与えた数少ない日本車だったことがよく分かると思う。

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初代LSの再起に期待! 新型LSはあっと驚く仕掛けを搭載すべし

LSは2000年登場の3代目モデルまで初代モデルの路線を磨き続けた。2006年登場の4代目モデルからは日本でもレクサス LSとなり、Sクラスや7シリーズとは表面的には同じでも、微妙に違った車格(価格も含め)を同等に上げ、2台などに真正面から勝負を挑んだ。

しかし、それ以来日本人にはレクサスブランドとなったせいもあるのか、LSは遠いクルマになった感や、存在感が薄れているのは否めない。

今後LSには現行モデルの改良に加え、次期モデルでは燃料電池車に移行するなど、再び初代モデルのようなインパクトや影響を与える高級車になってほしい!

【筆者:永田 恵一】

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