日本に韓国自動車メーカー「ヒョンデ」が戻る理由とこれからの戦略│今後はキアも含めて大量参入か!?
MōTA / 2022年3月4日 16時0分
2022年2月、韓国の自動車メーカー「現代自動車」が日本法人の社名を「ヒョンデ」に改め、日本に再上陸した。過去にも「現代自動車」として日本展開していたが、このタイミングの日本再上陸の意図や今後の戦略などは何なのか? その実態を解説する。
電気自動車や燃料電池車で日本市場へ再上陸
2021年に正規輸入された海外メーカー車の内、ドイツ車と呼ばれるメルセデス・ベンツ+BMW+アウディ+フォルクスワーゲン+BMWミニを合計すると、全体の63%を占めた。圧倒的にドイツ車が多い。この状況で、韓国のヒョンデ(現代自動車)が、日本に向けた輸出を再開することになった。
ヒョンデは、2001年から2010年頃まで乗用車を輸入販売していたが、軌道に乗らず販売を終えている。2010年度(2010年4月~2011年3月)におけるヒョンデの登録台数は、176台に留まった。そのヒョンデが再び日本に上陸する。
改めて日本市場にチャレンジする背景には、複数の理由があるが、筆頭は電気自動車(EV)の登場だ。かつてのヒョンデが輸入したのは、ソナタやエラントラなどの一般的なガソリンエンジン車だったが、新たに輸入を開始するのは電気自動車のアイオニック5と燃料電池車のネッソになる。現時点で国産の電気自動車や燃料電池車(FCV)は、選択肢が限られるので、かつてのソナタやエラントラに比べて埋もれにくい。
販売方法は「オンライン」で展開予定
また今は2010年以前に比べてインターネットが普及しているから、オンライン販売の可能性も広がっている。日本には登録制度があり、スタッフと面会しながら署名や捺印の作業を進めた方が便利なことも多いが、比較的若いユーザーに販売するには大半のプロセスをネット上で完了させる必要がある。そしてネット上で作業を進めると、販売店をたくさん用意する必要も薄れる。ネットの活用で販売コストの低減が可能になったことも、ヒョンデが国内販売を再開する理由だ。
ヒョンデのアイオニック5やネッソを購入する時は、ネットを使って申し込みをしたり、東京のヒョンデハウス原宿に出向く。ヒョンデハウス原宿は、2022年5月28日まで期間限定で運営するヒョンデの情報発信拠点だ。申し込みなどを行った後は、セールスマンと連絡を取りながら商談を進めていく。 購入する時には試乗も行いたい。試乗の申し込みもネットを利用できる。2022年5月28日までは、ヒョンデハウス原宿を拠点に試乗することが可能だ。また個人間のカーシェアリングで知られるエニカも、アイオニック5とネッソを取り扱っている。従ってカーシェアリング車両を使って、試乗することもできる。カーシェアリング車両なら、好きな場所に出かけて運転感覚や使い勝手を確認できるため、納得のできる試乗が可能だろう。アイオニック5とネッソを購入した時の納期は「2月下旬に契約した場合で7月頃になる」という。5か月ならば、極端に長い納期ではない。ローンの利用も可能だ。
購入後のメンテナンスは、カスタマーエクスペリエンスセンターと、協力整備工場が担当する。ただし2022年2月下旬時点で、カスタマーエクスペリエンスセンターは、神奈川県横浜市の1箇所のみだ。協力整備工場も7箇所ほどに留まるが、ヒョンデでは「今後は全国的に普及させていきたい」という。
グループ企業の「キア」の販売も可能に
今後の展開も注目される。「ヒョンデはキアとグループ企業を構成しているので、日本国内でも同じネットワークにより、キアの電気自動車を販売することも可能になる」という。キアもEV6などの電気自動車を用意しているので、これからラインナップを充実できる。
昨今の自動車ビジネスをフル活用! 課題はやはりアフターサービスか
以上のように、ヒョンデの日本再上陸は、今の自動車ビジネスをフル活用したものだ。取り扱うのは、日本でもラインナップの少ない電気自動車と燃料電池車で、商談や契約にはネットを利用して販売店への依存度を下げる。電気自動車の場合、数年後に売却する時の金額が下がりやすく販売面の障壁になることも多いが、この課題も最近のサブスクリプション(定額制のカーリース)を利用すれば回避できる。購入するとユーザー側に資産価値の下がるリスクが生じるが、借りて使うのであれば避けられる。その上で課題になるのが、車検や点検、修理といった購入後のサービス体制だ。前述の通りカスタマーエクスペリエンスセンターと協力整備工場が受け持ち、今後は各都道府県に展開するが、その普及の度合いに応じて売れ行きも左右される。クルマだからリコールが発生する可能性もあり、その対応を行うサービス体制は、商品力や売却時の価値と併せてヒョンデのブランド力に大きな影響を与える。
ヒョンデは実質的に新規参入のメーカーだから、ブランドの認知度は低く、従来型からの乗り替え需要もない。まさにゼロからの出発だが、最近はそこにチャレンジする海外ブランドがほとんど存在しなかった。それだけにヒョンデの動向は注目される。
[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:Hyundai Mobility Japan 株式会社・エニカ]
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