トヨタ 新型ランドクルーザー300の悪路走破性を“ランクルの聖地”でテスト! モーグル路で魅せたGRスポーツの接地性が尋常じゃないレベルだった
MōTA / 2021年10月29日 13時0分
2021年8月に発売を開始したばかりの最新四輪駆動車「トヨタ ランドクルーザー300」。その本領を発揮すべく、悪路での走行テストを実施した。試乗フィールドは、トヨタの開発部門も利用するという「さなげアドベンチャーフィールド」(愛知県豊田市)。自動車研究家の山本 シンヤ氏が、“ランクルの聖地”と呼ばれる本格オフロードコースで、新型ランドクルーザー300の走破性を思う存分試した!
悪路走破性・耐久・信頼! シンプルだからこそ難しい、ランドクルーザーシリーズが最重要視する3つの開発思想
ランドクルーザー(ランクル)と名乗る全てのモデルの開発思想は、世界中のあらゆる地域・道で使われることを想定し、最も厳しい基準を持ってクルマ作りを行なうことだ。そのポイントは極めてシンプルである。
1.道なき道でも自由に走れる
2.命・荷物を運ぶために壊れない
3.もし壊れても何とかして必ず帰ってくることができる事
言い換えれば「悪路走破性」、「耐久」、「信頼」の3つだ。実はこれ、全てのクルマ作りの基本中の基本となるが、歴代のランクルはそれを愚直に実現してきたからこそ、世界で絶大な信頼と支持を集めてきたと言えるだろう。
世界の様々な用途やニーズに合わせ進化をしてきたランクルシリーズは、大きく分けると3つ系統に分類される。
今回紹介する新型ランドクルーザー300(300系)は、北米を中心に四駆のレジャー需要に応じるためにヘビーデューティモデルの40系から派生した「ステーションワゴン系」の55系の末裔となるモデル。先代のランドクルーザー200(200系)から14年ぶりのフルモデルチェンジとなる。
ランクルの開発思想を実現させるため欠かせない3要素を保ったうえで、さらに高みを目指した新型ランドクルーザー300
ランクルを語る上で絶対に欠かせないキーワードは「悪路走破性」、「耐久」、「信頼」だが、それが故に他の部分に課題があったのも事実である。更に年々厳しさを増していく様々な規制対応も「ランクルだから……」では済ますことはできない。それらを全てクリアするために300系の開発陣が選んだ道は、「素性の刷新」だった。
300系はランクル伝統の「フレーム構造」と80系からの黄金比と言われる「2850mmのホイールベース」を継承しながら、TNGAに基づいたプラットフォーム、パワートレイン、そしてフラッグシップに見合う内外装デザインを含めて全てを刷新。もちろん、長年に渡る技術の組み合わせながら……だ。その一部をざっくり説明すると、車体(ボディ+フレーム)は200kgの軽量化、重量配分の適正化、サスペンションの配置の見直し、機能性を追求したエクステリア/インテリアなどクルマの根っことなる基本素性を大きく進化。
その上で、オフロード走行をサポートする制御アイテムや、オン/オフの走りを高次元でバランスさせるために前後スタビライザーを独立して電子制御する「E-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System)」(GRスポーツに標準装備)をはじめとする最新技術を投入。エンジンも同様だ。ガソリン車はレクサスLS譲りながらもランクルの用途に合わせて60%近くを専用設計したV6-3.5リッターツインターボ、ディーゼル車は新開発となるV6-3.3リッターツインターボを用意。どちらもランクル流のカーボンニュートラル実現のために開発された高効率な内燃機関だ。トランスミッションはどちらも10速ATを組み合わせる。
オンロード性能が格段に進化した新型ランドクルーザー300! 中でもGRスポーツのハンドリングに注目
オンロードではラダーフレームである事を感じさせない一体感のあるハンドリングと直進安定性、乗り心地の良さを、「ランクルだから」と言う言い訳なしのレベルで実現。言葉を選ばずに言えば、全てに遅れや緩さがあった200系とは隔世の感がある。ノーマルでも十分だが、新設定のGRスポーツは更に上のレベルを実現している。
ハンドリングは筆者がランクルらしさを感じる要素の1つだと思っている「心地よいダルさ」が抑えられ、よりダイレクト、よりレスポンシブ、よりコントローラブルなフットワーク系により、ノーマルよりもクルマがより小さく、より軽く、より一体感が増していた。
ランクルの本領はオフロードでこそ! 接地性の高さに加え、緻密さを増した電子制御がドライバーをサポート
