今では絶滅危惧種! 軽スポーツカー3選│一世を風靡した「平成ABCトリオ」を振り返る
MōTA / 2022年2月11日 19時0分
2022年3月に生産終了(現在はすでにオーダーストップ)となるホンダの軽スポーツカー「S660」。今や同カテゴリーではダイハツ コペンを残すのみとなってしまった中、今回はかつて一斉を風靡した「平成ABCトリオ」を振り返る。
まるでイタリアンスーパーカーの「AZ-1」
マツダ AZ-1、ホンダ ビート、スズキ カプチーノからなる懐かしの軽スポーツカー「平成ABCトリオ」。最初に紹介するのは、1989年(平成元年)の第28回東京モーターショーに参考出品したユニークなコンセプトのマイクロクーペを、ほぼそのまま市販化しモデルのマツダ オートザムAZ-1だ。 まるでイタリアンスーパーカーのような低くて地を這うような斬新なスタイル、上下に開くガルウィングドア、プラスチック製のボディ外板、そして外装を簡単に取り外せる“スケルトンモノコック”という特殊なフレームを採用するなど、特徴的なスタイリングの1台だ。中身もそれに劣らず個性的で、660ccのターボエンジンをドライバーのすぐ後ろに配置するミッドシップレイアウトを採用し、低重心の設計や徹底した軽量化によって優れた運動性能を実現。レーシングカートのようなダイレクトでシャープなハンドリングも「AZ-1」の特徴だった。
搭載するエンジンは、ライバルのスズキ カプチーノやアルトワークスにも搭載されていたF6A型直列3気筒DOHCインタークーラーターボで、最高出力は自主規制値いっぱいの64psを発揮。
座席のすぐ後ろから響く大きなエンジン音や運転時の視線の低さから、体感速度はひときわ高く感じられた。さらに44:56という前後重量配分、720kgという超軽量な車重、ロック・トゥ・ロック2.2回転というやたらクイックなステアリング機構等により、抜群のコーナリング特性を誇った。
可愛らしい見た目とは裏腹に、鋭いふけ上りが魅力の「ビート」
次に紹介するのは、1991年5月に登場したホンダ ビート。1996年までには「平成ABCトリオ」の中でダントツで多い3万3892台が生産されたモデルだ。ビートは当時の運輸省(現在の国土交通省)がクルマの急速な高性能化に目を光らせていたこともあり、小さくて安価な車種には「スポーツカー」という表現を使いにくい雰囲気があったため、所謂“スポーツカー”とは呼ばれず「2シーターミッドシップオープンカー」と呼ばれた。また、1990年には「NSX」が発売され、軽自動車のビートは「街乗り」に焦点が当てられていたこともその理由の一つとされている。
見た目は可愛らしさもあるビートだが、軽自動車に初採用されたミッドシップレイアウトの直列3気筒SOHCのエンジンは、軽自動車の自主規制上限の64PSを8100rpmという高回転で発揮するいかにもホンダらしいエンジンだった。トランスミッションはもちろんATの設定などなく、吹き上がりは鋭く、5速MTを駆使する感じがファンを魅了した。2017年には、ホンダから「ビートをより長く楽しんでいただきたい」という想いのもと、ビートの一部純正部品の生産が再開されている。
ライバルと比べ唯一FRを採用していた「カプチーノ」
最後に紹介するのは、ライバルAZ-1同様に1989年の第28回 東京モーターショーでコンセプトモデルが出展され、その後1991年より販売が開始されたスズキ カプチーノ。車名の由来は、まさにコーヒーのカプチーノから。「小さなカップに入ったちょっとクセのあるオシャレな飲み物」というイメージが込められている。
ロングノーズ・ショートデッキのボディサイズは、全長3,295mm×全幅1,395mm×全高1,185mmと低く、車両重量に至っては700kgと非常に軽量。さらにルーフは4分割構造になっていて、クローズ、Tバールーフ、タルガトップ、フルオープンの4スタイルを楽しむことができる。
ライバルのホンダ ビートやマツダのAZ-1がミッドシップ(MR)なのに対し、カプチーノはフロントエンジン・後輪駆動のFR方式を採用し、ハイパワーなエンジンもフロントミッドシップに縦置き搭載するこだわりっぶり。理想的な51:49の前後重量配分を実現している。
現行車種では、ダイハツ コペンのみともはや絶滅の危機に瀕している軽スポーツカーだが、今後新たなモデルの登場はあるのか? 実用性だけではない、楽しいクルマの登場に期待したいところだ。
[筆者:望月 達也(MOTA編集部)]
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