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レクサスのおもてなし精神はタイヤにまで!? 新型NXにランフラットタイヤを採用したのは、ユーザーへの気配りの表れだった

MōTA / 2021年12月10日 12時0分

レクサス 新型NX 450h+“F SPORT” [Photo:小林 岳夫/撮影:2021年11月30日/撮影地:LEXUS 新型NX メディア試乗会会場・長野県茅野市周辺]

2021年11月よりいよいよ国内で販売を開始したレクサスのプレミアムSUV、新型NX。新開発のタフなTNGA GA-Kプラットフォームをベースに、新世代のスタイリングにも映える20インチの大径ホイール&ランフラットタイヤを採用したことでも話題を呼んでいる。 ランフラットタイヤとは、万が一パンクしても、所定のスピードで一定距離を走行可能とする技術を搭載した新世代タイヤ。タイヤのサイド部を強化したことで、空気圧ゼロの状態でも走行可能とするが、構造上乗り心地は固くなる傾向になる。それでもあえて採用した理由に、レクサスのおもてなしの精神が隠されていた! モータージャーナリスト今井 優杏さんのレポートでお届けする。

レクサス 新型NX 350 “F SPORT”[ボディカラー:ヒートブルーコントラストレイヤリング] [Photo:小林 岳夫/撮影:2021年11月30日/撮影地:LEXUS 新型NX メディア試乗会会場・長野県茅野市周辺]

様々な新しい試みが盛り込まれたレクサス 新型NX、しかしランフラットタイヤの採用は正直なところ意外だった

主力グレードに大径20インチホイールとランフラットタイヤを採用した「レクサス 新型NX」

つい先日、レクサス 新型NXの試乗記事をMOTAにアップしたばかりの舌の根も乾かぬうちにもう一本、なのだが、書ききれなかった秘話もあるので公開しておこうと思う(まだその記事を読まれていない読者諸兄は、先にそちらを読んで頂くと理解が深まると思うので是非)。

さて、世界95カ国でヒットを飛ばしたレクサス NXの2代目だから、初代を超えるべく様々な新しい試みが注ぎ込まれているのは想像に易いはずだ。

そんな中で今回、なぜ? と感じたことがある。ランフラットタイヤの採用だ。

現役レーサーによるレーシングスピードでの厳しいテスト評価の繰り返しに、新型NXの開発者も思わず「千本ノック状態でした」と告白

レクサス 新型NXは、「Toyota Technical Center Shimoyama(トヨタ テクニカルセンター 下山)」)内にある、カントリー路のハードなテストコース(全長 約5.3km)でとことん鍛え上げられた

レクサス 新型NXは豊田 章男氏(ドライバーネーム・モリゾウ氏)とともにモータースポーツを戦うチームメイト、佐々木 雅弘氏を開発に迎え、徹底的にレーシングスピードで走りを妥協なく鍛えたクルマだ。

実は筆者にとって佐々木 雅弘選手は付き合いの長い友人でもあるのだが、そんな彼が仕事以外のオフレコトークでもこのクルマをベタボメしていたことは、その開発の熟成が、ストイックな彼にとってもなお、満足の行くものだったのだろうというのは想像がついた。事実、開発主査である加藤 武明氏も、彼のテストドライブを『千本ノック』と表現しておられた。

厳しいレースの現場では、通常なら1年乗っても出てこないまさかのトラブルが瞬時に発生することも

ニュルブルクリンク24時間レースに参戦するレクサス

実はモリゾウ氏本人によるモータースポーツへの参戦をきっかけに、トヨタ自動車では今、「アジャイル開発」というものが行われている。この用語はソフトウエアやシステム開発などで使われるモノだが、これが今、トヨタではレーシングカー含むクルマの開発に採用されている。

アジャイル、とは「素早い」とか「機敏な」という意味。極限までクルマのスペックを使って戦うモータースポーツの世界では、市販車が半年とか年単位で出すようなトラブルが、ほんの数分から数時間で噴出することがある。

レース現場から生まれた“アジャイル開発”の思想で、スピーディに改善を重ね誕生した新型NX

レーシングスピードにより鍛え上げられたレクサス 新型NXの強固なボディ骨格

モリゾウ氏はこれまでのニュルブルクリンク24時間レースへの参戦でも「レースで出たトラブルを市販車の開発に活かすことこそがモータースポーツに参戦する意義」と繰り返し話していたが、今、さらにその考えは進化していて「トラブルが出た瞬間にその場で対処&改善する“開発”」が行われているのだという。

そんなアジャイル開発は、佐々木雅弘氏の「千本ノック」で遺憾なく発揮されたのだそうだ。走り込むごとに理想を追い、エンジニアが全力で対処し、高みに近づけたのだという。

スペアタイヤを載せない場合に搭載される「パンク修理キット」、ユーザーにとってはちょっと厄介な代物だった

…というエピソードを深堀りした上で、話しはいきなりタイヤに戻るが、そこまで走りを求めるならば、正直ランフラットは邪魔だったはずだ。しかし、新型NXはランフラットタイヤを敢えて採用してきた。なぜか。

ズバリ『パンク補修材を使いたくなかったから』だという。

タイヤメーカーと協力し、乗り心地が固くなる傾向にあるランフラットタイヤの特性をレクサス基準でチューニングし直して搭載

御存知の通り、現在、自動車にはスペアタイヤ、もしくはパンク補修材を搭載しなければいけない。軽量化、そしてエコの観点からも、近年の新車はスペアタイヤを廃止しパンク修理材を搭載するケースが増えている。

ただ新型NX開発陣は、ユーザーからの「使いづらい」「使い方がわからない」「タイヤが駄目になってしまう」などのパンク補修材キットに対する圧倒的不満の声を聞いていたのだという。しかし新型NXには、SUVとしての走破性は担保したい。

そこでスペアタイヤもパンク補修キットも搭載不要な、ランフラットタイヤを選択した。でありながら、NXらしいラグジュアリーかつスポーティな走りが実現されるよう、タイヤメーカーとのチューニングをしてきたのだそうだ。つまり、走りを徹底的に鍛えつつも、きちんとユーザーの顔を見て、使い勝手の面で最後は消費者にメリットがちゃんとあるように、クルマ開発をしてきたということだ。レクサスらしい気遣いだと思う。

開発者からこっそり聞いちゃった! 非ランフラットタイヤを選択するならPS4がオススメ

モータージャーナリストの今井 優杏さん

とはいえ、もしNXをさらに最高の走りに仕立て上げたいのであれば、ミシュランのパイロットスポーツ4とのマッチングがオススメなのだそうだ。そのマリアージュ、筆者も異存なし。かなりいい感じのラグジュアリーさが出ると思う。

その際にはパンク補修材キットを自分で用意することを忘れないで欲しい。

[筆者:今井 優杏(モータージャーナリスト)/撮影:小林 岳夫]

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