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【オマージュは是か非か】ファミリー向け2リッターミニバンのパイオニア“ステップワゴン”とカテゴリーリーダー“ノア/ヴォク”の熾烈な争い

MōTA / 2022年3月7日 11時30分

ファミリー向け2リッターミニバンの熾烈な争い

どんなカテゴリーでも、そのジャンルを生み出した者と追従する者がいます。日本国民のファミリーカーといえる2リッターミニバンを生んだホンダ ステップワゴン、パイオニアに真っ向から勝負を挑んだトヨタ ノア/ヴォク。両車の進化を振り返ってみました。

ファミリー向け2リッターミニバンの熾烈な争い

国産ミニバンの歴史を紐解いてみると…

2022年1月にフルモデルチェンジを行ったトヨタ 新型ノア/ヴォクシー。そして1月にティザー広告を開始したホンダ 新型ステップワゴン。モデル末期だった2021年の新車販売台数はヴォクシー7万0085台、ノア4万4211台に対して、ステップワゴンは3万9247台と3倍近い差となっています。

ファミリーカーの定番モデルとなっている2リッターミニバンクラスにおいて、現在はノア/ヴォクシーがカテゴリーリーダーとして君臨し、これをステップワゴンと日産セレナが追う展開となっています。

ここでは、国産ミニバンの売れ筋となっている2リッタークラスの歴史を振り返ってみたいと思います。

2リッターミニバンの中でも高い人気を誇った先代ヴォクシー。ノアと合わせて2021年に10万台以上が販売されました

販売台数が4万台弱とノア/ヴォク人気に押された感のある5代目ステップワゴン。新型で巻き返しを図れるでしょうか

2リッターミニバンという新境地を切り開いたステップワゴン

商用モデルと同じように運転席の下にエンジンを搭載し、後輪駆動を採用するキャブオーバータイプが中心だった1990年代。初代ステップワゴンは、クリエイティブムーバーシリーズ第3弾として1996年5月に登場しました。

キャブオーバータイプの1BOX車をラインナップしていなかったホンダは、乗用車のプラットフォームを流用。エンジンを運転席前に搭載した前輪駆動(FF)の1.5BOXというステップワゴンを誕生させました。

現在の2リッタークラスミニバンのパイオニアである初代ステップワゴンは、機能性を優先した5ナンバーサイズの四角いデザインを採用したことで、大人8人がゆったりできる広い室内空間を実現したモデルでした。

そして快適な乗り心地と静粛性を兼ね備えた、質の高い走りを実現するため、フロントはストラット式、リアはダブルウィッシュボーン式という乗用車と同じサスペンション形状を採用しました。

これら革新的な機能によって、ファミリーカーでも走りの良さを失わないという、ホンダらしさを感じられるステップワゴンはおおいにヒットしました。

オデッセイ、CR-Vに続く、ホンダのクリエイティブムーバー第3弾として登場した初代ステップワゴン。当時、ミニバンという言葉は使われていませんでしたが、新たなファミリーカー像を作りました

初代ステップワゴンの人気の秘訣はそれまでなかった3列シートという多人数乗車性。商用車ではなく、乗用車で8人が乗れることがヒットした要因のひとつでした

圧倒的人気を誇ったステップワゴンが欲張り過ぎて迷走?

2001年には初代のイメージを踏襲した2代目が登場します。そしてステップワゴンは2005年に登場した3代目で大きく路線変更することになります。

「ユーティリティ・ミニバンの空間のゆとり」と「セダンの走りの質」を高い次元で併せ持つ、次世代のユーティリティという価値をミニバンで実現することを目指したという3代目は、低床・低重心のプラットフォームを採用。ボディサイズも四角いボクシースタイルから空力特性に優れたワンモーションフォルムを採用しました。

室内空間の広さや利便性と同時により高い走行性能を実現させるために全高を下げたこと、ワンモーションフォルムを採用してスタイリッシュさを追求しましたが、その結果、新車販売台数で苦戦してしまいます。

スタイリッシュに生まれ変わった3代目ステップワゴンですが、それまでと方向性が異なったためかセールスは伸び悩みました

一度の迷走で実力はあるのに人気が伴わないことに

2009年に登場した4代目は再びボクシースタイルに。そして2015年から販売開始した5代目の先代ステップワゴンは、もう一度ワンモーションフォルムに戻りましたが、マイナーチェンジでスパーダはボクシースタイルになるなど、迷走してしまいます。

