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王者N-BOXを抜いたスズキ ワゴンR! 軽自動車1位を獲得したのは新型ワゴンRスマイルの追加だけではなかった!?

MōTA / 2021年11月23日 17時0分

スズキ ワゴンRスマイル 試乗会

ここ10年近く、軽自動車でもっとも売れているのはホンダ N-BOXと言われ続けてきた。事実2011年の初代モデル、そして2代目となる現行モデルも首位を守ってきた大ヒットモデルである。だが、2021年10月の販売ランキングを見てみると、スズキ ワゴンRが首位に久々に輝いたのだ。これは新型ワゴンRスマイルが絶好調なセールスを記録していることもひとつの理由だが、ほかにも答えがあるという。一体今の軽自動車業界は何が起こっているのか!?

スズキ ワゴンRスマイル 試乗会

スズキ ワゴンRが軽自動車首位に! そして日産 ルークスも好調

2020年2月の発売以来、大ヒットとなっているヤリス。じつは販売台数はコンパクトsuvのヤリスクロスとGRヤリスを含んだ台数となっている

2021年10月の国内新車販売ランキングは、1位:トヨタ ヤリス(1万596台)、2位:スズキ ワゴンR(8808台)、3位:日産 ルークス(8696台)、4位:トヨタ アクア(7643台)、5位:ホンダ N-BOX(7442台)であった。ヤリス(ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリス)が国内販売の総合1位になるのは、いつもの通りだが、注目すべきは2021年10月にはスズキワゴンRが軽自動車の1位に返り咲いたことだ。

今や軽自動車の売れ筋モデルはN-BOXに代表されるスーパーハイトワゴンとなっており、ワゴンRが属するハイトワゴン市場は年々減少傾向にあったのだ

2014年12月までは、先代ワゴンRが軽自動車の販売1位になることもあったが、最近の軽自動車販売ランキングではN-BOXが一貫して1位だ。2位はスズキ スペーシア、3位はダイハツ タントのパターンが多く、いずれも全高が1700mmを超えるスーパーハイトワゴンになる。

そのためにワゴンRの売れ行きは、2021年1〜6月の平均では11位であった。10位の日産 デイズ、12位のホンダ N-WGNの間に挟まれていたのだ。それが同年9月には軽自動車の3位、10月には1位になっている。

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ワゴンRが首位になれたのは新型ワゴンRスマイルの追加が大きな理由のひとつ

2021年8月に発売された新型ワゴンRスマイル。ワゴンRをベースに後席にスライドドアを設置し、ハイトワゴン市場に一石を投じたモデルである

ワゴンRの販売ランキング順位が急浮上した一番の理由は、新型ワゴンRスマイルを設定したことだ。2021年8月に発表され、納車を伴う発売は9月であった。

全国軽自動車協会連合会が公表する車名別の届け出台数は、同じ車名が与えられていると、複数のタイプを合計して算出する。ダイハツ ムーヴキャンバスの届け出台数はムーヴに、スズキ アルトラパンはアルトに含まれ、新型ワゴンRスマイルの台数もワゴンRに含まれる。そのためにワゴンRの届け出台数は、新型ワゴンRスマイルの発売によって増えたわけだ。

新型ワゴンRスマイルとムーヴキャンバスはそれぞれ全体の半数以上を占める人気っぷり

ハイトワゴンにスライドドアを装着したモデルのパイオニア的存在はダイハツ ムーヴキャンバスである。こちらは2016年に登場後、本家ムーヴよりも好調なセールスを記録している

スズキはワゴンRスマイルのみの届け出台数を公表していないが、販売店によると「ワゴンR全体の50〜60%をスマイルが占める」という。ワゴンRスマイルのライバル車となるムーヴキャンバスも、ムーヴ全体に占める割合が50〜60%だから、両車とも同じような売り方になっている。

新型ワゴンRスマイルが好調に売られている理由は、ムーヴキャンバスと同様で、全高が1700mm以下のボディにスライドドアを組み合わせたからだ。軽自動車のユーザーには「スライドドアは欲しいが、N-BOXやスペーシアのような極端に背の高いボディはいらない」と考える人も多く、ムーヴキャンバスに続いて新型ワゴンRスマイルもヒット作となったのだ。

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ワゴンR首位奪還のワケはコロナ禍も理由!? スズキは部品調達による影響が比較的少なかった

それ以外の理由もある。最近はコロナ禍の影響を受けて、半導体やワイヤーハーネスなどのパーツ供給が滞りがちだ。その結果、軽自動車の届け出台数も、2021年10月は昨年同月に比べて33.2%減少した。

