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トヨタの電気自動車、新型bZ4Xはガソリン車と違和感なく「普通」に乗ることができるのがすごい!

MōTA / 2022年3月18日 16時0分

自動車ジャーナリストの今井優杏さん

トヨタが新開発したBEV(Battery Electric Vehicle)の新型bZ4X。同社が展開する電動化戦略の第1弾モデルとして注目の1台を自動車ジャーナリストの今井優杏さんが解説する!

自動車ジャーナリストの今井優杏さん

トヨタの電動化戦略に多くの注目が集まっている

トヨタの新型BEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー駆動の電気自動車)である「bZ4X」の注目度が高い。のっけから宣伝のようで恐縮なのだが、私が運営している乗り系YouTubeチャンネル「今井優杏の試乗しまSHOW!」で公開したトヨタ 新型bZ4Xの動画も、他のBEV動画とは一線を画す視聴回数の伸びを見せている。

で、この視聴回数がわりと如実に「今どんなクルマがウケるのか」というのを反映してくれているのだ。一部例外もあるが、視聴回数が伸びた動画はほぼ確実に売れている、というわけ。

ご存じの通り、ここ数年で欧州プレミアム勢をはじめ、BEVは徐々にモデルを拡充している。もちろん私のチャンネルでも、それらの内外装&使い勝手や試乗動画を随時公開しているのだが、これまでのBEV動画の常として「視聴回数自体は非常に少ないのに対して、視聴時間は他の動画よりも長め」という傾向があった。推測するに、BEVはまだ、本当に興味のある人しか見ていないコンテンツなのかもしれない。好きな人はじっくり長く視聴するけれど、BEV自体に興味がない人は再生すらもしない、ということかも、と考えていたのだ。

しかしそれら既存動画に対して新型bZ4Xは、公開当時から他のエンジンモデルと同じくらいの再生数を誇っている。これには自分が驚いた。

昨年末、トヨタ自動車が豊田章男社長による電動化戦略の発表会を大々的に開いたのはご存じの通りだが、あのトヨタがとうとう動いた、というインパクトがこれほどまでに大きかったか、ということを、奇しくも視聴回数で知る結果となったのだ。

電気自動車でもソツがないトヨタのクルマづくり

前置きはさておき、そんな新型bZ4Xのプロトタイプカーに、クローズドコースで試乗するタイミングを得たのでレポートしたい。レポートは2回に渡ってお届けするが、まずはクルマとして最も大切な「走り」ついてレポートしていきたいと思う。

せっかちな読者のために結論から先に書けば「トヨタのクルマづくりは本当にソツがないな」と思わせるほどに、完成度が高かった。率直にそれは嬉しいサプライズであった。

トヨタはこの新型bZ4Xを、BEVの商品ラインナップである「bZ」シリーズのスタートとなるモデルと位置づけている。bZシリーズに四輪駆動を表す「4」と、SUVを表す「X」を付けてbZ4X。今後はセダン、そしてクロスオーバーなどのラインナップも用意しているという。

そんなbZシリーズにはBEV専用プラットフォームが用意された。今回、このbZ4Xはスバルとの共同開発で発売されたが(スバルは「ソルテラ」という名前で発売する)、このプラットフォーム自体もスバルとの共同開発だ。

平積み電池パックを床下に配置することで低重心化を実現し、この電池パックを守る、もしくはエンジンモデルでは必要だがレイアウト上BEVには必要のないブレースや強度・保護部品は配置を見直し、BEV用に特化した骨格を形成することで適正な高剛性を達成、さらに主要骨格部品にはホットスタンプ剤や超ハイテン材を用いた軽量ボディを実現している。

その強靭かつ軽量な骨格には、ボディの前後にモーターが搭載される。それぞれ、モーター、トランスアクスル、インバーターを完全に一体化したコンパクトなユニットで、eAxle(イーアクスル)と名付けられているものだ。このユニットはフロントとリヤで形状を変えていて(F:410×492×420mm/R:444×427×303mm)、フロントは前後方向に短くすることでキャビンの広さを確保、リヤは荷室を圧迫しないよう、上下方向に低く設計されている。レイアウトの自由度が高いBEVだし、ボディサイズはトヨタ RAV4とほぼ同じ体躯を誇るが、そんな中でもゆったりした室内空間(ラゲッジも)を確保するという、ユーザーへの気遣いを忘れないところは、国産車ならではの細やかさを感じて、好感が湧くポイントでもある。

機能としてももちろん、ハイブリッドで培った環境技術や電費向上への技術が導入された。低粘度のトランスアクスルフルードを使ったり、水冷オイルクーラーを採用したり、新開発の低損失のインバーター素子を採用したりと、むしろ電動化技術のノウハウはすでに備えていたトヨタのこと、スバルとの共同開発でもやはり、ユニット開発に関しては大きなイニシアチブを握ったという。

