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人気のSUV市場、でも隙間はまだあった! 新型カローラクロスの巧妙過ぎるパッケージングと走りには驚きっぱなし![カローラクロス 試乗&解説]

MōTA / 2021年10月10日 12時0分

モータージャーナリスト 今井 優杏さんと、トヨタ 新型カローラクロス Z(ガソリン・2WD) [photo:MOTA編集部]

大小の新型SUVラインナップを矢継ぎ早に投入し続けるトヨタが”カローラ“の名を冠するコンパクトSUV「カローラクロス」を発売した。『そんなに出して需要はあるの??』と最初は疑問符だらけだったというモータージャーナリストの今井 優杏さん。しかしそんなカローラクロスを速攻試乗したところ、巧妙なパッケージングと走りの良さに心底驚いた!

モータージャーナリスト 今井 優杏さんと、トヨタ 新型カローラクロス Z(右:ガソリン・2WD/左:ハイブリッド・2WD) [photo:MOTA編集部]

とにかく豊富なトヨタのSUVラインナップ、そこにあえてカローラクロスを投入する意義とは

正直そんなにSUVばっかり出して、需要はあるのか? と思っていた。カローラクロスに乗る前は。

だってそう思ったって不思議じゃない。今やトヨタは世界のトレンドに倣い、とかくSUVとかクロスオーバー的な車種が豊富だ。そもそも車種バリエーションの多いメーカーであるからして、ヤリスがヤリスクロスになったりカローラがカローラクロスになったりする前から、ライズもC-HRもハリアーも、さらにRAV4も存在しちゃっていたんだから。

ライズ、ヤリスクロスから、C-HR、ハリアー、RAV4まで…豊富過ぎるトヨタのSUVだが

大人気のコンパクトSUV「トヨタ ヤリスクロス」,プレミアムSUVのパイオニア「トヨタ ハリアー」

大人気のコンパクトSUV「トヨタ ヤリスクロス」,プレミアムSUVのパイオニア「トヨタ ハリアー」

しかし、これらのラインアップをじっくりと観察すると、やはり人間の欲求の落とし所の穴というか、セグメントの隙間はたしかに存在している。

たとえば今でも大人気車種のライズはお手頃価格のワリに大きなボディサイズでお買い得感はあるけれど、いかんせん1.0リッターエンジンで遠出にはもう少しパワーが欲しい人もいるだろうし、もっと高級感が欲しい人もいるだろう。

ヤリスクロスはやっぱり小さいからもうちょっとラゲッジ容量や室内空間が欲しいという人もいる。C-HRはすごくカッコいいけれどやはり、後部座席が狭め。

飛び越えてハリアーは…これはちょっと高級すぎるしチャラすぎる…もとい(失礼)、ちょっぴり若向けな感じだから落ち着きが欲しい。そしてRAV4は本格的オフローダーすぎて所有に敷居が高いうえに、背だって実際に高くて取り回しが不安。値段も高いし。なんていう具合だ。

豊富なSUVラインナップ、しかしどれももうひとつしっくり来ない人のために誕生したカローラクロス

トヨタ 新型カローラクロス

そこにカローラクロスである。

巧い。実に巧い。クロスオーバーモデルでありながら、SUVと言うにはやや生真面目っぽい雰囲気を醸し出す、“線”を基調にしたデザインで優等生感もあるからファミリーユースにも向くし、実際に乗ってみれば後部座席の広さにも舌を巻く。

ラゲッジの広さもボディサイズから察する以上だったのだ。ああ、もうパッケージをチェックしただけで人気出そうなムードがムンムン。

さらに先に言っちゃうけど、実は走りもとても良かった。順に話していこう。

価格やサイズが接近する本格SUV「RAV4」と新型カローラクロスの最大の違いとは

ベースとなったのは、2019年のフルモデルチェンジで走りの質を大幅に向上させ高評価を得た「カローラ」シリーズ

豊富なラインナップを誇るカローラシリーズに新たに加わった「カローラクロス」

カローラクロスのベースとなっているのは言わずもがな、すでに発売されているカローラだ。グローバル車としての確固たる地位もあり、これまでのトヨタの屋台骨を支えたクルマである。