また、先代ステップワゴンのリアゲートに採用した縦開き、横開き両方が可能なわくわくゲートですが、個人的には狭い場所でのモノの出し入れに便利だと感じました。そのうえ重いわくわくゲートを採用するため、リアゲート付近を補強したことでミニバン屈指の走行性能を手に入れたという予想外のメリットもあり、高い実力と人気が伴っていない惜しいモデルといえるでしょう。

5代目ステップワゴンは再びワンモーションフォルムに。クラス最大級の室内空間を実現し、3列目シートを床下に収納できるなど、ファミリーカーとしての実用性は優れています

登場時に話題となったのが「わくわくゲート」です。縦にも横にも開くリアゲートは画期的で非常に使い勝手に優れています

ノア/ヴォクシーは明確なキャラ立ちが奏功して人気モノに

対して、2リッターミニバンのメインストリームであるノア/ヴォクシー。実はFF化されたのが2001年と、2代目ステップワゴンの誕生と同じ年でした。

ファミリー向けにプレーンなデザインを取り入れたノアに対して、2段の薄型ヘッドライトを採用した押し出し感を強めたヴォクシーと、キャラクターを明確に分けたのも成功しました。ノア/ヴォクシーは走行性能というよりは、外観デザインや利便性を追求したモデルと言えます。

2007年に登場した2代目ノア/ヴォクシーはさらにデザインの差別化を進め、とくにヴォクシーは押し出し感を強めたモデルでした。また、5ナンバーサイズ車をメインにエアロパーツを装着した3ナンバーサイズ車も登場させ、押し出し感の強いヴォクシーのエアログレードが売れ筋となりました。

さらにG’sと呼ばれる専用サスペンションやボディ補強などを施したカスタムモデルも追加されています。

2001年に登場した初代ノア。「21世紀の豊かなモビリティライフを創造する」というコンセプトのもとに誕生しました

こちらは同時にデビューした初代ヴォクシー。コンセプトはノアと同じですが、ノアがデザインで親しみやすさをアピールしたのに対して、鋭くて迫力のある引き締まったデザインで若々しさをアピールしました

王道をひた走るノア/ヴォクシーに対抗できるか

3代目となる旧型ノア/ヴォクシーは2014年に登場。ノアはアンダーグリルと一体化した大型フロントグリルとヘッドランプの組み合わせにより、ワイド感とフロントマスクの厚みを持たせ、ミニバンの王道を行く"堂々感"を表現。

一方のヴォクシーは、ヘッドランプと連続する上下2段構成のフロントグリルを採用して独特の美意識を徹底した"毒気"のあるカッコ良さを表現しています。

先代型ノア/ヴォクシーのストロングポイントは2リッターのガソリンエンジンに加えて、いち早く1.8リッターエンジンのハイブリッドシステムを搭載したこと。当初は5ナンバーサイズの標準車のみでしたが、2016年には3ナンバーサイズのエアロ系グレードにもハイブリッドを追加しています。

さらに、マイナーチェンジを重ねるごとにフロントグリルが大型化し、ヴォクシーだけでなくノアも存在感を放つ外観デザインとなりました。

ファミリーカーとして使われることが多いクルマなので、お子さん達も歓ぶようなカッコ良さがスタイリングに求められ、ノア/ヴォクシーはまさにその要望に応えたことが人気の秘訣と言えるでしょう。

スタイルの良さが受けて若者から年配の方まで幅広く支持された先代型ヴォクシー。2リッターミニバンの王道といえる存在です

ステップワゴンの巻き返しなるか? 新たな局面へ

2022年1月に登場した新型ノア/ヴォクシーは、先代までの流れを踏襲し、存在感溢れる外観デザインを採用。一方の新型ステップワゴンはボクシースタイルに変更し、原点回帰したプレーンなデザインとなりました。

先行して発売した新型ノア/ヴォクシーは納車が長期となる人気となっています。一方、先行予約の受付を開始した新型ステップワゴンは今春発売ですが、すでに納車まで5カ月〜半年待ちの状態。果たして2リッターミニバンの争いはどんな局面を迎えるのか、非常に楽しみです。

今年1月13日から販売を開始した新型ヴォクシー。「先鋭・独創」をキーワードにデザインされた外観は、ミニバンらしからぬ強烈な存在感をアピールします。とくにフロントまわりの押し出し感は強烈

新型ノアのテーマは「堂々・モダン・上質」と「王道・アグレッシブ」といった2つ。格上のアルファード/ヴェルファイアに劣らぬ堂々とした存在感を発揮します

今春から販売開始予定の新型ステップワゴンは、ハコ感を強調したボクシースタイルが特徴です。ノア/ヴォクの牙城を切り崩せるのでしょうか

[筆者:萩原文博/撮影:トヨタ自動車、本田技研工業]

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