レクサスの新型フラッグシップSUV「LEXUS LX600」に初試乗! 基礎を共有する“新型ランクル300”とは驚くほど異なる高級なクルマに仕上がっていた[前編]
MōTA / 2022年1月14日 17時0分
レクサスのフラッグシップSUV「LX」がフルモデルチェンジし、新型「LX600」として2022年1月12日(水)より正式に発売を開始した。新型LX600の価格は1250万円から1800万円(消費税込み)。「世界中のどんな道でも楽に、上質に」をコンセプトに掲げた新型「レクサス LX600」に、いち早く試乗する機会を得た。基本プラットフォームを“ランクル”こと「トヨタ ランドクルーザー300」と共有する新型LX600だが、オンロード、オフロードともに格段に上質な乗り味を示し、全くの別モノに生まれ変わっていた! モータージャーナリスト 今井 優杏さんが前後編でお届けする。前編はオンロード編から。
見た目の違いだけじゃない! 走りの性能こそが新型「LX600」の真髄である
14年ぶりのフルモデルチェンジを受けたレクサス 新型「LX600」。すでにエクステリア&インテリアなどの“静的ディテール”は2021年の年末に報道解禁されているが、年を跨いだ2022年1月12日(水)にようやく正式発売を開始。動的インプレッションの報道規制も解除された。
もちろん、新スピンドルグリルをまとってより風格を増したエクステリアや贅沢なインテリアは、それだけでも十分新型LX600をガレージに迎える大きな理由の一つになるはずだ。一目惚れという人も多いだろう。しかし実際新型LX600は、走りにこそ所有の真髄があると感じたのでレポートしたい。
まずはじめに、新型LX600は『“レクサス版ランクル”というレッテルから脱却すること』を目指して開発されたらしいということをお話ししておきたい。新型で4代目に進化したLX600は、レクサスのフラッグシップSUVたる存在として、イチから作り上げたクルマなのだと開発陣は言う。しかし、それは実際に可能なのか。可能だとして、どれくらいの違いを実現しているのかというのは気になるところだ。
新開発プラットフォームなどの基礎は「トヨタ 新型ランドクルーザー300」と共有する一方で専用設計の部分も多い
言うまでもなく新型「LX600」は、ランクル(トヨタ ランドクルーザー300)とプラットフォームを共用している。先にざっとおさらいをしておくと、新型LX600とランドクルーザー300はTNGAのなかでもラダーフレーム構造のGA-Fプラットフォームを採用し、オフローダーに相応しいタフネスなボディを手に入れつつも、アッパボディーには高張力鋼板採用部を拡大し、そしてドア類、ボンネット、ルーフにアルミを使用することでマイナス200kgの軽量化に成功。さらにこれによって低重心を実現している、という基本的なプロフィールを共にしている。
従来型「LX570」のV8 5.7リッターから、新型「LX600」はV6 3.5リッターツインターボにダウンサイジング
プラットフォームだけではなく、パワーユニットも同じだ。新型LX600の日本仕様にはディーゼルエンジンのラインナップはないが、ガソリンエンジンはランドクルーザー300と共通のV6 3.5リッター ツインターボで、組み合わされるのは電子制御の10速ATであるDirect Shift-10ATとなる。ほかにもフロントがハイマウントダブルウイッシュボーン式、リアがトレーリングアーム式のサスペンション+減衰可変式のAVSなどシャシー系も共用しているし、マルチテレインセレクト、クロールコントロール、ダウンヒルアシストコントロールなどの走破系電子制御も双方に採用されているものだ。
AHC(アクティブハイトコントロール)と電動パワーステアリングを独自に採用する新型LX600
しかし、足回りでの大きな違いが2点ある。新型LX600は車高調整のためにAHC(アクティブハイトコントロールサスペンション)を採用している点。すでにLXオーナーにはおなじみの機能ではあるが、ドライブモードスイッチと連動して自在に車高を変えられるという方式を、LXでは油圧式のハイドロで叶えた。これを最新世代に進化させ、車高のアップ/ダウンの時間をかなり短縮している。
さらに減衰可変式のAVSを組み合わせることで、あたかもエアサスを搭載しているかのようなフレキシブルな足回りを実現した(なぜエアサスにしないのかという点においては『世界の道で検証されてきた信頼性を、エアサス採用で失いたくないので』という答えが帰ってきた。ド正論である)。
対してランドクルーザー300のGRスポーツには、電子制御式の前後スタビライザー「E-KDSS」を採用したのは御存知の通りだ。