ポジティブな印象はもちろん、四輪駆動に関して絶大な信頼と実績を誇る「Xモード」

対してスバルが実力を発揮したのは「Xモード」に代表される四輪駆動制御技術の分野だった。BEVの期待を超える走りを目指し、雪道などの滑りやすい路面やライトオフロードへの走破性を高めたという。

ふたつの悪路走破モード「スノー/ダート」「ディープスノー/マッド」は、まさにスバルお馴染みのモノ。クルマ好きならすでにそんなイメージを持つ人は少ないかもしれないけれど、まだまだ一般的には「EV=非力」というイメージは根強いようだ。そんなネガティブを払拭するのに、イメージ的にもスバルのXモードはポジティブな印象を与えるだろう。

さらに特に悪路でなくても、雪国などでシャーベットからアイスバーンなど、路面のミューが変わるようなシチュエーションでも、この四輪駆動制御は効果的なんだそう。また、すでに北米で好調なセールスを誇り、四輪駆動に関しては絶大な信頼と実績を誇ることも「Xモード」を採用した理由なのだという。

初めて電気自動車に乗り換える人でも違和感なく「普通」に乗ることができる

さて、それらの技術をそなえた新型bZ4X、いざピットレーンからコースに侵入したら、そのあまりの「普通さ」に驚いてしまった。いやいやもちろん褒め言葉だ。普通という言葉に語弊があるなら「超絶ナチュラル」とでも言おうか。モーター由来でありながら過敏なピーキーさやガツンと過剰に膨らみすぎるトルクはなく、低速域ではあくまでも自然な挙動。おそらく初めて電気自動車に乗り換える、という人でも、ステアリングやペダルの違和感を抱くことはないだろう。

それでいて、一転、アクセルを強く踏み込んでいったときのズバッと押し出されるようなモーター由来のトルクは健在。特に四駆モデルのトルクの深さといったらない。その威力を発揮するのはコーナリング後半あたりだ。

エンジンモデルであればトランスミッションとの兼ね合いで、必ずトルクの息継ぎが生まれるような、一旦速度が落ちて、再加速していくあたり。モーターの瞬発的なトルクに加えて、電気自動車は変速のラグがないために、アクセルペダルを踏んだところから即、豊かなトルクがとめどなく湧く。

これが昭和生まれの身体には、とてもじゃないけれど予測不可能な挙動なので、ちょっとだけオエっとなるくらいの加速を体感する事ができるのだ(そう、余談だけどもしかしたら令和生まれの子どもたちは、こういうモーターの加速を当たり前のように感じる時代に生きるんだなぁと思ってしまう)。

この普通さこそがトヨタの本気や凄み

さて、この泉のように湧くトルクではなく、もう少し自然に乗りたいと思う人、もしくはもう少し電費を重視する人には、二駆モデルも用意されている。そう、当解説に自分で水を差すようだけれど、bZ「4」Xでありながら、二駆モデルもちゃ~んと用意されているあたりがきめ細やかだ。

二駆モデルは先述の通り二駆であるからこそ四駆よりも航続距離が長く、さらに四駆よりも軽量でFFなため、リヤモーターでグイグイ進むような独特の押し出され感ではなく、よりナチュラルでスッキリしたハンドリングを楽しむことが出来る。だから、普段遣いに“飛び道具感”を求めない人は、二駆モデルのほうが扱いやすいだろう。

それにしても、この完成度の高さよ、と繰り返し感じ入る。

だって新型bZ4Xと新型ソルテラは、本格的な電気自動車として、トヨタ・スバル両社で初めてのパッケージとなるクルマだ。それをこんなに“普通”な感じにサラっと仕上げてくるなんて、と感じざるを得ない。

エンジニアとの意見交換会では他のジャーナリストから案外普通すぎて楽しくない、なんていう意見も出たほどだという。しかし私は記念すべき一台目としてこの普通さこそがトヨタの本気や凄みにも感じ取れた。だいたい、ここからレクサスにもラインナップを増やしていくのだ。トヨタはますベーシックに、攻めた走行を求める人はレクサスで、とキャラ分けがすでに出来ているとも予想出来る。そして、事実そういう方向で開発をしているのだという。

さて、新型bZ4Xの面白さは走りだけではなく、エクステリアやインテリアも様々な新しい試みがなされている。次回はこのお話しをしたいのでご期待いただきたい。

[筆者:今井 優杏/撮影:小林 岳夫・トヨタ自動車]

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