だから、2019年のフルモデルチェンジには相当なコストと工夫を注ぎ込んできた。その甲斐あって、今のカローラは従来のカローラのレベルを越える、凄まじい走りの味、ハンドリングの手応えを手に入れている。

今回のカローラクロスは、パワートレーンやアーキテクチャなど、ベースはカローラのものをそのまま流用している。しかし、クロスオーバーというボディを持つにあたり、走りや使いやすさへの変更ももちろんぬかりはない。

本格派のRAV4よりも、日常での丁度いい使いやすさを重視したカローラクロス

カローラクロスのフロントシート,乗降性に優れたリアシート

カローラクロスのフロントシート,乗降性に優れたリアシート

カローラベースであることで得た利点といえば、ドアなど乗降口の低さだ。本格派クロスカントリーモデルであるRAV4と比較すると、この乗り込み口、つまり足入れの低さはむしろ、都会中心で乗るユーザーには利点となるだろう。特に小さなお子様にとっては、この乗り降りのしやすさが決めテになるという人も多そうだ。

そう、カローラクロスは都会ですごく重宝がられるような仕様になっているのである。

日常での使い勝手も重視したカローラクロス、最低地上高は160mmだ,悪路の走破性も考慮した本格クロスカントリーSUV「トヨタ RAV4」の最低地上高は190~200mmを確保する

日常での使い勝手も重視したカローラクロス、最低地上高は160mmだ,悪路の走破性も考慮した本格クロスカントリーSUV「トヨタ RAV4」の最低地上高は190~200mmを確保する

実は価格をよく吟味していくと、カローラクロスのハイエンド側グレードであれば、RAV4にも手が届く価格帯となっている。

悩ましいことにRAV4もどう考えてもメッチャいいクルマだ。悪路走破性は抜群だし、上級機種らしい威厳に溢れている。スノースポーツやキャンプ、山登りなど、アウトドアを趣味にしているようなエクストリーム系パパママには、もうこれ以上ない選択肢だとは思う。しかし、繰り返すようだが街乗りであれば意外にもこのカローラクロスに軍配が上がりそうなのだ。

先述の乗り込みの良さも然り。そしてカローラ由来の優しいマイルドな乗り心地も、その理由として推したい。

ハイブリッドとガソリン1.8リッター、どちらの走りも好印象で悩ましい…

1.8リッターガソリンエンジン,1.8L+THS IIハイブリッド

1.8リッターガソリンエンジン,1.8L+THS IIハイブリッド

今回はガソリンエンジンとハイブリッド、両方の試乗が叶った。1.8リッターのガソリンエンジンモデルと、1.8リッターエンジン+モーターのハイブリッドであるリダクション機能付きのTHS II。双方、二駆だ。

試乗を終え、どちらにも言えるのが、パワートレーンの違いによっての“味”の差があまりないことだった。

軽快なハンドリングが印象的だった1.8ガソリンモデル

細かく言えばガソリンエンジンはとても軽快でハンドリングが楽しい。交差点を曲がったり、チョチョっとコンビニに入ったりするのでさえ、鼻先が機敏に反応してスポーティな楽しさに満ちている。

感激したのがこの1.8リッターガソリンエンジンの、繊細で滑らかな吹け上がりの良さ。欧州プレミアム勢のマイルドハイブリッドに引けを取らないくらいの、スッキリした走り出しを見せることだった。車体が大きくなることに対して、デファレンシャル比をひとつロー側にして促進感を補っていること、さらに車体全体の軽量化に尽力したことが、その理由として挙げられる。

圧倒的な低燃費、だけじゃない! 高級・重厚な走りが心地よいハイブリッド

ハイブリッドはやはり、高い静粛性から生み出される高級・重厚感が魅力だ。ガソリンエンジンモデルよりも重量がある分のモッタリ感をモーターのトルクで補う手法はすでにお馴染み。さらにこの重みが接地感と繋がって、がっちりと地面を掴むようなフィールを存分に味わうことが出来る。しかし、そんなに重厚なのに、メーター内の燃費表示は実に23km/Lに達していた。カタログ燃費の26.2km/Lには及ばずとも、普通の試乗、しかもなんなら全然エコドライブを心がけたりもせず、撮影のためにアイドリングしたり急に走らせたり、駐車場の中であっちこっちに頭を向けて移動させたりしていたりした、にもかかわらず、この数値! 正直、多少のアラなら目を瞑らされてしまうレベルの低燃費ではないか。