その中でスズキは23.5%のマイナスに収まり、ダイハツが45.2%、ホンダも49.9%減少したのに比べると、減り方が少ない。つまりスズキはコロナ禍による悪影響が少なく、しかも新型ワゴンRはスマイルの追加で対前年比を79.7%増やしたから、軽自動車の届け出台数1位になったのだ。

新型ワゴンRスマイルは「ハイトワゴンほどのサイズはいらないが、スライドドアは欲しい」というユーザーに見事ヒットした形だ

ちなみに今まで軽自動車市場で販売1位を独走してきたN-BOXは、対前年比がマイナス53.6%と大幅に減っている。2位のスペーシアも、ワゴンRスマイルと同じスズキ車ながら48.4%の減少だ。タントも63.6%も減り、新型ワゴンRスマイルのライバル車となるムーヴキャンバスを含んだムーヴも、68.1%減ってしまった。前年の30%少々しか売られていないということとなる。

このように他メーカーの軽自動車がコロナ禍で一様に売れ行きを激減させたから、痛手の少なかったワゴンR(ワゴンRスマイルを含む)が1位に浮上したわけだ。

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コロナ禍の影響が大きいのはダイハツ! 他メーカーの状況は!?

ダイハツはトヨタ同様にコロナ禍の影響が非常に大きいメーカーである。とくに東南アジアの部品工場の稼働停止などにより、クルマが生産しにくい状況が続いているのだ

今の状況をもっとも辛く受け止めているのがダイハツだ。軽自動車が中心のメーカーで、しかも小型/普通車の登録台数も70.1%の大幅なマイナスだった。そのために軽自動車+小型/普通車の総台数でも、対前年比が45.2%の大幅な減少になっている。それぞれのディーラーはどのように受け止めているのだろうか。

ダイハツの売れ筋モデル「タント」などの納車期間が長期化

ダイハツの販売店は「メーカーの生産は回復基調にあるが、それでもムーヴキャンバスの納期は2か月半から3か月を要する。タントなどほかの車種の納期も長く、お客様を長くお待たせして心苦しい」とコメントしている。

王者N-BOXは最大で半年も待つ可能性も

N-BOXは2020年12月に改良を実施しているが、フルモデルチェンジを前にもう一回大規模なマイナーチェンジを実施する見込みだ。おそらく先進装備装備の強化が図られると編集部は読んでいる

ホンダでは「N-BOXの納期は依然として長い。大半の仕様が3か月を要しており、2トーンのボディカラーになると半年まで延びる。N-BOXは人気車だから、納期が遅れると、ホンダ車全体の売れ行きに影響を与えてしまう」とコメントした。

好調に売られた新型ワゴンRスマイルも「2〜3か月を要する」とのことだから納期が短いわけではないが、人気の新型車だから届け出台数の上乗せ効果は大きい。

ホンダでは「N-BOXの納期が遅れて届け出台数は減ったが、受注台数は落ち込んでいない。今後は改良も控えている」というから、パーツの供給が元に戻れば売れ行きも回復するだろう。逆にいえばワゴンRの販売1位が長く続く可能性は下がるが、新型ワゴンRスマイルに好調に売れる素質があることは分かった。

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2021年はダイハツを抜いてスズキが軽自動車1位になる可能性も! ユーザーメリットもじつはデカかった

そして2021年1〜10月におけるメーカー別の軽自動車販売ランキングは、1位:ダイハツ(44万3601台)、2位:スズキ(42万8511台)であった。両社の差は1万5090台に縮まっているから、スズキが2021年の軽自動車販売1位を獲得できる可能性も強まった。

両社とも表向きには「大切なのはお客様の満足度と販売店の利益を守ることだから、もはや販売台数やシェアは追わない」というが、実際はそうもいかない。軽自動車は、全長、全幅、エンジン排気量が全車共通で、N-BOX/スペーシア/タント/ルークスを比べると、エアロパーツ装着車については外観や車内の広さも似ているからだ。

2021年度においてスズキが軽自動車ナンバー1に輝いた場合、さらなるセールス拡大となる可能性が大いに考えられる

そうなると軽自動車では、購入時にユーザーが選択に迷うことも多い。この時に「軽自動車の販売ナンバーワン」と宣伝されると、「そっちにしようかな」と判断されやすい。

従って軽自動車では、ほかのカテゴリー以上に「販売ナンバーワン」の称号が売れ行きを伸ばす。コロナ禍が落ち着けば、各メーカーともに売れ行きを挽回すべく、価格を抑えた特別仕様車を投入するなど工夫を凝らすだろう。軽自動車はますます買い得になるわけだ。

【筆者:渡辺 陽一郎】

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