さらに、ランドクルーザー300では最大20インチというタイヤサイズを選択しているが、LX600では22インチのレクサス最大径を選択。そして新型LX600には電動パワーステアリングが採用された(ランクル300は油圧式パワステ+電動アクチュエーター)。さて、これだけで「レクサスらしさ」は表現出来るのだろうか。
結論から先にいうと、全く別モノに仕上がっていました、参りましたという感じだ。
さらに付け加えるなら、先代比較がスゴイ。乗り比べると、まさに14年の月日をまざまざと見せつけられる驚愕の進化を遂げている。
オンロードで試乗! 静粛性とスムーズなステアリングフィールに圧倒されっぱなし
ドアを閉めた瞬間に感じるハイレベルな静粛性に驚いた
試乗コースはクローズドのショートサーキットと人工的なオフロードコースだったのだが、まず一発目、乗り込んだときからサプライズは始まってしまう。
とにかく驚くほどの高い静粛性だ。
密閉性とでもいおうか。この静謐な感じ、驚くほど上質な室内のプライベート空間のさまはちょっと筆舌に尽くしがたい。正直これは先代LX570の比ではない、“レベチ”ってヤツである。すべての音を吸いこむような、圧倒的な“高級車感”にあふれていて、思わずちょっとヒソヒソ声になってしまうくらいなのだから。エンジンを始動しても、そのサプライズは続く。
3.5リッター V6ツインターボが目覚めても、車体がぷるんとも揺れないんである。窓の外の潮騒…くらいの感じでかすかにV6サウンドが耳に入りこそすれ、その上品な始動こそ、まさに「次世代レクサス」を感じさせる言いようのない迫力・気迫に満ちているように感じる。
正確性の高いステアリング制御にも驚いた
コースインをしてすぐに気づくのは、ハッとするくらいのステアリングの反応の良さだ。先述の通り、新型LX600は電動パワーステアリングを採用している。オフローダーとしてやや鷹揚さを残しているランドクルーザー300と、見事に正確を分けるのはこの電動パワーステアリングの影響が大きい。
新型LX600はご覧の通り背が高く、大柄なクルマなのは言うまでもないが、このステアリング制御のおかげでまるで、ひらりひらりとコーナーを攻めていけるような、スポーツSUV的なフィールを叶えているのには素直に驚いた。
従来型「レクサス LX570」と比較試乗して気付かされる新旧の差が段違い過ぎて驚いた
実は今回、レクサスのご厚意で「LX570」、つまり新旧比較をさせていただいている。従来型のLX570では“大柄でリッチなフルサイズSUV”というキャラをことさら強調するかのように、超ルーズなハンドリングに超ルーズな揺り返し、加速ももったりとトルクが盛り上がり、ある程度のところからドカンとパワーが出るような、今考えると懐かしい感じにも思える、ジ・アメリカン・フルサイズ!的フィールを持っていた。
つまり従来型のLX570は、サーキットや山道で小回りを楽しむような、そんなタイプのクルマではなかった。逆に言うとそういうシーンではどんどんクルマが外側に膨らんだり、ハンドルが切り遅れて行ったりするからドライバーはちょっと疲れる。わりと直線番長的なクルマだったかと思う。一気に若返ったかのような、新型LX600のシャープなハンドリング
しかし新型LX600のシャープさときたらどうだろう! 運動神経で言えば50代が20代に若返った感じ。コーナリングのキレもあるし、瞬発力も見事でトルクの息継ぎもない。ボディのロールも最小限に抑えられ、サーキット走行中には周回ごとにどんどん車速を上げていけるほどに、まるでスポーツカーのような俊敏さを見せてくれた。電動パワーステアリングによって軽やかになったステアリングだけの恩恵ではない。加速・減速のパワー的な方向でいえば、ダイレクトシフト10速ATの恩恵はかなり色濃いと思う。トルクの継ぎ目、加減速の切れ目がないので、どのタイミングでもスロットル開度とギアのマッチングがバチっとはまり、低〜高速までシームレスなパワーバンドを楽しめる。
さらにそれを受け止める新プラットフォームの剛性(冒頭に書き忘れたが、スポット溶接増しや構造用接着剤エリアの拡大などで剛性の向上ももちろん行われている)は相当に心強い。サスペンションの自由度の向上は間違いなくここに由来する。そして、タイヤだ。22インチの大径を採用したことで、オンロードでのグリップがもう、異次元。
このボディでドライの峠も行ける、なんて贅沢すぎる…しかも走行中もずっと静粛性は保たれたままであった。
新型「レクサス LX600」試乗レポート後編はオフロードテストの模様をお届け!
レクサス 新型「LX600」試乗レポート前編は、主にオンロードでの走行について、従来型「LX570」との違いを交えながらご紹介した。次回後編は、いよいよ待望のオフロード編をご紹介! 1/15(土)公開予定なのでお楽しみに・・・。
[筆者:今井 優杏/撮影:小林 岳夫・LEXUS]
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