ジープ 新型グランドチェロキー Lは、新たに3列シートを備え北米大陸の広さと自動車文化の豊かさを感じさせるアメリカンSUV
MōTA / 2022年2月21日 17時0分
2年ぶりの開催となった、JAIA輸入車試乗会2022。今回は、今話題のSUVを中心にレポートをお届けする。まずは、2022年2月から販売が始まる最新アメリカンSUV「ジープ グランドチェロキー L」から紹介する。
10年ぶりにフルモデルチェンジを受けた、「ジープ グランドチェロキー」
新型コロナウィルス流行を受け、2021年のプログラムがスキップされたJAIA輸入車試乗会。41回目となる今回は、会場を大磯ロングビーチに移し、2年ぶりに開催された。輸入車も、流行やトレンドに応じた車種が導入されるため、世界の自動車業界では何が起こっているのかを推し量れる。そのため今年の試乗会では、電動化が着実に進んでいることがよくわかった。そんな中、おおらかでタフなアメリカ製SUVの伝統を守り続ける「ジープ」(FCAジャパン)が持ち込んだのが、日本国内では旗艦となる、3列シートを備えるLサイズSUV「新型グランドチェロキー L」だ。
グランドチェロキーは1993年にフォード エクスプローラーに対抗して登場。2021年には現行型である5代目が本国でリリースされ、日本でも2022年2月19日から発売を開始する。先代は登場が2010年、日本での発売が2011年だったので、10年ぶりのフルモデルチェンジを受けたことになる。
初代ワゴニアを意識したデザインに 3列シートの「グランドチェロキー L」から導入
新型グランドチェロキーで最初に導入されるのは、3列シートで全長5.2mに達するグランドチェロキー L。北米では展開されている2列シート(標準モデル)のグランドチェロキーよりも、全長が約400mm長い。 逆スラントのフロントマスクやスクエアなボディを得た新型グランドチェロキーからは、マッシブで筋肉質・スポーティな雰囲気だった先代モデルよりも、おおらかで高級な「古き良きアメリカの4輪駆動車(SUVではなく、あえてこう書きたい)」の面影も感じられる。 それもそのはず、デザインのイメージは、1963年に誕生したジープブランドにおけるステーションワゴン型4輪駆動車の草分け「初代ワゴニア」。当時の四駆では画期的だった前輪独立懸架、SOHCエンジン、オートマチックトランスミッションなどを搭載し、完全に乗用車ライクな内装も得ていたワゴニアは、現代のSUVにつながる元祖の一台でもある。日本未導入の2列シート版グランドチェロキーでは、逆台形のリアエンドピラーに、初代ワゴニアのイメージを継承していることにも注目したい。日本初の3列シートを備えたジープとして、国産高級ミニバンやSUVからの代替え需要も存在するのではないだろうか。日本国内では、マツダCX-8など3列シートのSUVが好調だ。いざという時に7人乗れるというメリットはやはり大きい。
なお本国では、ジープブランドの最上位モデルを、2021年に復活を遂げた伝統のネーム「ワゴニア」と「グランドワゴニア」が担っている。グランドチェロキー Lよりもさらに大きな、全長5.4mにも達するフルサイズSUVだ。
エントリーモデルの「リミテッド」でも十分以上の装備を誇る
試乗した「リミテッド」は、2種類のグレードを持つ新型グランドチェロキー Lの中ではエントリーモデルとなるが、788万円というプライスを掲げるプレミアムSUVとして、十分以上の装備を備える。 上位グレードの「サミット リザーブ」に比べ、21インチホイールやマッサージ機能付きフロントパワーシート、プレミアムサウンドシステム、置くだけでスマートフォンの充電が可能なワイヤレスチャージングパッド、ハンズフリーパワーリフトゲート、デジタルリアビュールームミラー、エアサスペンションなどがオミットされる。しかしリミテッドからは、アメリカでふつうのクルマに使われているような日常感も感じられ、むしろ好ましい印象だ。
インテリアは、「厳選されたマテリアルと最先端テクノロジーにより質感を大幅に向上」と謳われるとおり、プレミアムSUVにふさわしい仕上がり。タフでワイルドな雰囲気よりも都会的なイメージを先行した水平基調の落ち着いたデザイン、上質な素材を組み合わせた作り込みにより、先代モデルに比べると質感が大幅にアップしている。 シフトノブの代わりに採用されたロータリー式のシフトセレクターも、カッチリとした作りで操作性にも優れていた。 大柄なフロントシート、リクライニングが可能な2列目シートの座り心地は上々。気になる3列目の居住性については、足元スペースは狭めだが、2列目を前進させれば十分な空間を作り出せる。空調吹き出し口やカップホルダー、USBポートまで備え、シート自体もしっかりと作られているため、エマージェンシー用という雰囲気は少なかった。全長5.2mの巨躯を感じさせない軽快さ
搭載される3.6リッターのV6エンジンは、アイドリング中でもエンジンがONなのかどうかわからないほどに静かだが、最高出力286psのパワーにより、アクセルを少し強めに踏むだけで、2tオーバーの車体を気持ちよく加速させる。乗り心地は良好だ。多少ゆらゆらと揺れるものの、フラットな姿勢を保ち続ける。ただし2列目に座ると、路面の状況が事細かにわかるような微振動が、終始体を包んでいた。しかしこれは個体差なのかもしれないことと、上位のサミット リザーブでは、クォドラリフトエアサスペンションを備えているため、2列目シートの乗り心地が優れていたことは付記しておきたい。
乗る前は見上げるほどに大きなクルマだが、四角い車体で車両感覚が掴みやすいため、いざ乗ってしまうと全幅約2mの巨躯もさほど大きく感じさせない。試乗コースに山岳路がなかったため、ハンドリング性能をしっかり試す機会は少なかったが、高速道路出口から一般道に降りる際の急カーブでも、正確性が高いハンドリングの一端を垣間見ることができた。
これぞアメリカンSUVという、サイズを意識していない伸びやかな設計
車体が大きいことは、一般的にはネガな要素になると思われるが、このクルマを求めるユーザーにとって、それはあまり問題にならないだろう。新型グランドチェロキー Lでは、この大きさ・おおらかさこそが、むしろ魅力に繋がっているのだ。国産LクラスSUVの雄であるトヨタ 新型ランドクルーザー300も、北米をはじめとして世界各国で高い評価を得ているが、サイズをそもそも意識していない伸びやかな設計を持つ新型グランドチェロキー Lからは、アメリカ製SUVでなければ出せない雰囲気が強く放たれているのが印象的だった。
[筆者:遠藤 イヅル/撮影:和田 清志]
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