スバリストの聖地「STI Gallery」が営業再開! 新展示はクルマに乗るすべての人が楽しめる企画になっていた!
MōTA / 2021年10月19日 13時30分
富士重工業時代からSUBARUに至るまで、同社のモータースポーツ統括組織といえばSTIことスバルテクニカインターナショナル。STIの本拠が置かれているのは東京・三鷹である。 そしてSTI本社に併設されているSTI Gallery(エスティアイ ギャラリー)では輝かしいモータースポーツの歴史を感じることのできるファンにとって聖地ともいえる場所になっている。今回は新展示とともにSTI Galleryの魅力について、スバルの歴史にも造詣が深い自動車コラムニスト、山本 晋也氏が紹介する。
コロナ前は海外から訪れるファンもいるほど大盛況だったSTI Gallery
スバルの熱心なファンのことをスバリストなどと呼びますが、一時は海外からのスバリストも集まるなど、三鷹のSTI Galleryは非常に盛り上がっていました。残念ながら、新型コロナウイルスの影響もあって海外からの訪問客は減っているといいます。また、先日までは東京に緊急事態宣言が発出されていたこともあって一時休館となっていました。
そんなSTI Galleryですが、2021年10月2日(土)から営業再開しています。しかも、STI Galleryは、ただ休んでいるわけではありませんでした。緊急事態宣言に伴って休館している間にも、虎視眈々と同社の魅力を伝える特別展示の準備をしていました。
STIが考えるドライビングを感じられる特別展示を用意!
それが、新規企画展示第3弾【What's Driving?「ドライビングとはなんだ」展】です。
ちなみに、企画展示の第1弾は「STIを知る その1 黎明期 1988年-1998年」というもので、「六連星を世界一にする」という夢を実現させるため、同社を立ち上げたSTI初代社長・久世隆一郎氏の足跡を紹介するという内容でした。そして第2弾の「TRY & ERROR 創造の軌跡」という企画展示は、STI初の北米向けコンプリートカー「S209」の開発秘話や2018年東京オートサロンにて公開されたSUBARU VIZIV PERFORMANCE STI CONCEPTを展示するというものでした。
というわけで、これまでの企画展示はSTIへの理解を深めるというものでしたが、今度の【What's Driving?「ドライビングとはなんだ」展】は違います。趣味としてのドライビングがどのような要素から構成されているのかをSTI的に分析し、それが体感できる展示内容となっているのです。その意味ではスバリストでなくとも楽しめる企画といえます。
PlayStation4にFANATEC Podium racing wheel f1と4Kモニターを設置、『グランツーリスモSPORT』を用いたドライビングシミュレーターにおいてSTIの活動の核となっているNBR(ニュルブルクリンク24時間耐久レース)マシンのリアルな走りを体感するというのが企画展の目玉でしょう。
ブレーキやステアリングのフィーリングを実際のレースマシンに近づけているといいますが、たしかにブレーキは市販車のそれとは異なり、踏み込んで制動をコントロールするタイプで、レースの世界を疑似体験できるような味つけになっています。合わせて、シミュレーターのポジションはGT300のBRZに近いイメージでセッティングしているというこだわりぶりです。さらに2020 FIA GTCワールドツアーネイションズカップ シドニーで優勝経験を持つ宮園拓真選手が実際にSTI Galleryを訪れて、走行したときのデータがゴーストとして設定されているのは、ここだけで味わうことのできる特典です。
宮園選手のゴーストを追いかけることで、本当に速い走りを体感できるようになっているわけです。そのタイムはニュルブルクリンク24時間レースのコースで8分10秒という非常に速いタイムですから、ゴーストをずっと追いかけていられる方は少数派でしょうが、一定以上引き離されるとゴーストのポジションがリセットされ、目前に表れるので常にゴーストを参考にしてニュルブルクリンクを走ることができるようになっています。
STI製パーツの効果を体感できるゲームも用意
もうひとつ企画展に合わせて用意されたのが「ハンドリングマシンtS」です。
これはアクセルペダルとステアリングホイールの操作によって盤面を傾けることで、盤面に用意されたコースに沿ってボールを走らせるというゲームになっています。
非常に単純に見えますが、デフォルトではステアリング操作に対する反応がルーズになるよう設定されているので、思い通りにボールを転がすことはできません。ドライビングにおいてステアリングレスポンスの悪いクルマだとストレスが溜まるということを、わかりやすく感じさせてくれるのです。そして、レバーを切り替えてステアリングのレスポンスを向上させると、そうしたストレスがなくなり、コース通りにボールを転がすことができるようになります。
これは実際のクルマでいえば、フレキシブルタワーバーやドロースティフナーといったボディを引き締めるSTI製パーツをつけた状態に近いイメージということですが、なるほどチューニングというのはドライビングそのものを楽しくする方法のひとつであることが実感できる展示となっていました。
自分なりのドライビングを見つめ直す機会にも!
