爆売れハリアーの弱点は“身内のライバル”にあり!? 人気SUV「トヨタ ハリアー」を脅かす高級ブランド「レクサス」新型NXの存在
MōTA / 2021年9月22日 17時30分
2020年6月にフルモデルチェンジしたトヨタ 新型ハリアー。コロナ禍の真っただ中でのデビューだったが、2021年上半期(1月~6月)だけで4万8271台(月平均8045台)を売り、販売ランキングでは堂々の5位にランクインする実力を誇る。そんな人気モデルのハリアーだが、盲点はないのだろうか。SUVのフルラインナップ体制化により、見事な補完関係を保つトヨタだが、LEXUS(レクサス)のニューモデルという意外なライバルによって、ハリアーの独自性がおびやかされるかもしれない。
初代ハリアーは“レクサス”の国内向けモデルとしてスタートしていた
トヨタのハリアーは、初代が1997年に登場。乗用車のプラットフォームをもとに誕生。北米などではトヨタの高級ブランド“レクサス”向けモデル「RX」として売られ、国内外共に大ヒット作となった。のちに世界的なブームとなるプレミアムSUVの市場を開拓した、いわばパイオニア的存在でもある。 3代目からは「レクサス RX」が北米市場を重視し大幅にサイズアップ。国内では2代目ハリアーを続投させたのち、2013年に日本専用車として3代目ハリアーが誕生した。2020年登場の現行型(4代目)では、北米の“トヨタ”ブランド向けモデル(北米名は「トヨタ ヴェンザ」)として輸出も始まっている。
RAV4などとプラットフォームを共有化しながらも、巧みなキャラクター設定によりそれぞれがヒット作に
現行型ハリアーが人気の理由は、絶妙なポジションと価格設定にある。ベースとなるプラットフォーム(車台)を共有化し、パワートレインのラインナップも2リッターガソリンと2.5リッターハイブリッドというまったく同じ設定の「RAV4」と「ハリアー」。
しかしRAV4が、悪路での高い走破性を想起させるタフな内外装デザインを採用し、アウトドアユーザーを中心に支持を集めるいっぽう、ハリアーは洗練されたセンスが感じられる都会的なデザインとし、キャラクターを明確化させた。ちなみに北米向けにはさらに全長5メーターの3列シートSUV「ハイランダー」という、もうひとつの兄弟車まで存在しているが、やはりRAV4ともハリアーとも異なるキャラクターに変身している。
トヨタ RAV4は274万3000円から402万9000円で、ハリアーの299万円から474万円という価格帯とバッティングする領域もあるが、巧みなすみ分けが功を奏し、おそらく両車で迷うユーザーはほとんどいないだろう。RAV4、ハリアーともに大ヒット作となっている。このように1カテゴリーに2タイプの異なるモデルを投入するのは他社ではなかなか難しい。多くのライバル車は1つのモデルで「RAV4」的なアウトドア路線と「ハリアー」的な高級路線を両立させることに苦心している状況にある。当面このトヨタの戦略を崩すことは難しいだろう。
ハリアーの上位版!? 「レクサス NX」が間もなくフルモデルチェンジ! しかも450万円台のモデルも誕生予定
しかし、意外なライバル車が身内から登場する。2021年秋に正式発売予定の「レクサス NX」だ。現行型のデビューは2014年。3代目でサイズを拡大しクラスアップを遂げた「レクサス RX」のポジションを補完するべく登場している。もともとハリアーともキャラクターは近かったが、ハリアーが先行してフルモデルチェンジを実施していたのだった。
現行型レクサス NXは、2リッターターボエンジン車「NX300」と、2.5リッターハイブリッド「NX300h」のラインナップ。最終モデルの価格は481万1000円から612万7000円と、ハリアーよりも高価な設定だった。
新型では、ハリアーやRAV4が採用した新開発のTNGA GA-Kプラットフォームを採用。パワートレインも刷新し、ハリアーにはない2.4リッターガソリンターボや、初のPHEV(プラグインハイブリッド)のほか、2.5リッターガソリンエンジン車などが新たに設定される。
従来型にはなかった“廉価”なNXも登場! 身内のライバルがハリアーの領域を攻めてきた!
レクサス 新型NXの価格はまだ正式発表されていないが、2.5リッター車は廉価な450万円台からと予想されており、ハリアーの上位モデルと価格帯もバッティングしてくる模様。RAV4とハリアーの関係のように、同じプラットフォームを用いながらも全く異なる車種を巧みに造り分けるトヨタ。ましてやレクサスという高級車ブランドのモデルだけに、新型NXの内外装品質は、ハリアーに対し明確に高められていることだろう。
「ちょっと予算をプラスすれば、あのレクサスのSUVが買える!」これは、特にハリアー上級グレードの購入を検討していたユーザーからすれば、なかなかグッと来るポイントとなるはず。順風満帆だったハリアーだが、思わぬ? 身内のライバル登場の影響を受けることが予想される。
それにしても、売れ行き好調なハリアーを脅かすのが、他社のライバル車ではなく自社銘柄という状況に、今のトヨタの強さを改めて実感させられる。他社の担当者もさぞや頭を抱えていることだろう…。
[筆者:MOTA(モータ)編集部 トクダ トオル/撮影:小林 岳夫・島村 栄二・茂呂 幸正・TOYOTA・LEXUS]
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