しかし、ランクルの本当の実力はオフロードを走らせないと解らない。そこで今回“ランクルの聖地”と呼ばれる「さなげアドベンチャーフィールド」(愛知県豊田市)にある様々なオフロード路面を走らせてきた。今回走らせたコースは急こう配/コブセクション/岩石直登路/V字谷などで構成される「テクニカルコース」、急こう配、岩石路面のS字、沢登りなどで構成される「林間コース」の二つだ。
まずは比較のために先代のランドクルーザー200(200系)で走る。これだけ乗る限りは、巨体ながら難関を軽々クリアする様に「さすがランクル!!」と感心したが、新型ランドクルーザー300(300系)に乗り替えると評価は一転、「上には上がある」を実感した。
何が違うのか? 具体例を入れながら紹介していこう。
急こう配、こぶ路面、滑りやすい岩場でも! 全ての路面での安心感がけた外れに違っていた
大きな凸凹が存在する急こう配を下る際に、200系では頭が揺すられるほど動くのに対して、300系は「道が変わった?」と錯覚するくらい揺れが少ない上に、体に伝わるショックや路面からのキックバックも少ない。更に勾配の強い所は200系、300系共にクロールコントロールを使用した。200系も機能としては十分だが、300系のほうが速度調整やブレーキの掛け方が緻密なのだ。この辺りは制御の進化もあるが、基本素性の刷新による4輪の接地性向上が効いており、タイヤの性能をシッカリと使えるようになった証拠でもある。
コブセクションは、200系に採用されていた車高調整機構AHC(アクティブ・ハイト・コントロール)が採用されない300系は不利と思いきや、「こんなに伸び縮みするの?」と言うサスペンションストロークに加えて、緻密なアクティブトラクションコントロールの相乗効果で、大きなコブがちょっとした凸凹に思えてしまうくらい簡単に走破できた。 岩石路面は駆動力/サスペンション/ブレーキ油圧を統合制御するマルチテレインセレクトを「ロック」にして走行。正直「ここをクルマで行くの?」と言うような過酷な岩場ながら、クルマが終始安定しているのとスリップ検知→駆動力配分までのロスがほとんどないため、クルマに対する信頼度は200系とは雲泥の差。感覚的にはちょっと凹凸の多い急な坂道を上るくらいのイメージで走れてしまった。ちなみにクルマ側で最適制御を行なう「AUTO」でも普通に走れてしまった。
進化幅が大きい新型ランドクルーザー300だが、GRスポーツはオフロードでもさらに上を行く悪路走破性だった
ちなみにノーマルの新型ランドクルーザー300でも十分な性能を持つが、GRスポーツはそのレベルが1ランク上。そのひとつは、歴代最長のホイールアーティキュレーション(=タイヤの浮きづらさ)。足がより柔軟に伸びるので、ノーマルよりも接地性がより高く、どのような路面でもタイヤが掴む感覚は強いのだ。
これはスタビライザーをオンロードではロック(※コーナリングなどでロック、直進時にはフリーに切り替わる)、オフロードではフリーと自在に制御できるE-KDSSと、それに合わせて最適化された専用サスの効果だ。オン/オフ共に1ランク上の走りを見せるGRスポーツは、ランクルらしいスポーツバージョンと言えるだろう。
圧倒的な悪路走破性能を「誰でも」「安心して」「快適に」乗りこなせるのが新型ランドクルーザー300
そろそろ結論にいこう。新型ランドクルーザー300系の凄さは、200系を超える性能を、「誰でも」、「安心して」、「快適に」走る事ができると言う部分だ。実はオンロードを走った際に、20インチを履くZXはバネ下のバタつきと、コーナリング時に凹凸を超えるような状況の際にいくつか条件が重なるとリアタイヤが左右にズレるような感覚(音/振動対策でサイドウォールが柔らかい設定の日本向け専用のタイヤが悪さをしている)が気になった。だが、オフロードの走破性の高さを知ってしまうと、「許容範囲内だな」と思ってしまったくらいだ。
ポルシェやGT-Rもかなわない! ランドクルーザー300は世界最強の「マルチパフォーマンスカー」だった!
つまり、300系のオンロードとオフロードのバランスは非常に高い次元でバランスされている。そう思うと、まさに世界最強の「マルチパフォーマンスカー」に思えてきた。現在300系の納期が凄いと聞くが、納車された際にはオンロード主体のオーナーも是非一度オフロードを走ってみてほしい。
ちなみに「自分のクルマではちょっと……」という人もいると思うが、さなげアドベンチャーフィールドにはランドクルーザー300のレンタル車両も用意されている。
自分のクルマの本当の実力を知ると、もっとランクルが好きになると思う。
[筆者:山本 シンヤ/撮影:茂呂 幸正・島村 栄二・TOYOTA]
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