ガソリン・ハイブリッド共通の美点はハンドリング性能と乗り心地の高度な両立にある

熟成が進むTNGA GA-Cプラットフォーム, リアのトーションビーム式サスペンション

熟成が進むTNGA GA-Cプラットフォーム, リアのトーションビーム式サスペンション

…という双方の個性はありこそすれ、コーナリングでも意外なほどに傾きが少なく、きっちりと走行ラインを取って走ることの出来るオンザレール感覚は双方に健在だし、さらにそれほどにハンドリングがしっかりと固められているにも関わらず、サスペンションのアタリはどこまでも柔らかで、角を丸めてあるような感じなのだ。そう、ガソリン/ハイブリッドともに、足回りの印象がめちゃくちゃ似通っているのだ。

実は自動車として、これは難しいことではないかと私は考えている。なぜならば、同じクルマでもパワートレーンが異なるだけで全く別の個性を持ってしまった、という例のほうが、圧倒的に多いからである。

しかしカローラクロスは、ちゃんと“カローラクロス味”を貫いていた。なぜか。これを聞くと、開発陣から面白い答えが返ってきた。それが、『カローラクロスの隣には、常にC-HRを置いて開発を進めて来ました』というものだ。

評価軸となったのは、欧州でも定評のスーパーハンドリングマシーン「C-HR」だった!

トヨタ C-HR

トヨタにおいて、コンパクトSUVというセグメントの中でのC-HRの評価は非常に高い。私個人もはじめてC-HRにサーキット試乗したとき、慄(おのの)いたものだ。こんな技術を安価で然るはずのコンパクトクロスオーバーに搭載したことを恐ろしく思ったものだ。

しかし、同時にC-HRはハンドリングに振りすぎたクルマでもあったという。これを教訓に、リアを中心に入力を下げ、お尻に入るゴツゴツとした感触を伝えないよう苦心したという。

今回の新型カローラクロスのリアサスペンションはトーションビーム式(C-HRはダブルウィッシュボーン式)だが、これが新開発なのだという。その出来を「世に出ているトーションビームの中では最高級だと自負しています」と、そうはっきり言い切ってくれた。

さらに言うなら、そのサスペンションの機能を引き出すための、カローラ譲りの骨格もやはり、重要なのだそうだ。ボディがしっかりするからそれぞれの仕事をパーツごとに高い次元で発揮することが出来る。常にキャラの異なるC-HRを置いて開発することで、ブレのないゴールを目指せたのだという。

新型カローラクロスのイチオシはハイブリッドだが、価格も安く軽快な走りが魅力の1.8リッターガソリンも捨てがたい

というわけで、心がだいぶカローラクロスに傾いてきた諸兄に、じゃ、買うならガソリン/ハイブリッドどっちなのよ、という結論を申し上げたい。

ハイブリッドはやはり、圧倒的な燃費が魅力だ。実に現在、受注の9割がハイブリッドというくらいに人気があるそうだ。間違いじゃない。むしろ正解だ。

クルマ好きにオススメしたいのは…ガソリンモデルだ

しかし、敢えて言いたい!

ハンドリング好きならガソリンエンジンめっちゃ良いよ! と。

なによりこのエンジンフィール自体が「あれ?」ってくらいに気持ちいいし、軽やかな挙動がキャラにも合っている。スポーティなハンドリングを求めるなら断然コッチだ。しかもここだけの話、ヤリスクロスにチョイ足しくらいの価格で手に入る、コスパも最強。

さあ、今週末は是非カローラクロスに乗ってきて欲しい。派生車種と侮ることなかれ。単にカローラのボディをでっかくしただけでしょ、な〜んて言葉を後悔すること間違いなしだから!

[筆者:今井 優杏/撮影:茂呂 幸正・MOTA編集部・TOYOTA]

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