頼りすぎは厳禁! 便利過ぎるバックモニターの意外な落とし穴とは
MōTA / 2021年11月7日 17時0分
最近のクルマではほとんど標準装着されている「バックモニター」。これほど便利な装備もそうはない。バックモニターが登場するまではバック駐車など後方確認を「勘」に頼る部分が多く、ベテランドライバーでもバック駐車は緊張するものだった。 それがバックモニターで直接視認することができるようになったのだから、必須装備となるのも頷ける。しかし、バックモニターに頼りすぎではさまざまな問題が発生する。 今回はレーシングドライバーの中谷明彦さんにバックモニターの課題を解説してもらった。
カメラレンズが汚れていると使い物にはならない
バックモニターを活用するとさまざまなメリットがある。たとえば縦列駐車時などでは、後方車両とミリ単位まで寄せることができ、傍目には神業に見えるだろう。モニター画面に指標を映して、壁際でリヤハッチドアが開けられる位置を示す機能やハンドルの切り角に応じて内輪差なども確認しながら後退できるなど機能的で、乗用車に限らず、商用車やバス、トラックまで最優先で装着すべき装備と認知されている。
今や重要装備となったバックモニターだが、問題点や課題も残っている。まずカメラで映し出すため、カメラレンズが汚れていると見えなくなってしまう。クルマの後部は走行中の空気巻き込みで汚れやすく、雨天や降雪地域などではレンズのクリーニングを頻繁に行う必要がある。中には自動レンズクリーニング機構を備えていたり、格納式で汚れを防ぐ機能のものも登場しているが、多くのものはレンズが露出している。
レンズの種類によっても写り方に違いがある
またレンズの視野が問題になることもある。広角と狭角で切り替え可能なものが多くなっているが、広角だと魚眼レンズとなり距離感が掴みにくい。歩行者など画面の遠くに映っているように見えて、次の瞬間には直後に現れる。画面の端に小さく移動物が確認されたら通過するのを待つのが賢明だ。
そして夜間の視認性が極端に落ちること。赤外線カメラなら夜間でも鮮明に映し出すことができるが、一般的なカメラレンズでは暗くなり、バックライトがあたる部分しか映せない。もとは後方確認用に設置されたバックモニターだが、機能の向上に合わせてリヤクロストラフィックアラートや歩行者検知ソナーなどとの併設で機能性を向上させているが、油断は禁物なのだ。
中にはバックモニターの装着ありきで車体のデザインをし、後方視認性が極端に悪いスポーツカーやSUV、ミニバンなどの大型車も増えている。バックモニターに頼りすぎてドライバー自身が目で直接視認する癖が無くなってきていることにも警鐘を鳴らしておくべきだろう。
アラウンドビューモニターの実用性はまだ低い!
バックモニターの登場はまた、カメラの有効性を証明し、前後左右に4つのカメラを装着し四方を映し出して確認できる「マルチビューアラウンドモニター」などを登場させた。画像処理で画面を構成し、まるで外部から自車の周囲を見ているかのような仮想映像を見せるものも開発されてきている。
しかし、これらの実用性はまだまだ極めて低い。
車体の四つ角や間近の隙間などは映し出せず、結局ドライバーが自ら視認しなければならないものが多い。あげくに純粋なバックモニターとしての機能性が低下してしまっているものもあり本末転倒だ。エンジニアは奇をてらったものより実用性優先に開発を進めてもらいたいものだ。【筆者:中谷 明彦】
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