フルモデルチェンジ間近! 安定した売れ行きで日産を支えてきた3代目エクストレイルの功績を振り返る
MōTA / 2021年11月28日 18時0分
日産のSUV「エクストレイル」のフルモデルチェンジは近い。アメリカでは、「ローグ」(エクストレイルの北米名)が2020年に登場しているし、今年2021年4月には上海モーターショーで中国向けの新型「エクストレイル」がお披露目されている。日本への上陸も、それほど待つことはないだろう。そこで、今回は、その前のモデル、つまり現行モデルを振り返ってみたい。どんなモデルで、どのような販売成績を残したのか。モータージャーナリストの鈴木 ケンイチがレポートする。
エクストレイルは日産の中でも重要なポジションに位置する世界戦略モデルだ
現行の「日産 エクストレイル」が登場したのは2013年12月であった。2000年に登場した初代、2007年の2代目、そして3代目モデルとしての誕生であった。エクストレイルは初代から2代目へと続く中で、デュアリスやキャシュカイ、ローグスポーツ、ローグなどの派生・兄弟モデルが生まれている。現在では、デュアリス/キャシュカイ/ローグスポーツは、エクストレイルよりも、ひとつ下の弟分のような存在になっている。そんな第3世代のエクストレイルの特徴は、日産とルノーが共同開発し、CMF(コモン・モジュール・ファミリー)プラットフォームを使っていること。日産の主力モデルとして世界190か国で販売される、まさにグローバルモデルだ。
コネクテッド機能や自動ブレーキなど、最新の運転支援システムに対応できるようになっているのも特徴だ。さらにミドルクラスのSUVでありながらも、3列シートの7人乗りを可能としている。幅広い市場ニーズにあわせて柔軟に対応できるよう、バランスよく各性能が高められたモデルと言えるだろう。
ハイブリッドや先進運転支援機能の追加など、地道な改良を重ね鮮度を保ってきた3代目エクストレイル
日本市場向けとしては、2013年12月に2リッターのガソリン・エンジンにCVTを組み合わせて登場。FFと4WDを用意し、運転支援の自動ブレーキ機能「エマージェンシーブレーキパッケージ」はグレードごとの設定とした。価格は約225~280万円であった。その後、2015年4月にハイブリッドを追加。これは2リッター・ガソリン・エンジンとモーターを2クラッチでつなぐ方式のもの。2.5リッターエンジン相当のパワーを実現。ハイブリッドモデルの価格は280~324万円であった。2017年のマイナーチェンジで内外装のデザインをリファイン。さらに高速道路でのステアリングアシスト付きのACCとなる運転支援システム「プロパイロット」を採用している。また、2019年1月には先進運転支援機能の機能向上、2020年1月にインテリジェント エマージェンシーブレーキのミリ波レーダー採用による性能向上やタンレザー仕様の追加、2020年10月に内外装の質感向上を図るなど、常にこまめに仕様向上を実施することで、商品性のフレッシュさを維持している。
およそ年間5万台ペースで安定的に売れ続けてきた国内のエクストレイル
では、そんな3代目エクストレイルの販売成績は、どうであったのか? 一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表した乗用車ブランド通称名別順位を見ると、年間の販売成績は以下のようになる。2013年 販売ランキング25位 2万8198台
2014年 販売ランキング13位 5万3736台
2015年 販売ランキング14位 5万8448台
2016年 販売ランキング13位 5万6151台
2017年 販売ランキング19位 4万9873台
2018年 販売ランキング20位 5万304台
2019年 販売ランキング24位 3万6505台
2020年 販売ランキング33位 2万280台
デビューから8年の間に、年間ベスト10に入ることはなく、最上位は13位だ。デビューの2013年は12月の1か月のみの数字ということを考えれば、2014年からが本番となる。その2014年から2018年まで、だいだい年間5万台レベルの販売を維持。2019年以降はジリジリと数字を落としているという状況だ。
この数字は、あまりよくないように思う人がいるかもしれない。しかし、それは間違いだ。この数字は、日産としては、なかなかの好成績と言えるだろう。
大ブームとなる前から着実にSUVの市場を開拓
まず、背景として、2010年代前半の国内市場は、まだ今ほどのSUVブームが到来していなかった。トヨタのRAV4もホンダのCR-Vも、まったく売れていなかったり、そもそも国内で売っていない時期であった。同じクラスとなるマツダのCX-5は、2012年に登場して話題を集めたけれど、その販売は年間3~4万台レベルで、販売成績はエクストレイルの方が上。同じく、スバルのフォレスターも2012年に新型になったけれど、年間販売は最高でも3万台レベルで、やっぱりエクストレイルが上。トヨタのC-HRは、瞬間的に年間12万台の大ヒットを記録したけれど、デビューは2016年のこと。ここあたりからSUVブームの気配が強まり、RAV4が2019年に再販売されたのだ。つまり、SUVブーム到来の前から、ライバルよりも、しっかりと売れていたのだ。3代目エクストレイルは、日産の国内市場もけん引する優秀なモデルだった
また、SUVとしてだけでなく、日産車ラインナップでもエクストレイルは日産の稼ぎ頭だった。日産で一番に売れているのはノートだが、それ以外のヒット車といえば、セレナ、そしてエクストレイルしかいないのだ。現行モデルでいえば2014年以来、常に日産車としてノート、セレナの次に数多く売れていたのがエクストレイルであったのだ。国内市場を支えた日産の3本の大黒柱のひとつとして大いに働いていたのだ。
ちなみに、この3代目エクストレイルの販売数字は、初代、2代目モデルよりも圧倒的に良い。初代モデルが登場した2000年代前半は、販売成績がベスト10しか記録が残っていないこともあって、初代エクストレイルはモデルライフを通じて、順位は常に圏外であった。2代目モデルのころは30位までの順位が残されているが、それでも最高順位は2009年の22位。年間3万台レベルであった。それに対して第3世代は5万台規模を5年間もキープしている。格段の差と言えるだろう。
3代目エクストレイルが国内でヒットした切実な理由とは
ヒットの理由は、クルマの出来の良さもあるだろう。しかしいっぽうで、日産ファンの受け皿になったという見方もできる。どういうことかというと、過去10年以上にわたって日産は日本市場向けのラインナップを減らしてきた。言ってしまえば、日産ファンが買えるクルマがどんどんと減っていた時代なのだ。そんな中で残されたのが、ノートであり、セレナ、そしてエクストレイルなのだ。日産ファンがミドルサイズの手ごろなクルマが欲しいとなると、現実問題としてエクストレイルしか選べない。それ以外は400万円以上のスカイラインしかないのだ。
そんな状況であるからこそ、SUVブーム到来前であってもエクストレイルは販売数を伸ばすことができたはずだ。
SUV人気がさらに拡大した今こそ、新型の早期導入に期待がかかる
そういう意味では、登場間近の新型は、さらなる飛躍が期待できる。なんといっても、今、日本国内はSUVブームのまっただ中。トヨタがRAV4をはじめ、ハリアー、ライズ、ヤリスクロス、カローラクロス、ランドクルーザーという新型車を投入。ホンダもヴェゼルが話題を集めている。ここに新型エクストレイルが登場すれば、さらにSUV市場は活性化するはず。それに合わせて新型エクストレイルの販売も伸びることだろう。一刻も早い新型エクストレイルの登場を期待したい。
[筆者:鈴木 ケンイチ]
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