日産の電動化戦略で「2026年の電動化は55%以上」「2028年の全固体電池実用化」を宣言! コンセプトカー「チルアウト」は2030年型アリアか!?
MōTA / 2021年12月2日 21時30分
日産自動車が電動化戦略「Nissan Ambition 2030」を発表した。世界的な自動車トレンドが電動化に向かっていることは明らかであり、そもそも電動化においてリードしていた日産が電動化を加速させるという宣言といえる戦略だ。 具体的には、2030年度までに15車種のEVを含めた23車種の電動車を導入し、ニッサン、インフィニティの両ブランドをあわせてグローバルに電動車比率50%以上を目指すというのが、この戦略の基本となっている。 この電動化戦略に合わせてコンセプトカーが紹介された。詳しく紹介しよう。
2030年までに23車種以上! EVとe-POWERを含めた電動化を加速させていく
電動化においてはEVとe-POWER(ハイブリッド)が二本柱となっているのは言うまでもない。もうすぐ市販の始まる新型アリアの生産を担う工場は、純粋なEVとエンジンで発電するe-POWERの混流生産を前提として作り込まれているほどだ。
さらにマーケット別の電動車比率目標として、今後5年(2026年まで)の電動車販売比率目標も掲げた。たとえば日本では2026年までに55%以上を目指すとしている。そのほか、欧州では75%以上の電動化、中国では40%以上の電動化を狙っている。北米については、2030年度までに40%以上をEVにするという。この中には、日本では間もなく登場すると噂の軽自動車規格のEVも含まれているはずだ。今回の発表にあわせてコンセプトカー「iMK」が展示されていたのは、そうした準備が整っていることを感じさせる。
単に電動車の生産比率を高めても、それが魅力的な商品で、ユーザーに選ばれなければ意味がない。そのために日産は、今後5年間で電動化に関して2兆円の投資を行い、技術革新を進めていくという。全固体電池は2028年ごろから市場投入を計画する
その象徴といえる技術が「全固体電池(ASSB)」だ。EVのリチウムイオン電池は衝撃によって燃えてしまうという欠点が指摘されている。日産 リーフにおいてはこれまで10年以上の市販実績において、そうした事象は起きていないというほど安全なものだが、さらに安全性を高めることができるのが全固体電池を導入するメリットの一つ。
しかし、安全性というのは日常で体感できるユーザーメリットにはならない。日産の全固体電池に期待したいのは充電時間をリチウムイオン電池に対して1/3の時間に短縮できるという優れた充電能力にある。エネルギー密度についても現在のEVに使われているバッテリーと比べて2倍の性能が期待できるという。 素早く充電できて、同じ航続距離を狙うのであればバッテリーの搭載量が少なくて済むのが全固体電池なのだ。そんな全固体電池は夢の技術ではない。日産では2024年度内に横浜に試作生産ラインを導入、2028年ごろには市場投入を計画していると発表された。その際のコスト感も2028年度に1kWhあたり75ドル、その後は65ドルを目指すという。
日産 アリアが搭載しているバッテリーの総電力量は小さいほうで66kWhとなっている。同等のバッテリーを搭載するとして全固体電池のコスト感は50万円程度となるわけで、エンジン車と変わらない車両価格になることも期待できるのだ。
車体・シャシー・バッテリーを統合したEVプラットフォームも用意
そうした全固体電池の採用に合わせて、日産はシャシー・モーター・バッテリーを統合したEVプラットフォームをクルマ作りの基本とすることも計画している。それが「ニッサンEVテクノロジービジョン」だ。
これは全固体電池と前後モーター、制御系、サスペンションなどを一体化した低重心なプラットフォームといえるもので、どんなクルマにも発展させることができるのが特徴だ。
そのテクノロジーを使ったコンセプトカーとして、それが、「日産マックスアウト」、「日産サーフアウト」、「日産ハングアウト」の3台が発表された。
マックスアウトはスポーツカー、サーフアウトはピックアップトラック、ハングアウトはミニバン的なSUVといったところだが、いずれも「ニッサンEVテクノロジービジョン」の持つ低重心を活かしたパッケージであり、走りを実現している。また前後モーターを最適に駆動配分させる「e-4ORCE」テクノロジーや進化した「プロパイロット」なども搭載しているという。いやしの日産「チルアウト」は日産 アリアの進化版!
さらに、「Nissan Ambition 2030」に合わせて発表された新しいコンセプトカーが「チルアウト」だ。ネーミングは「ニッサンEVテクノロジービジョン」に基づく3台と似ているが、こちらはアリアと同じ「CMFEV プラットフォーム」を採用したEVで、やはり前後モーターのe-4ORCEテクノロジーを搭載しているという。
より先進的なスタイリングの中で、注目すべきは大径・狭幅タイヤを採用している点。これは走行抵抗を減らすために有効といわれ、さらに航続距離を伸ばすようテクノロジーが進化していることを予感させる。またe-4ORCEならではのダイナミック制御は、エコ系タイヤとドライビングファンの両立を目指していることも感じさせる。 気になるのは「チルアウト」という名前だ。ご存知のように「CHILL(チル)」という言葉には、「まったり、のんびり、ゆる」といったイメージがある。日産のEVというとe-4ORCEやプロパイロットなどテクノロジーファーストな商品企画という印象も強いが、そうした方向性とは異なる「いやしの日産」をEVのなめらかな走りによって表現しているのかもしれない。
【筆者:山本 晋也】外部リンク
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