世界レベルの走りやステアリングレスポンスの重要性を体感した来場者は、それぞれの思いを記した紙を壁に貼っていくというのもユニークな趣向。STIスタッフによるドライビングへのメッセージも展示されていますから、人それぞれのドライビング論を見ながら、自分なりのドライビングを整理することができる、いい機会になるのではないでしょうか。
また、STI GalleryにはSTIやSUBARU車の歴史が書かれた様々な出版物が並べられた本棚が二か所用意されています。その蔵書を自由に手に取って読むことができるというのも、STI Galleryを訪れる楽しみといえるかもしれません。STIの歴史を肌で体感! 伝説のマシンたちが勢ぞろい
本当の目玉といえる常設展示は、STIの歴史を彩って来た伝説のマシンたちです。
取材時に展示されていたのは以下の6台で、中にはシートに座って記念写真を撮ることもできるという大サービスぶり。STIのレジェンドマシンを肌で感じられるのもSTI Galleryがファンにとって聖地たる所以です。
LEGACY RS 555 (1993 New Zealand)
STIのラリー活動において、初めてWRC世界ラリー選手権で勝利した記念すべきレガシィRSがきれいにレストアされて展示されています。ドライビングシートに座ることもできますが、その際はスタッフに声がけして許可を得てからにしましょう。
IMPREZA 22B STI version
WRCマシンのレプリカともいえるSTI初のコンプリートカー(限定400台)。車名の22Bは2.2Lターボエンジンを積んでいることに由来しています。ゴールドのBBS製アルミホイールには当時モノのピレリタイヤを履いた展示車両は、1998年の発売時からタイムスリップしたかのような状態です。
IMPREZA WRC 1998(1998 Italia)
インプレッサ2ドアをベースとした本物のWRCマシン、ゼッケン3は伝説のラリードライバーであるコリン・マクレーが操ったマシンであることを示しています。いまにも動き出しそうなコンディションで展示されているのは、さすがSTI Galleryといったところでしょうか。
ちなみに、1998年シーズンのコリン・マクレーはドライバーズランキングで3位、当時のチャンピオンは三菱ランサーエボリューションを駆ったトミ・マキネンでした。SUBARU WRX STI NBR Challenge 2016
スーパーGTと並んでSTIのモータースポーツ活動の柱となっているNBRマシンは2016年に走ったマシンが飾られています。この年のエピソードとして有名なのが、突然の雹に見舞われたときに他車との接触をカルロ・ヴァン・ダム選手が「神回避」したこと。
ぶつかっていたらリタイア確実だっただけに、その回避がクラス優勝につながったとも言われています。この展示車では神回避の際に擦れた跡も確認できます。IMPREZA WRC 2008
3代目インプレッサをベースにしたWRカー、貴重のプロトタイプが展示されています。この世代のインプレッサ・オーナー、WRXファンからすると憧れの一台です。かなり近づいて見ることもできますが、とくにリヤウイングのディテールをじっくりと観察しておきたいと感じるファンは少なくなさそうです。
SUBARU VIZIV PERFORMANCE STI CONCEPT
2018年の東京オートサロンで展示されたコンセプトカーもSTI Galleryに展示中です。先ごろティザーのはじまった新型WRXの方向性を示したショーモデルがVIZIV PERFORMANCEで、そのSTIバージョンともいえるものです。WRXのフルモデルチェンジを目前に控えて、コンセプトカーの狙いを感じるのもいいタイミングといえるでしょう。
来訪者がメッセージを書き込んだ丸柱もSTI Galleryの名物。STIの平岡社長の書き込みも見つけることができました。 ニュルブルクリンク北コースにSTIのスタッフや辰己総監督が見どころを書き込んだ展示もありました。スーパーGTやWRCなどで獲得した貴重なトロフィーも展示されています。
なお、STI Galleryが営業されているのは土曜日・日曜日のみで、営業時間は10時~17時。駐車場はないので、公共交通機関などを利用して訪れてください。
所在地:東京都三鷹市大沢3-9-6
【筆者・撮影:山本 晋也】
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