アメ車らしさを残しつつ、欧州車のようなフィールを持つ最新鋭キャデラックのSUV「XT4」とスポーツセダン「CT5」
MōTA / 2022年3月1日 16時0分
元祖SUV大国、アメリカから生まれるニューモデルの進歩が著しい。今回は、2年ぶりの開催となったJAIA輸入車試乗会2022で試乗した話題のプレミアムコンパクトSUV「XT4」と、スポーティさが売りのセダン「CT5」をお届けする!
「XT4」はキャデラック初のコンパクトSUV
キャデラックと聞いて、どんなクルマを思い浮かぶだろう。近年のキャデラックは、メッキが多い大柄な車体にV8エンジン、ゆらゆら揺れる乗り心地…のようなイメージはすでになく、しかも今やプレミアムSUVメーカーとしての側面が強いのだ。日本でも4種類のSUVを設定するほどにラインナップが充実している。 そんな同社のSUVで最もコンパクトなモデルが、2021年1月に日本での販売を開始した「XT4」だ。キャデラック初のコンパクトSUVでもある。シャープなエクステリアは、最近のキャデラックデザインの文法に則っている。上位に位置する「XT5」との近似性も強く、縦長の細いヘッドライト、大きな逆台形グリル・太いリアピラーの造形とともに、一目見てキャデラックだとわかる個性を持つ。試乗会に来ていたのは、3グレードの中でもスポーティさを売りにする「スポーツ」というグレードだった。
左ハンドルのみ販売されるため、左側ドアを開け内装を見てみると、センター部を大きく手前に張り出させた立体造形で、過度な装飾を施さないすっきりしたイメージでまとめられたダッシュボードが目を引く。 上位ブランドだけあって素材の質感は十分に高い。フロントシートの座り心地は優れるが、首がイマイチ座らないのが欠点か。リアシート形状は平板ながらも座った感覚は良好で、レッグスペースもしっかり確保されているが、頭上空間は少なめ。前後にシートヒーターが備わるのはありがたい。
「XT4」に残る「アメリカ車らしさ」
エンジンは2リッター直4+ターボで、230psを発生。9速ATから4輪にパワーを伝達する。1.7t超ある車重を感じさせない軽快感があるが、乗り心地自体はコンパクトSUV とは思えないほどのどっしり感を示す。 XT4スポーツでは、「ツーリング」「AWD」「スポーツ」「オフロード」という4つのドライブモードを選択できる。スポーツモードではサスペンションがぐっと引き締まる。一方、ツーリングモードでは柔らかい設定に変わり、乗り心地は良好に。ただ揺れの収束が遅く、揺られ続ける印象も受けるが、これもまた往年のアメリカ車テイストを想わせ、好意的に解釈できる。
XT4は最新トレンドのコンパクトSUVと銘打たれるが、充実した装備を誇り、鷹揚でゆったり・どっしりとした乗り味という、アメリカ製高級車の伝統を今に受け継ぐ。同時に乗ったセダン「CT5」よりもむしろアメリカンテイストは濃厚に感じたほどだ。ライバルは、こちらもアメリカ車の雰囲気強いレクサスの「NX」。ほどよいきらびやかさ、東海岸の街でヤング・エグゼクティブが颯爽と乗りこなすようなイメージ、そして価格帯も概ね共通する。レクサスブランドが好み・興味があるなら、現在のキャデラックやXT4の持つキャラクターはよく理解できるかもしれない。
欧州製プレミアムセダンにも匹敵する「CT5」
そしてセダンのCT5に乗り換える。グレードは、こちらも「スポーツ」だ。キャデラックのスポーツセダンであるCT5は2019年に登場。そのルーツは、1970年代に欧州製高級車に対抗すべく生まれた小型キャデラック(実際は全長5.2mもあり、全然小さくないけれど…)「セビル」で、1980年代にはスポーティグレード「STS(セビル・ツーリング・セダン)も誕生している。
2000年代に入ると、セビルのスポーツグレード系後継モデルは、アメリカ市場以外も意識するようになり、欧州・豪州での販売も盛んに。
そして最新スポーツセダンのCT5も、欧州プレミアムセダンのBMW 5シリーズやメルセデス・ベンツE クラスをライバルとするため、走行性能や内外装の質感が高く、しかも個人的な印象で恐縮だが、デザインは圧倒的にシャープでカッコいい。おまけに価格帯もこのセグメントでは相当にリーズナブルである。
全長4.9mもある巨体に見えないのもデザインの妙だが、エンジンはもはやV型でも大排気量でもなく2リッター直4なのは時代の流れ。とはいえ240psのパワーは十分で、静かに速くCT5を走らせる。トランスミッションは10速(!)ATで、「スポーツ」ではフルタイム4WDを組み合わせている。 乗り心地はスポーティセダンのスポーツグレードということもあってか、硬さが少々目立つものの、80km/h前後での走行では突き上げも少なく心地よい。この領域で流すと、アメリカ車的なゆったり感が生まれてくるようにも感じた。ステアリングはクイックかつ正確で、速度を出していない領域でも良好なハンドリングの片鱗をうかがわせる。
SUV大国のアメリカでは、日本と同様にセダンが急速に姿を消している。その中で、プレミアムスポーツセダンに必要な要件を揃え、欧州製セダンにも匹敵する動的性能を持ち、かつアメリカ車的なおおらかさも残るCT5は、今や貴重な存在ではないだろうか。視覚的な押し出しも、いまや一部の日本車よりも強くない。トヨタ クラウンのスポーティ版「RS」を狙っているユーザーには、案外刺さる一台かもしれない。キャデラックのセダンにさりげなく乗る、というカーライフも面白そうだ。
[筆者:遠藤 イヅル/撮影:和田 清志]
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