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意外!? ランドクルーザー300の新グレード「GR SPORT」はハードな外観イメージを裏切る“上質な乗り心地”だった[試乗&解説 後編]

MōTA / 2021年9月22日 11時50分

トヨタ 新型ランドクルーザー300[GR SPORT(ガソリン車)/7人乗り/ボディカラー:ダークレッドマイカメタリック]

トヨタは、14年ぶりにフルモデルチェンジしたランドクルーザーシリーズ最高峰モデル「ランドクルーザー300」に、新シリーズ“GR SPORT(ジーアール スポーツ)”を設定した。豪華で押し出し感の強い通常モデルとは異なり、メッキ類を排除した精悍なルックス。それゆえハードなオフロードスポーツモデルに映る「GR SPORT」だが、実際に試乗した印象は、良い意味でイメージを裏切ってくれた! 四駆専門誌の編集長経験も持つカーライフジャーナリスト、渡辺 陽一郎氏が、GR SPORTの詳細な試乗&解説をお届けする。

トヨタ 新型ランドクルーザー300[GR SPORT(ガソリン車)/7人乗り/ボディカラー:ダークレッドマイカメタリック]

新型ランドクルーザー300「GR SPORT」は最上級グレード「ZX」よりもむしろ乗り心地は快適だった

前編では新型ランドクルーザー300 GR SPORTの成り立ちや、通常モデルとの仕様の違いなどについて述べた。後編では、実際に乗ってみた印象などについて詳しく紹介していこう。

GR SPORTの18インチタイヤ, ZXグレードの20インチタイヤ

GR SPORTの18インチタイヤ, ZXグレードの20インチタイヤ

新型ランドクルーザー300 GR SPORTは、タイヤサイズも悪路向けだ。

2021年9月12日に試乗記を掲載したZXでは、20インチ(265/55R20)を標準装着しているが、GR SPORTは18インチ(265/65R18)になる。銘柄はダンロップ製 グラントレックAT23であった。

今回の試乗は舗装路で行ったが、走り始めて気付いたのは、乗り心地が20インチタイヤのZXに比べて快適なことだ。20インチタイヤは、ZXの試乗記で述べた通り、タイヤが路上を細かく跳ねるようなバタバタと粗い動きが気になった。

そこがGR SPORTでは、18インチタイヤと相まって、路上の細かなデコボコを伝えにくい。20インチとはサイドウォール(タイヤの側面)の造りが異なり、扁平率の違いによって空気の充填量も多い。サスペンションの設定も変更しているから、快適な乗り心地に仕上がった。

悪路向けにしなやかさを増した足回りと18インチタイヤ+E-KDSSの組み合わせで乗り心地が向上

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この乗り心地について、開発者は次のように述べた。

「新型ランドクルーザー300 GR SPORTは、海外ラリーのような用途を想定して開発された。激しい悪路を走るため、サスペンションをしなやかに動かしている。従って乗り心地もZXとは異なる。またGR SPORTの18インチタイヤは、VXやAXなどが装着する同サイズのタイヤと共通だ」。

ZXの20インチタイヤは、外観のカッコ良さも考慮され、乗り心地を損なっている面もある。その点でGR SPORTの18インチはバランスが良い。しかも前述の通りE-KDSSが採用され、走行安定性に支障がない時は、舗装路上でも電子制御によってスタビライザーをキャンセルする。これらの相乗効果により、いかにも悪路向けのSUVらしい、ゆったりした乗り心地を実現できた。

操舵感と走行安定性のバランスも通常モデルより良好! ディーゼルとの親和性も高い

走行安定性も良好だ。GR SPORTは18インチタイヤの装着もあり、20インチのZXに比べると、操舵に対する反応の仕方が少し鈍い。この適度な緩さは、車両重量が2500kgを超えるボディとのバランスも良く、乗り心地まで含めて滑らかにカーブを曲がることができた。

新型ランドクルーザー300 試乗車のエンジンはV型6気筒 3.5リッター ガソリンツインターボだったが、車両の性格と親和性が高いのは、V型6気筒3.3リッター ディーゼルツインターボのほうだろう。

ディーゼルモデルが実用回転域で発生する高い駆動力が、穏やかな操舵感と、悪路向けのSUVらしい柔軟なサスペンションの動きに合っているからだ。

ランドクルーザー300「GR SPORT」の価格は770万円~800万円と高価だが「ZX」よりも推奨度は高い

外観はシンプルだが、装備面ではZXグレードを凌ぐ充実ぶりを誇る「GR SPORT」

新型ランドクルーザー300 GR SPORTの価格は、ガソリンエンジンが770万円、ディーゼルは800万円になる。両エンジンともに、最上級グレードの「ZX」に比べさらに40万円高い。

GR SPORTとZXの装備を比べると、前者にはE-KDSSと前後のデフロックが標準装着され、サスペンションに専用のチューニングも施されている。外装も変更され、ホイールのサイズは20インチから18インチに下げた。

これらを差し引きすると、40万円の価格上昇は、買い得とはいえないが妥当な範囲に収まる。特にE-KDSSは、コストの掛かった専用装備になるからだ。

GR SPORTは、外観を見る限りは乗り心地の硬いスポーティグレードを連想させるが、実際は逆であった。

悪路の走破が目的だから、足まわりに優れた接地性が求められ、柔軟に伸縮させるから快適性も高い。タイヤサイズはZXの20インチに対して18インチだから、乗り心地ではさらに有利になっている。予算に余裕があるなら、GR SPORTの推奨度は高い。

ランクル300の納期、公式回答は「1年以上」だが、現段階では果たして何年かかるのかも不明だ

そこでトヨタの販売店に最新の納期を尋ねると、以下のように返答された。

「メーカーに注文は入れられるが、グレードを問わず、納期は分からない。メーカーの公式な発表では1年以上とされるが、少なくとも2年以上は要するだろう。お客様には、生産のメドが立ったら納期を伝えることになっている」。

新型ランドクルーザー300の購入予約者の中には、海外への輸出を目論む業者も少なくないとみられる。それだけ、高値でも良いから早く手に入れたいとする需要が世界にはあるということだ。そのためトヨタでは、先代からの乗り換え客などの優良顧客を守るため、新型ランドクルーザー300の購入する際に転売をしない趣旨の誓約書を求められる。

このような混乱も納期の延長に輪をかけているとみられる。

新型ランドクルーザー300シリーズの中でも魅力的なモデルだが、手放しでは推奨出来ない

新型ランドクルーザー300 GR SPORTの価格は、770~800万円に達するが、それ以上にユーザーは「納期の分からないクルマを待つ」という試練に耐えねばならない。GR SPORTの推奨度は高いと記したが、このままでは手放しにオススメすることもしづらい。

ランドクルーザーシリーズは特殊なフレーム構造で他モデルとの共有部品も少なく、通常の乗用車のようには大量生産が難しいクルマである。しかしメーカーは、少しでも納期の短縮に力を入れて欲しいところだ。

[筆者:渡辺陽一郎/撮影:島村 栄二・TOYOTA]

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