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ホンダ CR-Vの四駆性能は「e:HEV×リアルタイム4WD」で大柄なボディサイズを感じさせないコンパクトSUVに近い運転感覚だった!

MōTA / 2022年3月2日 16時0分

ホンダ CR-V

ホンダのミドルサイズSUVであるCR-V。走行安定性と乗り心地のバランスの良さに加え、e:HEVにリアルタイム4WDを備えたモデルは高い悪路走破力を備える。今回は、雪上での走行機会を得たので、その内容をお届けする。

ホンダ CR-V

走行安定性と乗り心地のバランスが良いCR-Vを雪上でテスト

CR-VはホンダのミドルサイズSUVだ。今のホンダ車では、コンパクトSUVのヴェゼルが高機能で人気を高め、CR-Vは価格に割高感も伴うから販売が低迷している。2021年におけるCR-Vの登録台数は、1ヶ月平均で約400台だから、ヴェゼルの9%に留まった。

それでもCR-Vは、走行安定性と乗り心地のバランスが良い。そこで今回は、条件の悪い雪道で試乗した。試乗車はハイブリッドシステムのe:HEVで、リアルタイム4WD(4輪駆動システム)を搭載したモデルだ。

e:HEV×リアルタイム4WDにより重さを意識させない運転感覚に

リアルタイム4WDの構造図

リアルタイム4WDは、電子制御される多板クラッチにより、駆動力を前後輪に配分する仕組みだ。今のクルマには、横滑り防止装置などのために複数のセンサーが装着され、車両の状況を正確に判断できる。リアルタイム4WDも、その情報をベースに制御されるから、優れた効果を発揮する。

アジャイルハンドリングアシストのイメージ図

CR-Vはアジャイルハンドリングアシストも装着する。電子制御によって4輪のブレーキが独立制動され、走行安定性を向上させる仕組みだ。アクセルペダルを踏みながらカーブを曲がっている時でも、必要に応じてブレーキが作動して、旋回軌跡が拡大したりするのを防ぐ。

そしてe:HEVは、リアルタイム4WDとアジャイルハンドリングアシストの効果を促進する役割も果たす。e:HEVでは、エンジンは主に発電を行い、駆動はモーターが受け持つからだ。モーターはエンジンに比べると駆動力の増減を機敏に行えるため、リアルタイム4WDやアジャイルハンドリングアシストとの相乗効果も高まる。

ホンダ CR-V

雪道ではこの効果が分かりやすい。特にカーブを曲がる時は、旋回軌跡を拡大させにくい。ステアリングホイールを内側へ積極的に回す感覚で運転すると、後輪の駆動力が一層明確に感じられ、操舵角通りに回り込む。

CR-Vにe:HEVとリアルタイム4WDを搭載した試乗車は、車両重量が1700kgに達するが、前述のメカニズムの効果によって重さを意識させない。1400kgくらいの比較的コンパクトなSUVに近い感覚で運転できた。

将来のクルマ造りの方向性を探るための試作車「コアバリュー研究車」

ホンダ CR-V(コアバリュー研究車)

そして今回は、CR-Vのe:HEV+リアルタイム4WDをベースにした「コアバリュー研究車」にも試乗した。コアバリュー研究車とは、将来のクルマ造りの方向性を探るための試作車だ。コアバリュー研究車も常に進化しており、開発者がそれを運転すると、自分たちが目指すクルマのあり方を具体的に共有できる。

コアバリュー研究車と市販されているCR-Vの違いは多岐にわたる。まずe:HEVについては、コアバリュー研究車ではアクセル操作に対する反応を向上させ、加速がスムーズに行えるようにした。

4WDの制御も異なり、後輪側に伝達される駆動力が、高速域に達しても下がりにくい。後輪に駆動力を伝えるプロペラシャフトを変更して、伝達できる駆動力の限界を向上させたことが利いている。

ステアリングのシャフト、サスペンションの取り付け剛性なども強化され、ホイールを装着するナットを含めて高剛性化を図った。室内空間では、ステアリングホイールの取り付け角度、ペダル配置なども最適化されている。

直進時でも、カーブを曲がる時でも、車両の安定性が向上

ホンダ CR-V(コアバリュー研究車)

試乗すると、コアバリュー研究車は市販されているCR-V以上に、ドライバーの操作に対する挙動の変化が正確になった。市販車でも不満はないが、コアバリュー研究車では、操作と挙動の間に生じる微妙なズレも相当に解消されている。

特に注目されたのは、雪道におけるタイヤの接地性だ。雪道は通常の舗装路に比べてデコボコしており、タイヤが路上を細かく跳ねる挙動が生じやすい。そこに滑りやすさも加わるから、細かな修正操作が必要になる。

そこがコアバリュー研究車では、跳ねる挙動が生じにくい。雪道の接地性が高まるから、ムダな挙動変化も抑えられ、修正操作が少なくて済む。直進時でも、カーブを曲がる時でも、車両の安定性が向上した。

そしてタイヤが雪上を細かく跳ねる動きが抑えられると、乗り心地も良くなる。安全性と快適性をバランス良く高めた。

この機能の向上は、運転の楽しさも盛り上げる。小さな舵角から進行方向が正確に変わるため、ドライバーが車両との一体感を得やすい。おそらく舗装路でも、車両が手足のような感覚で動くだろう。運転の楽しさに加えて、車両の状況が分かりやすくなるから、安全な走りにも繋がる。

商品力は高い! あとはコンセプトとグレード構成/装備/価格の整合性が取れば売れ行きも伸びるはず!

なおコアバリュー研究車は、ホンダの考える走りの姿を表現しているから、他のホンダ車の今後の方向性とも合致する。このことは、現在市販されているホンダ車の運転感覚からもうかがえる。

例えば現行型のフィットやヴェゼルは、先代型に比べてサスペンションを柔軟に伸縮させる。タイヤの接地性を高め、走行安定性と乗り心地をバランス良く向上させた。この延長線上にあるのがコアバリュー研究車だから、今後の他のホンダ車も、今の路線を踏襲しながら商品力を高めていく。

以上のように今のホンダ車は優れた商品力を備え、今後の新型車にも期待できるが、冒頭で触れたように売れ行きは伸び悩む。主な理由として、デザインの表現が共感を呼びにくく、価格も割高な設定になるからだ。

さらに今のホンダでは、N-BOXの売れ行きが圧倒的に多い。国内で売られるホンダ車の30~40%をN-BOXが占める。この影響もあり、ホンダのブランドイメージがダウンサイジングして、CR-Vなどは合致しなくなった。オデッセイは既に生産を終えている。

新型ステップワゴンは、トヨタ ヴォクシー&ノアに比べて外観を穏やかに仕上げた。その意味ではスパーダよりもエアが代表グレードとされるが、エアでは安全装備のブラインドスポットインフォメーションなどを装着できない。車両自体は優れているのに、コンセプトと、グレード構成/装備/価格の整合性が取れず、選びにくくなっている。

これはとても惜しいことだ。ホンダ車の商品力は高いので、こういった点を改善すると、ユーザーの選ぶ価値も大幅に高まる。売れ行きも伸びるに違いない。

[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:本田技研工業株式会社]

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